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スガヲノ忍者 リチタマ騒動記2  作者: 九情承太郎
4章 コンカフェに 雨が滴る 歌の市
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五十八話 季節限定アンサー(5)

【バッファリービル二階 メイド喫茶『百舌鳥亭』パーティ&ライブフロア】


 トモト・チェリーブロッサムは、元彼の兇状を捲し立てる。

「イッシーも最初は優しくて少しはカッコ良かったのよ、ニキビの手入れもしっかりするし。時々胸を揉んできたけど、一線は超えなかったわ。フェラーリに乗っていたし。

 変な新興宗教にハマってから、どんどんおかしくなったのよ。フェラーリに乗っているのに。

『トモト、信者にならなイカ? トモトなら教団で出世して、高等幹部として美味しい思いが出来るぜ』

『美人に騙されて寄付金を破産するまで貢ぐ信者ばかりだから、トモトならトップを狙えるよ』

『この教団が警察に潰される前に、がっぽり稼いで足抜けすればいいのさ。どうせ捕まるのは、上の連中だし』

 で、その気になりかけたんだけど、イッシーが煮え切らないトモトに対して説得から脅迫に切り替えてきたの! フェラーリに乗っているのに!!」

 と、話を区切って、携帯電話に保存されている、恥ずかしい写真を見せる。

 裸ワイシャツでシマパンを穿いたトモトがベッドで招き猫になった自撮り写真を、見せられた。

「昔オカズ用に送ったこの写真を、『彼氏とラブホテルで夜戦している証拠写真』としてネットで流布させるって、脅迫されたの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 助けてユーシアさん! 助けてくれたら、十分揉ませてあげる!!」

「うん、今晩のうちに、元彼に写真をクラウドから処分させるよ」

「ありがとう〜〜〜〜〜〜〜

 今、揉んでおく?」

「…いえ、代金はサラサから貰っていますので」

 リップに殺される危険性に思い至り、ユーシアは胸を揉むサブ報酬を、辞退する。

「サラサのサイズが良いの?」

 サラサは、撮影カメラを回しながら、胸元を半分開いて、トモトより大き目である事をアピールする。

「こりゃまた失礼致しました! てっきり、女子中学生サイズだとばかり」

「お詫びにそこで、スクワット三十回」

「イエッサー!」

 サラサ・チャンネルの撮影カメラ前で、トモトがスクワットを始める。

 メイド服を着た新人声優が、合法的に着衣乳揺れしているので、視聴者数が上がる上がる。

 スクワット三十回を終えてから、ユーシアはサラサに声をかける。

「じゃあ、仕事に行くよ」

「よっし」

 サラサがユーシアの背中に、カミキリムシが桑の木に喰らい付くように、抱き付く。

「置いて行かれないように、現場まで、この体勢で」

「タクシーで行くから、金を払え」

「動画配信者に、恨みでもあるのか、若頭?!」

「重い、ウザい、うるさい」

「もういい。リップお嬢様を呼んで、足を鈍らせる」

「エリアス・アーク、タクシーを呼んでくれ」

 サラサとリップが合流した場合、リップは面白がってサラサの暴走を止めない。

 そうなる前に、ユーシアは仕事を済ませる努力はした。




【バッファロービル前 アキュハヴァーラ中央通り路肩】


 呼んだタクシーに乗ろうとすると、既にリップとイリヤが乗っていた。

 戦いに巻き込まれてもいいように、リップはジャージ姿に水口レイピアを帯剣しており、イリヤは大太刀が車内に収まらないので、天窓を開けて立て掛けている。

「何で?」

「夕飯時に残業するから遅れますなんてメールに、面白い仕事をしている匂いがするのに加えて、サラサ・チャンネルを観ていたから」

 リップ(十歳、エメラルド色の長髪&瞳、美少女芸能人)が後部座席の中央に寄り、ユーシアを横に座らせる。

 サラサはユーシアの背中から降りて、リップに頭をヘコヘコ下げながら、助手席に乗る。

 著名な美少女噺家を乗せてウハウハしていた運転手が、トラブルの中心地にいる事で悪名高い美少年忍者の相乗りに、血相を変えながら発車する。




【ガーターベルト・タクシー内 後部座席】


 リップはユーシアに体を寄せて密着しながら、優しく問い始める。

「新人声優ユニットを助けて恩を売る仕事は、楽しい?」

「一件目は楽勝だったけれど、罪のないシマパンが犠牲になってしまった。悲しいよ」

秘書エリアス・アークから、ユーシアがアイドルと下着を取り合う楽しそうな光景が送られて来たけど?」

 リップの人差し指が、矢文のようにユーシアの頬に、刺さる。

「楽しそうだったわねえ」

「はい、楽しかったです」

「しかも、あたしの為に用意した下着を、渡そうとしたわよねえ?」

 そこに怒って合流したのだと知り、ユーシアは対応を誤らないように、全神経を集中させる。

 リップの爪が、ユーシアの頬をギリギリと抉る。

「相手は受け取らなかったよ。何なら、リップが今受け取って穿いてくれても」

「いいわよ」

「え?」

「出して」

 ユーシアは、影の中から、シマパンを出す。

 それを受け取ったリップが、シマパンを広げる。

 広げて、ユーシアの頭に、シマパンを被せた。


 メイド服を着て頭にシマパンを被った美少年忍者という、世にも珍妙な生命体が、顕現してしまった。


「今夜は、その格好で、仕事をして」

「…あのう、サラサが生放送をしているし」

「だからよ」

「だからかー」

「ユーシアは、あたしがシマパンを穿いた姿が、見たいでしょ?」

「見たいです」

「じゃあ、先にユーシアが、シマパンを被って仕事をして見せてよ、全世界に生中継で」

 サラサが、隠し撮りで中継しながら、ガッツポーズを取る。

「…本当に? 本当に、シマパンを被ったまま仕事をすれば、シマパンを穿いてくれる?」

「帰ったら、部屋で穿いてあげる」

 ユーシアは、この約束の罠の部分を探る。

「服の上とかパジャマの上から履くのではなく、ノーパンの状態の上に、シマパンを履くのだよね?」

「なんでクドく確認を取りに来るのよ」

「頭に履くとか二の腕に履くとかじゃなくて、お股に履くよね?」

「小細工はしないから。ごく一般的な意味合いで、ユーシアの指定したシマパンを履いてあげる」

「何秒?」

「今夜、一晩」

 ユーシアは、車内で出来得る可能な限り、リップを抱き締める。

「リップ、大好きだよ」

「あたしとシマパンの、どっちが好き?」

「シマパンに換算すると、五億枚」

 リップの顔が、やや不機嫌から満更でもない状態に激変する。

 サラサ・チャンネルに、リア充カップルへのやっかみのコメントが殺到する。

「もはや迷いはない。今日の最後の仕事は、このスタイルで、やり遂げます」

 頭にシマパンを被ったまま、美少年忍者はメイド服を揺らして高笑いをする。

 ユーシアは、恋人に好みの下着を穿いてもらう為だけに、全世界に恥を晒そうと決意した。

 男の子だもん。

 リップの守役のイリヤが、戦友の覚悟に、助力を申し出る。

「お嬢様。自分も、シマパンを被って、参戦をするであります」

 リップに冷たく睨まれたので、イリヤは自前のシマパンを脱がずに、履き直す。

 サラサが、イリヤのボーナスショットを撮り損ねて内心舌打ちする中、タクシーは目的地前に駐車する。







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