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元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。  作者: 新城かいり
第一章 聖女の証

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第十ニ話


「そんなことが……」


 今あったことを話すと、隣に座ったアンナは呆然と呟いた。

 アンナは起きたら私が部屋にいなくて慌てて探してくれていたそう。


「ごめんね、起こそうか迷ったんだけど、やっぱりアンナに何かあったら嫌で……」


 現に、ラウルが大変な目に遭ったのだ。

 するとアンナはふるふると首を横に振ってから笑顔を見せてくれた。


「ううん。レティが無事で本当に良かったわ」

「ヤバかったのは俺だけどな」


 そう言って、いつの間にかどこかへ行っていたラウルが戻ってきた。

 と、その手に握られているものを見てギクリとする。先ほどのナイフだ。

 まだその刃にはラウルの血がついたままで、先ほどのことが全て現実にあったことなのだと思い知らされる。


「そのナイフ、ラウルのものなの……?」

「違う。アイツが隠し持ってたもんだ。俺がちょっと声掛けたらいきなりグサっだもんな」


 先ほどの長剣といい、あのローブの下に一体いくつの武器を隠し持っていたのだろう。

 そう考えたら改めてぞっとした。


「でよ、気になったのがこの紋章だ」

「紋章?」

「見覚えないか?」


 そうして差し出されたナイフをアンナと一緒に恐る恐る見つめる。

 その柄の部分は良く見ると細かく美しい装飾がされていて、その中心にラウルの言う『紋章』が刻まれていた。


「!?」

「これって!」

「あぁ、エストガリア王家の紋章だ」


 間違いない。

 ここ、ベルヴェント王国の川を挟んでお隣の国、エストガリア王国。その王家の紋章。

 それが刻まれたナイフを彼が持っていた、ということは。


「彼、エストガリア王家の関係者ってこと!?」


 アンナが大きな声を上げた後で慌てた様子で口を塞いだ。

 あと一拍遅かったら私が同じことをしていただろう。


「先生がアイツになんか耳打ちしてただろう? 先生もこれに気付いたんじゃないか?」


 私は頷く。きっとそうに違いない。

 と、アンナが口に手を当てたまま神妙な顔つきで言った。


「ちょっと待って。そういえば聞いたことがあるわ。エストガリア王国の2番目の王子様、なぜかあまり表には出られないけど、とても美しい方だって。確か名前は……そうよ、リュシアン様だわ!」

「まんまじゃねえか」


 ごくりと知らず喉が鳴ってしまっていた。

 もし本当にそうなら、見た目もあの頃と変わらず、身分も名前もほとんど同じだなんて……。


「俺は危うく隣の王子様に殺されそうになったってことかよ」

「……先生、大丈夫かな……」


 小さく呟く。

 先生は彼をどこへ連れていったのだろう。

 当局という言い方をしていたけれど、下手に憲兵たちの元へ連れて行ったりしたら大変なことになる。最悪、彼を捕まえた先生の身だって――。


「そこで先生の心配……流石だわレティ」

「え?」


 顔を上げると、アンナとラウルが呆れたような顔をしていた。


「だ、だって」

「まぁでも、この事が表沙汰になれば国際問題になりかねないからな。ファヴィーノ家のこの俺が刺されたんだぜ? 父上や貴族院のおっさん達が黙ってないだろ」

「ラウル、あんたまさか……」


 アンナが疑わし気な目で見上げると、ラウルは慌てたように首を振った。


「や、言う気はねぇけどな」

「そうよ。もしそれでレティのこともバレたりしたら大変だもの」

「え?」


 アンナは私の方を見て、声を潜め続けた。


「だってそうでしょ? レティがその『奇跡の力』を持ってるってことが知れたら、きっと悪いことを考える人だって出てくるに決まってるもの」


 どきりとする。

 そんなこと全く考えていなかった。


「だからやっぱりレティは私が一番近くで守るわ。ラウルも、変な意地はってないでレティを守るのよ!」

「は!? 俺がなんで刺されたと……あ、いや、なんでもねぇ」


 ラウルが気まずそうにふいと目を逸らし、私は首を傾げる。


「あら? そういえば……ひょっとしてラウル、レティが心配でずっと外見張ってたの?」

「!」


 アンナが意外そうに言うと、ラウルはバツが悪そうな顔をした。


 ――そうだ、ラウルがいち早く彼に会っていた。ということは……。


「ラウルごめんなさい! ありがとう!」

「あ~~、くそっ、俺めちゃくちゃカッコ悪いじゃねえか!」

「そんなことない! 嬉しい……本当にありがとう、ラウル」


 昨夜あんなに怒っていたのに、本当は心配してくれていたのだ。

 心を込めてお礼を言うとラウルは珍しく照れてしまったようで。


「と、とにかく! まだ安心は出来ねぇってことだ。先生のことも……そういや、アイツが言ってたことは本当なのか?」

「え?」

「前世でお前を殺したのが……その……」


 急に言いにくそうに言葉を濁したラウルに、私は小さく笑って頷く。


「そうみたい」

「そんな……」


 アンナがショックを受けたように口を覆った。

 

「クラウスは騎士だったから、命令には逆らえなかったんだと思う。でもセラスティアもちゃんと受け入れてたし、だからクラウスは全然悪くないの」


 そうなるべく明るく話すと、ラウルは「そうか……」と小さく呟いた。

 それから少しの沈黙が流れて。


「とりあえず、ユリウス先生が帰ってきたら色々訊きまくろうぜ」

「僕がなんですって?」

「ユリウス先生!?」


 いつの間にか先生がラウルの後ろに立っていてびっくりする。


「ここで何をしているのですか」


 私は急いで立ち上がり訊ねる。


「先生、大丈夫だったんですか!?」

「僕ですか? 別に問題ありませんよ。彼は無事引き取ってもらいましたから」

「隣の王子様をか?」


 ラウルがナイフを見せながら試すように言うと、先生は少し瞳を大きくしてからふぅとため息をついた。


「やっぱり、そうなんですか!?」


 アンナが興奮したように訊く。

 すると先生は学園の方へ足を進めながら言った。


「ここではなんですから、中へ行きましょうか」


 私たちは顔を見合わせてから、先生の後について行った。



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