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俺、りん  作者: じぇにゅいん
第二部
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第26話 『女ってヤツは (3)』

(ふっふっふ……東子には悪いが、狙わせてもらうぜ)


勝負において、相手の弱点を狙うというのは“鉄則”である。

“りん”チームは、しゃべらずとも意思の疎通が出来ているかのように、東子を狙い始めた。

「ふみゅっ!」とか「はにゃっ!」という、へんてこな声が東子から発せられるたびに、“りん”チームの点数が積み重ねられていく。


そして、ついに点数は“20対20”となった。

同点ではあるが、デュースはないので、お互いがマッチポイントという状況だ。

しかし、“りん”チームに最後の難関が立ちはだかる。


今日、さんざん手こずっている沙紀のサービス。

沙紀は、まるで魂を込めたかのようなオーバーハンドサーブを「ズドン!」と放つ。

レシーブに失敗したら、そこで試合終了という状況で、成田さんがかろうじてレシーブに成功し、北村さんが丁寧なトスを上げた。


和宏の真上に上がったチャンスボール。

渾身の力を込めて打ち込んだスパイク。


タイミングばっちりにジャストミートしたボールの行き先は、沙紀の真正面だ。

レシーブの瞬間、予想以上のボールの勢いに、沙紀は「きゃっ!」という声とともにしりもちをついた。


唖然とする表情の沙紀の目の前を、ボールが力なく転々としていく。

それを見て、和宏は勝ったことを実感した。


「よっしゃぁ!!」


苦難の末、掴み取った勝利に、和宏たちはハイタッチをしながら喜びを爆発させ、得点板横で審判をしていた先生の袴田は、予想を超える好ゲームに思わず拍手をしていた。




授業が終わった後の女子更衣室にて、興奮冷めやらぬみんなは、着替えもそっちのけでおしゃべりにいそしんでいた。


「うう、ひどいよう。みんなでアタシ狙って……」


東子は、半ベソ状態で訴える。


「いやぁ、ゴメンゴメン」


和宏は、「ちょっと可哀想だったかな?」と思いながら謝った。

でも、元はといえば、勝負の話を振ったのは東子である……自業自得かもしれない。


「でもさ、あの『ふみゅっ』って声なに?」


成田さんが、クスクスしながら東子に聞いた。


「ええっ? 言ってないよー、そんなこと」


東子が、口を尖らせて反論するが、全員が声を揃えて、きっぱりと答えた。


「言ってた言ってた」


みんなの笑い声が、女子更衣室に響く。

その中で、沙紀だけが、未だに悔しい表情を浮かべていた。

そして、沙紀は、少し恥ずかしそうにジャージの上を脱いだ。


「りん。いいわよ。約束だから」


胸を隠すことなく、“りん”に向ける沙紀。

白い素肌に薄いピンクのブラジャーが丸出しだ。


(うわー!!!)


和宏は、まだ自分の胸を直視することすら恥ずかしさが残っている。

増してや、他人の胸など直視しがたい。

一瞬だけ目に入った沙紀の下着姿を、視線から外すために、和宏はあえて上を向いたのだが、沙紀の胸が脳裏に焼きついてしまって離れやしない。


……そういえば。

唐突に思い出されたのは、今日の朝、ヘッドロックをされた時に感じた沙紀の胸の感触。

それと、今、脳裏に焼きついている沙紀の下着姿とを併せて考えると、沙紀の胸は、いわゆる“ペチャパイ”の部類に入るという結論に達した。

なら、「別に触らなくてもイイや」という思いが、和宏の頭の中をよぎった。


「い、いいよ。お互いベストを尽くして、いい試合が出来たんだから、それでいいじゃないか」


和宏は、努めて爽やかに言った。

「決まった!」と、思った。

「我ながら、器がデカい!」と、自分に酔った。

……そのせいで、場の空気が、急に緊迫したことに気付かなかった。


突然、暗くなる視界。

沙紀の右手が、和宏の額を挟み込む。

……アイアンクロー。


「私の胸なんか興味ないって事?」


(???)


沙紀が怒りを抑えたような声で凄む。

しかし、和宏には、その怒りの理由がさっぱりわからない。


「Aカップには用はないって事?」


(……イヤイヤイヤ、思ってませんからっ!!!)


和宏は、ついさっきまでそう思っていたことを棚に上げた。

だが、かぶりを振ろうにも、額がガッチリ固定されてしまっているので、頭が動かせない。

そうこうしているうちに、沙紀のアイアンクローが容赦なく締まり始めた。


「イダダダダダダダダッ!!!」


勝負に負けた悔しさも手伝って、締め付ける力はことのほか強烈だった。

もはや、女の力とは思えない。

みんなは、そんな沙紀と“りん”を見て、大爆笑だ。


意識が遠のいていく程の激痛の中、和宏は思った。


―――女ってヤツは……やっぱりワケわかんねぇ。

≪オマケ ~緊急座談会~≫

沙紀「コレ、何?」

作者「なんか、作者が思いつきで企画しちゃったみたいです」

沙紀「なんでヒトゴトなのよ? ……というコトは、作者に堂々と文句が言えるってコトね?」

作者「う……まぁ……わたし、打たれ弱いのでホドホドにしてね」

沙紀「なぁんで私、バケモノみたいに描かれるワケ? もっとこう可愛く描いてよっ!」

作者「あー、ムリ。もうその方向でキャラ立っちゃいましたから」

沙紀「ちょっと……ソコを何とかしてって言ってるじゃない」

作者「大丈夫です。アイアンクローだけじゃなく、実はコブラツイストも得意技っていう隠し設定まで考えてますから♪」

沙紀「……フゥン」

作者「……おわぁっ! イダダダダダダダッ!!!」


沙紀のコブラツイストが決まって、有耶無耶のまま終わる。

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