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46話  またクビになりました!

「地球人が先に敵…エイリアンのエネルギー源を狙って手出ししていたんですか…」

「そう……」

私の言葉に沈黙が落ちる。

もう誰が敵か味方か分からない私はボスとキュートさんがいない隙を狙ってみんなに佐藤太郎の話を聞かせた。

ボスとキュートさんも組織の人間だ。

前の疑問の時にも沈黙を貫いていたのはこの事を知っていたからだろう。

沈黙を破って問いかけてきたのは三崎さんだった。

「どうします?これから」

「どうって」

「確かにこちらが先に手を出したのは事実ですが今は向こうも地球に手出しをしている。共存と言っていたらしいですがそれも本当かどうか。こちらの下部組織も僕達が現場に辿り着いている頃には誰もいない。ニュースにも現れていない。本当にそんなものがいるんでしょうか?」

その言葉にアキさんが答える。

「そうですね。同じ地球人ではないエイリアンの私から言わせてもらうとピーマンもパプリカもピッマーンとは違う存在。相容れずにいても仕方がないということも理解出来ます」

二人とも相手側エイリアンとはこれからも戦うつもりなんだろうか。

由利亜を見遣るとおずおずと挙手をした。

「私は、私達が先に悪いことをしたのなら謝罪して和平の道を探すべきだと思います。佐藤太郎さんが仰っていたように共存の可能性があるのなら賭けてみたいです」

「そうですね。兄さんの意見と反するのは本意じゃないけど、これは不毛な戦いだと思います。戦わなくていいならもう一度その佐藤太郎からじっくり話を聞くべきだと思います」

「それに、祖父が誰よりも魔法少女を信じているという言葉も気になります」

みんなの意見を聞いて頷いた。

私の心の中ではどうしたいか決まっていたけれど、一応もう一度みんなの意見を合わせるために言う。

「じゃあ、もう一度佐藤太郎に会う機会があったらもっと詳しく話を聞く方向でいこう」

各々返事をして複雑な心境のままデスクに戻るとボスとキュートさんが帰ってきた。

「おかえりなさーい!」

「ただいま!」

「今日は勝ちました?」

てっきりパチンコに行ったかと思っていたので軽くそう聞いてみるとボスはデスクをゴソゴソとしだした。

「辞めてきた」

こちらを見ずにデスクの片付けをするボスに絶句する。

ボスはずっとボスをしてるものだと思っていた。

「辞めてきたって、ここをですか?」

由利亜が問い掛けるとボスは大きく頷いた。

「それって僕達が再就職したから上層部になにか干渉されたとか…ですか?」

いつも淡々としている三崎さんが少し焦ったように尋ねる。

ボスはそれには答えず頭を下げた。

「守ってやれずにすまなかった」

ボスがいつになく真面目なトーンで話す。

「ボクの可愛さを持ってしてもダメだったよ」

キュートさんも、しょんぼりしている。

「キュートさんも辞めたんですか?」

「そうだよ。今日から可愛いだけの野良エイリアンさ」

キュートさんまで辞めるなんて、これからここはどうなるんだろう。

不安を抱え、ここの会長をぶん殴って取り止めさせるしかないかと考えるとボスがとんでもない一言を告げてきた。

「君もクビになってしまったよ、山田真理亜くん」

「えっ!?」

なんで私まで!?いや、クビになったのを隠して再就職したのなんてすぐバレるよね!

「僕達もですか?」

「いいや。山田真理亜くんだけだ」

「えっ、なんでですか?」

みんなクビなら分かるけどなんで私だけ?

「君の周りには人が集まるってことだよ」

ボスがダンボールにガムテープで封をしながら教えてくれた。

そう言ってくれるのは嬉しい。

でも、ここに再就職したのはみんな自分の意思だ。

私がみんなに声掛けをしたわけじゃない。

「納得いかないです」

「私も!真理亜だけ辞めさせられるなんて納得いきません!」

由利亜が援護してくれる。

こうなったら、会長にまた直接話をつけるしかない。

「みんな、ちょっと行ってくるよ!」

拳を鳴らし、闘志に満ちた目でそう言うと、AEDの場所を確認された。

そこまでしないよ。多分。


また力技で総務を黙らせて会長室まで乗り込む。

「会長!お話があります!」

会長は相変わらず豪奢な椅子に座って平然としていた。

「なんでボスとキュートさんと私がクビになるんですか!」

「元々君は私がクビを決めたものだ。それを勝手に採用して、当然の措置だろう」

そりゃあ、会長がクビにした人物を勝手に採用したのはまずかったかもしれない。

「私だけじゃなく、ボスとキュートさんがクビになったのも意に沿わないからですか?」

「ああ。彼等もクビだよ。魔法少女には君が必要だとこの私を説得しようとするのでな」

なんてこった!ボス達の判断だけじゃなく私のせいでボス達まで!

「これまでの君の資料を読ませてもらったが、君は魔法少女には向いていない。どこか平々凡々なところで暮らして生きなさい」

その言葉にプチっとなにかが切れる音が聞こえた。

私は、私の意思で魔法少女になったんだ。

向いている向いていないじゃない。

なりたい職業に就いて、辛いことも楽しいこともたくさんあってなんとか生きているんだ。

この間の佐藤太郎に奮われなかった拳が会長の頬をぶん殴る。

入れ歯が飛んだけど関係ない。

「なにをしゅる!」

「こんな自分勝手な会長の言いなりな組織、こっちから願い下げだ!バーコードジジィ!!」


啖呵を切って飛び出したけど、またクビになってどうしよう。

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