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第43話 上層部へ殴り込みだー!

佐藤太郎の内部分裂という策略かもしれないけど、佐藤太郎曰く早乙女会長から時期尚早だと止められているかららしいし、前回の疑惑の時も何も魔法少女への真実とやらの報告がなかった組織への猜疑心は日増しに増えていった。

もう一度、今度は沈黙を決め込むボスやキュートさんじゃなくてもっと上に尋ねなければならない。

そう話し合って決めた私達は上層部へ殴り込み…違った、乗り込みに行くことにした。

けれど初手から躓いた。

上層部がいるフロアは専用エレベーターに乗らなければいけないのだが、そのエレベーターを動かすには極一部の者が持つカードキーが必要だった。

仕方なしに庶務から上層部へと話を通してもらう事にした。

でも上層部へ行かせたくないのか一度電話をしたきりいくら待っても何の返答もない。

「もうこうなったら変身して上の階までぶち破る?」

「そんなことしたらこのビルごと壊れちゃいますよ」

キャッキャウフフと魔法少女トークをしていると庶務の子が青い顔をしながら再度電話を掛けると、数分後には秘書を名乗る男性がすっ飛んできた。

最初からそうしろよ。

ぞろぞろ歩いて来た道を戻って今度こそエレベーターに乗せてもらえた。

……勢いでカチコミに来たけど緊張してきたな。

他のみんなはどうだろうと周囲を見渡すと由利亜はユウくんとトレカの倍率がおかしい、リアが出ないと白熱した議論を交わし、三崎兄弟はエレベーターの壁に寄りかかる三崎さんを直人くんが激写し、アキさんは秘書にピーマンがどれほどの悪か諭していて困らせていた。

うん!いつも通り!

緊張して損したわ!

エレベーターを最上階で降りてそのまま秘書に案内され重厚な扉の前に立つ。

一息ついて思いっきり扉を開けた。

「たのもーーー!!」

勢いが良すぎて扉の蝶番が壊れた気がしたけど気のせいだよね、きっと。

秘書の人が扉と私を交互に見て顔を青くしているが知ったこっちゃねー。


広い窓を背にお爺さんが大きな机に手を置き待ち構えていた。

この人が魔法少女を束ねる一番偉い人…意外と普通なお爺さんだな。

「不躾で申し訳ありませんが、お尋ねしたい事があります」

私が話を切り込むと、お爺さんもとい魔法少女側の会長はのんびりとした口調で由利亜に尋ねた。

「君が早乙女の孫娘さんかね?」

「は、はい!……祖父をご存知なんですか?」

ユリアが身構えながらも答える。

「あいつとは古い付き合いでねぇ」

会長が遠い目をしている。

いや、先に身内にカチコミ来られた現実を見て?

「聞きたい事とはあちら側の言い分の事だろう?」

「そうです。向こうには向こうの事情があるとか。それは一体なんなんですか!?」

机を強く叩いて恫喝すれば会長は遠い目をした。

「早乙女がまだ話す時ではないと言っているんだろう?」

「そうですけど!そんな事じゃなくてこちら側の都合も聞きたいんです!こっちは敵エイリアンの都合も知っていてそれでも魔法少女を作って戦わせているんですよね!?なんでなんですか!?」

他のみんなも会長にそれぞれ思うことがあるのか視線が様々だ。

特に由利亜は祖父同士が顔見知りだと知って祖父と決別した身としては複雑な心境だろう。

「あちら側のエイリアンが最初にこの星を植民地にしようとしたのも、それに対抗するために魔法少女を開発したのも事実だ」

「いや、なんで対エイリアンで魔法少女を開発したんですか?あの技術力ならもっと他に武器とかあったでしょう?」

私の問いに会長が首を横に振った。

「夢がないねぇ」

金銭で働く魔法少女のどこに夢があるのか。

呆れる私とは裏腹に、会長は夢見心地で答えた。

「魔法少女はね、夢なんだよ。人類が夢見る戦い方の一つだ」

じじいの戯言が始まってしまった。

しばらく一人で喋っていると、ふとこちらを向いた。

「幸い、魔法少女になりたいという夢見る存在には事欠かない。君達は全員クビだ」

いや、ここにいる全員夢見る存在なんかじゃないからな?

ていうかクビ!?

「気に入らないことがあるからってすぐにクビだなんてパワハラクソ会社じゃない!!また職場が害悪だった!!」

頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。

なんとかそれなりに楽しい毎日を過ごしていたのに大元がろくでなしだった!なんてこった!

他の面々も急なクビ発言に戸惑っている。

由利亜は私より先に会長に食ってかかった。

「なんでですか!?納得いきません!」

「納得しようとしなくても上からの命令なんだ。下の者は従うしかないものだよ」


その一言で、私達は魔法少女ではなくなった。

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