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第30話 すききらい

「喜びたまえ!山田くん!物販売上ほぼゼロの君の売上がギリギリ五桁いったよ!すごい快挙だ!」

「ちょっと物販売上ほぼゼロって言われると微妙な心境ですね。でも売上伸びたのは嬉しいです!ついに私の時代が来る予兆が!!」

「うんうん。アンケートによると『新兵器が出来てもバックドロップでトドメをさす、崩さないその姿勢に憧れます』とか、ファンシー銃に頼らず力技で敵を沈める姿に感銘を受けた層がいるみたいだよ!よかったね!」

「なんにも嬉しくねーーー!!!」

いやだってさぁ!ファンシー銃の一発のエネルギーが私の給料と同額程度って聞かされたら撃てないじゃん!?撃って当たればまだいいけど外したら無駄金で上から怒られるじゃん!?

なら慣れた力技で敵を倒した方が確実だよね。

ていうかファンシー銃の名前、ファンシー銃のままなのかな。なんかかっこいい…もしくはかわいい名前付ければいいのに。

早乙女さんの報告書を読んでみたらファンシー銃三発撃ちましたって書かれていて真面目に魔法少女として戦っているのか疑問になってくる。幼稚園児か。


そんな日常を送っているとボスに呼び出された。

「なんですか?私一人になんてもしかして物販売上一位になりました?」

「やだなあ、山田くん。夢は寝てみるものだよ」

ボスの言葉に思わず渾身のエルボー出ちゃったの私のせいじゃないもん。ボスのせいだもん。

「実はアキくんにそろそろピーマンに対して説教するのをやめさせてほしいんだ」

「今更ですか!?」

「早乙女くんは押しに弱いというか、アキくんがピーマンに説教するのも異星人だから解釈の違いとしてある意味受け入れている。しかしアキくんも地球に来て数年経つ。そろそろピッマーンとピーマンの違いを許して欲しいというかスーパーからのクレームの謝罪が大変でやってられないというか、とにかくそういう訳でアキくんにピーマンの存在を認めさせて欲しい」

「過去史上最高に面倒いし無駄な仕事振らないでもらえます?」

アキさんのピーマン嫌い…憎しみといってもいい。それは半端なものじゃない。

それを認めさせるなんて無理だと思う。

「もちろん、頑張りによって賞与に査定金額が加味される」

「山田真理亜、頑張っちゃいまーす!」

人間とは所詮お金に屈する生き物なのだ。

後ろ指差さないでほしい。


私はデスクでピーマンの広告にばつ印を書いているアキさんに近寄った。

こうして考えてみると普通にやばい異星人なのでは?

なんでスカウトしたん?

「アキさん、今お時間よろしいですか?」

「大丈夫ですよ」

にこやかに答えるアキさん。

ピーマンが絡まなきゃ普通なんだよな。

「アキさん!地球にはピーマンよりやばい食材なんて山程あります!ピーマンばかりに囚われないでください!」

「そのお話ですか…ですが一番許されないのはピーマンです。ピッマーン星では大人気のピッマーンを貶めるあの苦さ!許されるものではありません!」

「いえ、そもそもピーマンとピッマーンって別の食材ですし、郷に入れば郷に従えですよ」

「早乙女さんにも言われましたが納得いかないものはいかないのです!何故人間はあのような苦いものを好んで食すのか!」

アキさんは怒りも露わにばつ印を付けていたピーマンの広告を破り捨てた。

やっべー。怒らせちゃった。

「いえ、子供だけじゃなくて大人でもピーマン苦手な人いますよ!安心してください!」

慌ててフォローするも燃えるアキさんはなかなか面倒くさい。ピーマンへの恨み言をこれでもかと撒き散らす。呪詛か。

「大丈夫です。アキさん。人によっては嫌いなものはピーマン以外にも山程あります。一部になりますが聞いてください」

私は息を整えて唱えた。

「超激辛カレー」

「辛い!」

「人によっては大好物だよ!」

想像したアキさんにキュートさんがフォローを入れる。

「小骨の多い魚」

「面倒!」

「丸ごと食べればいいよ!」

「迷走しすぎて何味か分からなくなったコンビニ商品」

「テーマに忠実に!」

「そういうのに限ってお高いよね!」

「キャベツ」

「芯が硬い!」

「芯以外を食べればいいよ!」

「ブロッコリー」

「モサモサしている!」

「あのモサモサは好き嫌い別れるよね!」

「味のなくなったガム」

「虚無!」

「いや、それ食材でもなんでもないよね?」

キュートさんのツッコミなんてムシだ!

「どうですか、アキさん。ピーマン以外にもこの地球にはたくさんの食材があります。もっと他にも目を向けて、ピーマンへの憎しみは程々にしてみてください」

「分かりました…超激辛と小骨の多い魚と迷走したコンビニ商品と芯が硬いキャベツとブロッコリーと味のなくなったガムも滅する対象にします!!」

アキさんは燃えていた。

やばい。憎しみの対象を増やしただけだった。

いやでも言ったのは私が苦手なやつだしなくなってもまあ……困らないかな!

「そうですよ!その意気ですよ!!」

あれ?なんか当初の予定と違う気がしたけどピーマン以外にも目を向けてくれたからボスのオーダーには応えられたよね!

これで賞与の査定加味もバッチリだ!!やっほい!


後日、コンビニからもクレームが来たとのことで私とアキさんは盛大にボスから怒られた。



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