ヲタッキーズ82 ハゲタカの涙
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第82話「ハゲタカの涙」。さて、今回は武力侵攻を受けた国への救援物資が強奪されます。
背後に債務の罠で儲ける禿鷹ファンドの影がチラつく中、秋葉原に消えた巨額の復興資金の行方は…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 "佐藤のゴハン"襲撃
ウクライダは、美人の国だ。
国難に揺れる彼の国だが、避難スル老婆からライフル片手の少女兵まで全員美人。サスガは魔女狩りを生き抜いた血筋。
「ココで良いわ。奥まで行って」
屈強なガードマンに指示スル彼女も美人。白い肌に整った顔立ち。彼女の下、ガードマンが台車を押し黙々と運ぶのは…
"佐藤のゴハン"3万9000個"←
「コレで最後ね?ご苦労様。じゃみんな出て」
ガードマンを労い、背中を叩いて追い出し扉をロック。
電子音がし、画面に施錠中の赤いサインが6本、灯るw
「次に逢う時はウクライダね」
「キーフで会いましょう」
「ナタリアの店で」
抱き合う金髪&碧眼美人。さらに肌白美人。あぁ目が絡むw
「気をつけて」
パーツ通りを重トレーラートラックが発車スル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またも苦手なセラピーの時間だ。任務を終え地球に帰還スルのはウレしいが、コレだけは何回受けてもno thank you。
「テリィたん。今回は、も少し踏み込んだ話を聞きたいわ。貴方のduty以外でね」
そう言ってコレ見よがしに長い脚を組み替えるSATOのモリン"心霊"作戦部長。
あ、SATOは"リアルの裂け目"からアキバを護る"南秋葉原条約機構"の略だ。
「あ。心の声が聞こえた!私は心"霊"作戦部長ではなく、心理作戦部長だから。ソレから私が脚を組み替える度に目を細めるのもヤメて」
「近視が進んで良く見えないンだ(何が?)!僕が仕事人間で、人を信じ切れないって話はもぅしたょね?」
「ヲタク以外は信じられないって話?今回は、そのヲタ友の話を聞きたいのょ」
「前にも逝ったけど、アキバじゃ万事ウマく逝ってる…特にミユリさんとは」
「ルイナとは?」
「え?」
笑顔が消える←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"佐藤のゴハン"を積んだトレーラートラックは、パーツ通りを抜け、中央通りを避けて地下アイドル通りに侵入スル。
その後ろからピタリと張り付く青いバンの中には、音波銃、塩弾頭ロケットランチャー、短機関銃を持つ武装兵が乗る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん。ルイナの話になると、かなり言葉を選ぶわょね?」
「誤解されたくナイだけさ」
「実は、彼女を嫌ってるとか?」
「おいおい。僕とルイナは、ソコソコ上手く逝ってルンだ。勝手に波風立てないでくれ」
「上手く逝ってナイ時は?ルイナだけが認められ、ヲタクの関心を独占した時とか。秋葉原がルイナを中心に回ってるような気がしない?」
「しないな」
「不公平だと思わない?」
「全然」
溜め息をつき長い脚を組み替えるモリン"心霊"作戦部長。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
重トレーラーは、地下アイドル通りに入る。
「何で速度を落とすの?」
「事故みたい。万世橋のおまわりさんが交通整理に出てる。後ろの護衛車に無線連絡スルわ」
「…護衛車、徐行了解」
重トレーラー助手席の碧眼美人が身を乗り出して見ると制服警官が指差しながら交通整理を行なっている。
警官の背後には故障したか、ボンネットを開けた車がいて、行き交う車は慎重に間合いをとってスレ違う。
「危ない!」
その時、路地裏から黒のSUVが飛び出し碧眼美人の運転手は急停車!思わズ助手席にいる肌白美人と顔を見合わせる。
「動くな!肌白&碧眼の姐ちゃん達!」
「良く見ろ!銃口がラッパ型だろ?音波銃だぞ!」
「トレーラーから降りルンだ!急げ!」
黒のSUVからは、手に手に武器を持ったストリートギャング達がワラワラと飛び降り重トレーラーに取り付く。
両手を上げ降車スル碧眼運転手と肌白美人。その横をダッシュでスリ抜けた護衛車が前に出て武装兵を吐き出す。
「銃を置け!」
「膝をつけ!お前もだ!」
「相手が悪かったな」
重トレーラーに取り付いていたストリートギャングに短機関銃を突きつけ1人1人剥がしては地面に伏せさせる。
さらに、交通整理中だった万世橋のパトカーがコチラに引き返して来て、拳銃や散弾銃を手に降車、応援スル。
「動くな!膝をつけ!」
「どーやら運の尽きだな。ストリートギャングども」
「全くだわ。アンタ達がね」
ところが、駆けつけた婦警?がガードマンの膝を撃つw
「おっと、他も動かないで。みんな、こーなるわょ!」
「ニセ警官?しまった、ギャングとグルなのか?」
「悪かったな。降りろ。早くしねえか!」
勢いづいたストリートギャングが、重トレーラーから碧眼運転手と肌白美人を引きずり下ろす。
ニセ警官の前に引っ立てると、ニセ警官はショットガンで碧眼運転手と肌白美人の顎をこずくw
「金庫を開ける暗証番号を知ってのはドッチだ?教えろ!」
「知らないわ」「私も」
「おいおいおい!こりゃ何だ?積荷はTVじゃナイのか?」
割って入るストリートギャング達。明らかに狼狽してるw
「この2人をSUVに乗せろ。拷問してコードを吐かせる」
「おいおいおい!ヲレ達のTVは?」
「GPSを見つけたぞ!」
ニセ警官の1人が、重トレーラーの下から手の平に載る装置を取り外して、高々と掲げ、左右に大きく振ってみせる。
「上等だ。壊せ」
「OK」
「完璧だ」
地面に叩きつけられたGPSは、粉々に砕け散る。
「おいおいおい!聞いてんのか!…おっと」
話が違うと詰め寄るストリートギャングの胸に、ニセ警官はショットガンの銃口をピタリと当てる。
「ハ、ハ、ハメやがったな?リア充のクソったれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
30分後。現場に万世橋のパトカーが続々と到着スル。
「おい!アレを見ろ!」
警官が指差す先に、両足に手錠をハメられ後ろ手に縛られたストリートギャング達がピョンピョン飛び跳ね逃げて逝くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。モリン"心霊"作戦部長のスマホが鳴る。
「やれやれ。僕にお座敷みたいだ」
「前回も大変でしたからね、どーぞ行って。で、次回だけど、ルイナもぜひ同席を」
「ルイナも?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は、パトカーや救急車でごった返してるw
「重トレーラーが強奪され、ガードマンは散弾銃で負傷らしいわ、テリィたん」
「あ、マリレ。あの物騒なチンピラは?」
「強盗団が雇ったストリートギャング。バンダナの奴がロベル。別名"ラッキードッグ"。東秋葉原"7丁目ギャング"のボスだって」
マリレは、僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団ヲタッキーズ。ノイズカフェのメイド長なので…メイド服←
「ラッキー、もう1度テリィたんに歌ってょ」
「俺達が襲撃スル手ハズだった。ソコへ武装したニセ警官が現れて…」
「誰が音波銃を?」
「リア充野郎さ。きたねーマネをしやがった」
「雇い主の名前」
「マリレ、タダで喋れって?」
「…積荷は?」
「TVって聞いてた。半島の連中に横流しスルつもりだったが…」
ココで王道の金髪美人が現れる。
「ウクライダ救援活動の"佐藤のゴハン"3万9000個ょ」
「貴方は?」
「国際人道支援NGO"ウクライダ・リーフ"代表のイヴァ・シャダ」
手を差し伸べられ握手スル。
美人との握手は清々しいな←
「ヲタクのテリィです。詳しい話をお聞かせください」
「あの"地下鉄戦隊メトロん5"のexecutive story editorのテリィたん?抱いて!積荷は"佐藤のゴハン"3万9000コ。ソレと金庫に5億が入っている。ウクライダ経済再生のための貴重な資金なの」
「ソンな大金が?」
「同乗の2名も誘拐された。それぞれ碧眼と肌白の美人ょ」
「ソレはソレは。しかし、なぜ2人はさらわれたのかな?」
「彼女達が金庫の解錠コードを知ってるの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
所轄の万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「碧眼の運転手ルスラ・バーナはシングルマザー。昨年の夏に有志として支援に参加したの」
「イヴァさん。彼女は入ってまだ日が浅い?」
「YES。もう1人の肌白はリカロ・タナモ。もう11年の付き合いになる。建築会社を経営してたけど、私財を売り飛ばしウクライダの子供達の学校や病院の設立に力を注いでいるわ」
万世橋の敏腕警部ラギィが突っ込む。
「彼女が黒幕かもしれない。失った人生の見返りを求めたのカモ」
「だから、犯人は輸送経路を知ってたのね」
「車載GPSの隠し場所とかもね」
ヲタッキーズのマリレとエアリが口々に黒幕論を述べるw
ソレを耳にした金髪美人イヴァはムキになって反論スル←
「あり得ない!信頼してなければ何も任せられないわ。2人共、とても献身的な人ょ!」
「まぁまぁ。コレは捜査の一環です。我々は疑うのが仕事なモノですから。どうか落ち着いて」
「輸送経路なら、警備の者だって知ってるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「輸送経路は、誰にも喋らないわ!」
警備を請け負った傭兵会社の女CEOだ。
「陸自の特殊作戦群で教官を崖から吊るして除隊?」
「だからって、私が犯人なの?」
「じゃあ供述してょ」
元傭兵のCEOとラギィ警部の丁々発止のヤリトリ。
「今のは嫌味ょ。真に受けて」
「5億が盗まれ2人が誘拐された。ウクライダから飲まず食わずで避難して来た人達のための"佐藤のゴハン"3万9000コも消えた。コトは重大。つまらない嫌味につきあってるヒマはナイわ」
「…ねぇウクライダの人って白いゴハンとか食べるの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「何か取込み中なの?ミユリ姉様は?」
「重トレーラーが武装強盗に襲われたんだ」
「重トレーラー?」
国宝級IQを誇りゴスロリで車椅子の超天才ルイナと"オンライン飲み"。せっかくの休暇だが、全員忙しいらしくて。
まぁルイナが1番忙しいんだろうけどw
「ウクライダへの5億の支援金を積んでたらしいね」
「もっと送らなくちゃ。戦争してルンでしょ?焼石に水だわ」
「5億のために碧眼と肌白の美人2名が拉致され拷問されてルンだって」
「ふーん碧眼と肌白に拷問!テリィたんの萌えはどっち?」
「両方。あと金髪も」
「3つも?ジェットストリームアタックじゃナイのょ」
「ソレが無理じゃ無いトコロがウクライダの美人さ」
「…全くミユリ姉様は、どーゆー教育をしてるの?で、ソンな武装強盗の逃走経路を絞り込める、素敵なアプリケーションがアルけど?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じ頃、万世橋の捜査本部。
「重トレーラーに積んだ金庫は、プラズマカッターで開けようとスルと壁の中に仕込んだ毒ガスが噴き出る仕掛けょ」
「毒ガス?」
「サリンょ」
コトもナゲに逝い放つイヴァにラギィは渋い顔。
前回ネットワーク型毒ガス団に翻弄されたのだ。
「ソレで、犯人は美人2人を拉致したのね?」
「YES。でも、私達としては、大事なのはお金じゃナイの。ウクライダには、お腹を空かした避難民の子供達が何10万人といる。餓死者も出てるわ。でも"佐藤のゴハン"の再手配には、また半年もかかるw」
「ソレより5億は?ナゼ銀行送金にしなかったのは?」
「金融インフラが不安定だし、やはり日本円は強い。国際人道支援では現金輸送が普通ょ」
「警備を請け負った傭兵会社は、無関係みたいだったけど」
「今は、重トレーラーを探すのが先ね」
「既に秋葉原ゲートウェイ空港と神田リバーの潜水艦ブンカーには見張りを配置、幹線道路は全て監視させてる」
「でも、秋葉原に通じる道路ナンて、無数にあるわ!」
頭を抱えるイヴァの頭上にあるモニターから声がスル。
「盗まれた重トレーラー逃走経路の予備リストが出来たわ」
「早いわね。サスガは超天才」
「叩き台だから。時間がナイのでしょ?」
「助かるわ」
「使用したのは、ダイクストラ・アルゴリズムょ。またの名を"欲張りアルゴリズム"。最初に最高値を選び出すセオリー。例えば、小銭でお釣りを用意する場合。無意識の内に、硬貨が1番少ない枚数で済むようにスルでしょ?千円札や500円硬貨を入れて。コレを地図に落とすと、ダイクストラ・アルゴリズムで最短経路がわかるワケ。この場合は、コインじゃなく数値に置き換えるのょ。ある数値から、より高い数値の道を選ぶ。より短い距離で早く信号の少ない道をね。ルート案内のwebサイトやカーナビには、全部このアルゴリズムが使われてるのょ」
「効果的ぽい」
「で、秋葉原の外へ脱出出来そうなルートを7本選んでみた。まぁ今後のデータ次第で変わるけどね。車高制限や橋の重量制限、道幅や交通量とかも」
捜査本部のモニターに映ったアキバの地図に7本の赤い道w
「分岐流とヒューリスティックで枝分かれを刈り込み、抜け道ルートマップ的な、いわば"逃走路を案内するルートマップ"を構築したワケ。ハイ、結果が出たわ。この7本のどれかで逃げた…と思う」
捜査本部に歓声が沸く!
「でかした、SATOのパツキン姐さん!」
「よくやった!コレで捜査開始だ!」
「alright!GO!GO!GO!」
ホンの約30秒で捜査本部はモヌケのカラだw
後に残ったのはイヴァと画像の中のルイナ←
「私は…ルイナ」
「イヴァょ、よろしくね。貴女は、SATOのスタッフなの?所属は?」
「私の所属は…テリィたんの元カノ会員」
「あら」
イヴァは、愉快そうに笑う。
第2章 ハゲタカは舞い降りた
ヤタラとヘリが飛ぶ。超天才ルイナの護衛ヘリかと思ったら警察のヘリ。ルイナが推定した逃走経路沿いに飛んでいる。
「桔梗門05から万世橋。第4ルート上空、異常ナシ。ただいまより第7ルートへ向かう」
「万世橋、了解。前線航空統制官との連絡を密にせょ」
「アンタがラギィ警部?」
万世橋の捜査本部。桜田門のヘリまで動員した立体捜査でテンテコ舞いのラギィにヤタラと恰幅の良い来客だw
「今回の重トレーラー強奪事件の担当はアンタと聞いたが」
「貴方は?」
「マケル・シャロ。アンタが見つけるコトになってる5億の真っ当な所有者だ」
「ふん。不良債権に群がるハゲタカファンドじゃナイの!」
恰幅の良いマケル・シャロ自身、同じスーツ姿のボディガードを数名連れてるが、そのまた背後からイヴァの声がスルw
「やれやれ、人聞きの悪い話だ。アレは合法的な金融投機、コレはビジネスなんだ。中華な国が押しつけた二国間債務を返せなくなったウクライダを、借款のワナから救うホワイトナイトと呼んで欲しいな」
「こうやって、中華な国への返済が溜まった、貧しい国々を回っては不良債権を安く買い叩く、別名"墓場のダンサー"でしょ?」
「世界1恰幅の良いダンサーだ。しかも、踊るダンスは芸術。今回は5億を超す不良債権を引き受けた」
「たった3000万に買い叩いてね。しかも中華な国は、その後ウクライダをめぐる国際世論に押されて、債務免除を決めた。ソレなのに、アンタは引き続き5億の全額返済を要求してる」
「5億は、私じゃなく、国際司法裁判所が認めた額だ。その5億を何が悲しくて3000万で我慢せにゃならん?今回5億が見つかれば、その金は全額私のモノだ。頑張って取り返してくれたまえ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「絶対取り返したくない!あんな奴のために命を賭けて武装強盗を追うナンてマッピラだ!」
恰幅の良いマケル・シャロの、アマリにハゲタカな放言に捜査本部の若手達が怒りたち、ラギィ警部に続々と詰め寄る。
「ま、待って。取り返したお金の行方は、私達警察の管轄外だから!で、どーやら警備を請け負った傭兵会社はシロだと思うの。となると、次はイヴァさんのトコロの国際人道支援NGOの救援スタッフを洗うコトになるわね」
「え。マジすか警部!彼等&彼女等は、孤児救済に尽くす善意の人達ですょ?」
「みんな、お願いょ。誰でも疑え。コレ、捜査の基本でしょ?」
ますます激昂スル若手を必死にナダめるラギィ。
「スタッフを人選したイヴァ事務局長の見込み違いだと?」
「誰にでも裏表がアルの。貴方にもアルでしょ?」
「警部、我々はチームです。一緒に仕事スルなら、先ず信じないといけません。秋葉原って、そーゆーモンです。チームを組むなら、先ず信用しナイと」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"リアルの裂け目"が開いた関係でアキバでは異次元人絡みの事件は、警察とSATOの合同捜査になる。
しかしSATOは、突然月の裏側に開いた"リアルの裂け目"対応でアキバまで手が回らないのが現状だ。
ソコでSATOは、ヲタッキーズを民間軍事会社と見做して契約、万世橋との合同捜査に当てているのだ。
「あ!メイド服にペンキべったりw最悪だわ!」
ヲタッキーズのマリレとエアリは、共にカフェ勤務なので、日頃からメイド服。今回の捜査でも着用中←
「迂闊に手をつくからょ、マリレ。しかし、その重トレーラー、ペンキ塗り立てというコトは?」
「むっちゃ怪しい。昭和通り沿いのトレーラーターミナルをチェックしてみたけど正解ね。ラギィ、怪しいトレーラーを発見」
「了解。エアリ、気をつけて」
ラギィ警部に無線連絡してから(ペンキ塗り立てのw)トレーラーに取り付くメイド服の2人。
銃口がラッパ型に開いた音波銃を構え、運転席側から接近、タラップを登りドアを開けると…
「ビンゴ!」
果たしてトレーラーの運転席に後ろ手に縛られ、サルグツワをかまされた碧眼と肌白の美人。
「重トレーラーを発見。運転席の人質2名を確保!」
「OK!エアリ、場所を教えて!」
「おっとソコまでょ!メイドさん」
エアリが振り向くと音波銃をコチラに向けたヘソ出しアラビアンナイトなコスプレふたり組w
「へぇ秋葉原って警察までメイド服なの?何者?」
「ヲタッキーズ」
「お逢い出来て光栄。念を入れてアラビアンナイトのコスプレして来て正解だったわ。でも、何でココがわかったの?」
ヤリトリを聞き絶望スル人質達。その時…
「も1人ヲタッキーズょ!動くな!」
背後に回ったマリレに音波銃を突きつけられ、アラビアンナイトのふたり組はホールドアップ!
ところが、さらに、また、その時…
「全員、武器を捨てて!」
「え。また?今度は何者?」
「アゥ!」
サイレンサー付き短機関銃の特徴的な連射音!弾かれたように倒れるアラビアンは武器を捨て、トレーラーに飛び乗る!
襲撃して来たのは女傭兵のふたり組。走り出すトレーラーに弾丸の雨を浴びせかけるがトレーラーは止まらズ走り去るw
「私達、ヲタッキーズょ!誰なの?」
「あーんトレーラーに逃げられた!全部アンタ達のせいょ!」
「何者なの?短機関銃を捨てて地面に伏せて!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「アンタ達は捜査の邪魔をしたの!わかる?」
迷彩服を着た女傭兵ふたり組は、万世橋に連行されて別々に取り調べを受けてるけど実に太々しい態度だ。意外に巨乳←
「武装したハイジャッカーを撃つのが捜査妨害になるの?メイドさんがホールドアップさせられて可哀想だったから援護射撃をしただけ。コレは人助けょ?名前?バネ・フジコ。認識番号105-57-88。Hカップ」
「バカにしてんの?ブルンブルンさせてると思ったら、バネ仕掛けだったか!」
「落ち着いて、マリレ。相棒も同じコトを歌ってる。ハゲタカファンドのシャロが金で雇った傭兵だわ」
荒荒しく肩で息をしてたマリレが1呼吸おく。
「…ラギィ。シャロを呼んで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
恰幅の良いシャロを呼びつける。
早速ラギィ警部が食ってかかる。
「シャロさん!」
「何か?」
「よくもヲタッキーズに尾行をつけましたね!」
シャロは、特に慌てた風もなく、飄々と答える。
「バネ・フジコに落ち度は無い。タマタマ巨乳なだけだ。どうか釈放してくれ」
「いいえ。おかげで容疑者を取り逃しました」
「ヲタッキーズを追った証拠は無いだろ?バネ達が自力で見つけた可能性も考慮してくれ」
「あの巨乳で?とにかく、今度やったら蔵前橋行きだから!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、捜査本部の別室に詰めているイヴァ、SATO司令部のラボにいるルイナと、会話アプリを使って対話している。
「ルイナ。貴女、その方程式で2人を追ってるの?」
「YES。だから、データが命ょ。今回の件では、またまた膨大なデータセットをゲット出来たわ」
「ヒューリスティックな発想で秋葉原をコッソリ抜け出す最適な経路を特定してるワケね?」
ルイナは驚く。
「あら。コチラ方面の方?」
「私、人道支援を始めるまでは経済学者だった。で、ルイナ。貴女の直感で、今後人質の2人に1番起こりそうなコトって何?」
「ソレは…今、この瞬間に2人が何を見聞きし、あるいは暗証番号を明かしてるか否かで大きく変わってくるわ」
イヴァは即答だ。
「2人はコードを明かさない。3万9000コの"佐藤のゴハン"は、ウクライダ西部への必死の脱出行を続けるウクライダの子供達を救うためのモノだから」
「確かに。でも、つまるトコロ、ウチも犯人も関心は5億ょね?この5億は犯人にとっては高額だけど、戦争中の国家にとっては、焼け石に水だわ」
「コレは呼び水なの。マイクロクレジットょ」
「マイクロクレジット?」
「YES。文字通り、小規模な事業助成。ウクライダの人々は少額から融資を受けられる。例えば、個人が編み物や野菜作りを事業として始められるよう助成スルの」
「個人の編み物に融資?」
「ルイナ、あのね。マイクロクレジットの効率性は、液体を吸う紙タオルの毛管現象に酷似スル。地域コミュニティの経済構造を紙タオルの繊維にスルわょ?コミュニティのメンバーは、みんな商業取引によって繋がってる。紙タオルだと染み込むだけだけど、マイクロクレジットは1人が儲かれば、周囲をも潤すのょ」
「豊かさとは、富の総額じゃなく、富の流通にあるってコト?」
「その通り!女性が生地を買って、仕立てた服を売れば、村にお金が入り、食料や家族に必要なモノが買える。そうやって、地域にお金が流通し、経済が広がれば、より多くの人が消費や投資を行い、経済はさらに豊かにナル。世の中に出回るお金の総額は増えなくても、より効率的に回れば良いの。エチオピアやバングラデシュなどで、小口融資の結果97%が返済出来てるの」
「驚異的な数字だわ!」
「え。ルイナ、貴女は、資本主義の一員でしょ?資本主義が機能するのがそんなに珍しい?…この写真の子を見て。この子は、実はつい最近亡くなったばかり。でも、積み荷が戻れば他の子達を救えるの。だから、2人は絶対にコードを歌わない」
ルイナは納得スル。
「イヴァ。この子の画像データ、私に送って」
第3章 2人はコードを歌わない
「テリィたんに見せたい画像が…あら。どーしたの?」
「わかンない。(地球へ)降りてきたら壊れてた」
「わかった!元カノの幽霊の仕業ね?いえ、リアル元カノの犯行だったりして」
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地が良くなり、常連達が沈殿して実は困ってる。
え?僕?僕はタマに休暇で地球に降りた時だけ…とにかく!珍しく今宵は無人。メイド長のミユリさんまでいないw
SATO司令部にいるルイナと、またも"オンライン呑み"←
「え。いや、まさか…うーん確かにエリゼが気に入ってたツボだけど…ヤバ。直さなきゃ」
「で、テリィたん。最近どーなの?」
「え。僕?相変わらず埋もれてるょ」
「恋に?」
「何だょソレ。仕事にさ」
「ねぇねぇ。その後、セラピーの方はどーなの?何か宿題とか出てナイの?」
「宿題?あ、そー逝えば、今度ルイナを連れて来いって逝われたナ。何か仕掛けてるの?」
「ええええええええっ?!まさか!知らないわ」
「じゃ今度一緒にセラピー受ける?リモート参戦でOKらしいけど。今まで口に出来なかったコトとか、思い悩んでたコトとか話せば良いらしいょ」
「な、な、な、何なのソレ?(ってか裏で手を回してた話と違ってるわwモリン心理作戦部長には、ミユリ姉様抜きでテリィたんとお話し出来るチャンスをって頼んでたのに!)」
「嫌なら断ってくれ。僕も複雑な気分だし」
「え。複雑な気分って…とにかく!テリィたんのセラピーだからテリィたんだけで受けたら?私、関わるのはやめとくわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昭和通りと平行して走る首都高上野線。その高架下の放置自転車置き場を見回るふたりのメイド。エアリとマリレだ。
「重トレーラー襲撃に使われたポイ、黒いSUVに似た車がココに止まってたとの通報があったの」
「確かに、大型車の通ったような跡もアルわ」
「ふーん。マリレ、ゲシュタポから追跡方法とか教わったの?」
マリレは1945年の陥落寸前のベルリンから現代のアキバにタイムマシンで脱出した"時間ナヂス"だ。国防軍だけど。
「ヤメて。国防軍は、ゲシュタポとは仲が悪いのょ。実は、私は縄文人の末裔。32分の1だけ、三内丸山の血が流れてる」
「マジ?」
「ゲシュタポと犬猿の仲だったのは事実。他は…」
ココで放置自転車の山の中からウメキ声が…
「今のは何?ホームレス?」
「あ!血まみれだけど碧眼のメッチャ美人が倒れてる!大丈夫?あぁヒドいケガだわ」
「助けて!未だリカロが奴等に捕まってるの!」
重トレーラーの碧眼美人ドライバーだw
「私はヲタッキーズのエアリ。一体何が起きたの?」
「…暗証番号を言えと殴られた。顔の形が変わるくらい…」
「ソレで番号を教えたの?」
「まさか!大事な支援金ょ。でも、殴られ続けて気を失った。そして、SUVから放り出された」
「何で?」
「さぁよく覚えてない。でも…リカロが私を釈放スルなら、解錠コードを教えると言ったのかもしれない」
ココで碧眼のルスラは咳き込み…血反吐を吐くw
「とにかく、神田消防の救急車を呼ぶわ。場所を移さないと」
「万世橋に捜査手配を!金庫が開けられた可能性もアルわ」
「ソレはナイわ。彼女は、嘘をついた私を逃して"佐藤のゴハン"を守ろうとした。だって…彼女はコードを知らないわ」
「え。もしかして?」
「YES。コードを知っているのは、私なの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
碧眼ドライバーのルスラ・バーナを"外神田ER"に預けてヲタッキーズは、アキバの物流に詳しい情報源と接触スル。
「救出された人質の話だと、強盗は"佐藤のゴハン"の件を良く知っていた。恐らく重トレーラーによる輸送情報は、レトルト業界から漏れたと思うの。何か知ってる?」
「ふーん。名前は出さないでね。レトルト業界は万世橋を煙たがってるから。内密に頼むわ。色々面倒なの」
「わかったわ」
「今週、保存期間切れの大量のレトルト食品が出回るコトになってる。ゴハンやパン。ラーメン、ソバ、ウドン。ほとんど全ての炭水化物。でも、未だ出て来てない」
「そのブラックマーケットで誰がレトルト食品を買うの?」
「ノンキホーテみたいな量販店、ヤバいドラッグストアチェーン。大手コンビニは絶対手を出さない。でもね。"佐藤のゴハン"だけは国外に流れるって噂ょ。闇ディーラーが買取って、ウクライダ以外のもっと高く買ってくれる何処かに密輸されるらしいわ」
「やれやれ。ソレまで3万9000コのレトルト飯は、秋葉原の何処かで眠ったママってワケか…ねぇ貴女なら何処から目星をつける?」
「私なら輸送ルートから狙うわ。レトルトの強盗団って、発送元の会社から情報を得てるコトが多いから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ、調子はどう?」
データ解析に夢中のルイナが顔を上げると、液晶ディスプレイにミユリさんの笑顔。急いでアプリで回線を開くルイナ。
「あ、ミユリ姉様。ソコソコですぅ」
「テリィ様とのセラピー、流したんだって?MOTTAINAI」
「え。アレは姉様に内緒でテリィたんとのデートを仕掛けたら何処かで歯車が狂って…あわ、あわわ」
「セラピー受けるとテリィ様との間柄にヒビが入るとでも?」
「いえ、ソンな(単なる極秘デート作戦の失敗でw)。とにかく!今、テリィたんと私は均衡状態に達してる!私はテリィたんの、テリィたんは私の解析を共に手に手を取り合いながら、お互いスープの冷めない"素敵なお友達"の距離にいる。スピアみたいな元カノですらない。だから、ミユリ姉様。許して!」
「何を?…私もテリィ様とは色々あったのょ。未だパワーに覚醒スル前だったけど、私、万世橋から落ちたコトがアル。でもね、もしルイナにも同じような出来事がアルのなら、一緒にセラピーを受けてくれば良いと思うの」
「姉様が万世橋から落ちた?」
「当時はね、私、何もわかってなかった。だから、たくさんテリィ様とお話ししたの。だから、ルイナ。貴女もテリィ様とのセラピー、リモートで良いから受けてらっしゃい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の捜査本部。
「レトルト業界の会社を何社か調べたら、この女が浮上しました。ディベ・リビト。トレーラーヤードで私達に音波銃を突き付けたアラビアンナイトのコスプレをした女です」
メイド服のエアリがモニターに顔写真を映す。
「2週間前までレトルト包装の会社でOLやってました。武装強盗で服役し1年前に出所。共犯者はビンセ・ケガン」
もう1枚、顔写真が出て顔をしかめるマリレ。
「この女もトレーラーヤードにいたわ」
「さらにビンセの弟でアンソとザック。奴等はレトルト食品強盗のプロです」
「ソンなプロがいるの?」
「ビンセには、別件で殺人容疑があります。冷凍倉庫の暗証番号を言わなかった警備員を殺害してます」
「…ヤバいじゃないの。リカロが危ないわ」
ココで若い刑事が駆け込んで来る。
「ついさっき、ハイウェイパトロールがトレーラーのサービスエリアで件の重トレーラーを目撃。でも、逃げられたとの報告が!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
せっかくアキバに来ても忙しくて誰も遊んでくれないので、地下アイドル通りでチラシとか拾っていたらスマホが突然…
「わ!電源切ってるスマホに強制アクセスして来るのは…ストリートハッカーのスピアだな?!」
「YES。でも、テリィたんの元カノ会長のスピアって呼んで欲しいな!ルイナと代わるょん」
「テリィたん!碧眼ドライバーが見つかった場所を基に逃走ルートを再分析してみた」
「すげぇ。でも、休暇中だょヲレ」
「だから、ラギィに渡した。直ぐ調べてくれるって…で、この前のデート、じゃなかったセラピーの件だけど」
「アレは忘れてくれ」
「OKなのん。日時を教えて。リモートで参戦スルわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
重トレーラーの目撃情報のあったトレーラーサービスエリアは首都高上野線が走る高架の下で放置自転車置き場の隣だ。
万世橋の制服警官隊が片端からトレーラーを調べる傍らで、いつぞやの巨乳傭兵バネ・フジコと出くわすヲタッキーズw
「またアンタ乳…じゃなかった、アンタ達?次に逢ったら逮捕スルお約束だったょね。幸い万世橋の警官隊も来てるし…おまわりさーん!」
「冗談でしょ?逮捕事由は何ょ?ねぇ私達はチームょね?協力しない?」
「せっかくのお申し出だけどno thank you」
「でも、逮捕される覚えがナイわ。巨乳だから?」
「ソレ、重罪。ってか、また私達を尾行して来たンでしょ?」
「今回は違うわ。ネットで懸賞つけて情報を募集したら、ワサワサ出て来たの。ココで目撃したって」
「マジ?私達、チームょね?詳しく話して」←
「あら。ハゲタカファンドのシャロさんが、金に糸目をつけズにゲットしたネタょ。話せない。どーせ警察はお金がナイんでしょ?諦めて」
ソレを聞いてた現場の警官達が怒り狂って、バネ・フジコを近くのタンクローリーに叩きつけて後ろ手に手錠をかける。
「ヤメて!胸が潰れて苦しい!」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまた捜査本部に恰幅の良い姿を現すマケル・シャロ。
「ラギィ警部。今回もウチのバネ達は違法行為をしてない。早く釈放してくれ」
「ありえない。釈放は夢物語ね。逆に、バネ達にアンタが掴んだネタを吐けと命令して」
「巨乳に恨みでもあるのか?アンタが5億を私に渡すと書面にサインしたら話すょ」
ラギィはシャロに(壊れても良い中古のw)PCを叩きつけるw
「こっちへ来て!見て」
救出直後の碧眼ドライバーの顔面に刻まれた拷問の痕。
「彼女は、アンタの金のために拷問を受けた。そして、命をかけて5億を守った。しかし、彼女の友達は未だ犯人の手中にあり、今この瞬間も拷問されている。今、秋葉原の願いは、彼女の友達が無事に戻り"佐藤のゴハン"がウクライダの子供達に届くコト。ソレなのにアンタは!」
「…わかった。情報は全て教えよう。だが、5億を取り戻すコトはヤメない」
「取り戻せば?どーせ裁判所が味方ナンでしょ?コッチは、もう一度アンタの巨乳傭兵を見たら司法妨害で逮捕スル。覚えてて!」
真っ赤な顔で立ち上がったシャロは物も言わズに立ち去るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、経済学者と超天才のアプリ対話は続く。
「ルイナ、あのね。交通工学では、ネットワーク均衡状態というものを考慮して、様々なルートを考えるワケ。つまり、ルートを変えてもそれ以上に移動時間は短くならない。そーゆー状態のコトょ?」
「うーんイヴァ。ソレは、もうわかってる。フラッグフォールド法のアルゴリズムでしょ?でも、問題は別なの。私の分析だと、トレーラーはこのルートを進んでるハズ。東にね。でも、ラギィ達は見つけられナイの」
「自信あるの?」
「確率は96%。ソコでマデラ司令官代理に断って"シドレ"の位置を求め、見たいトコロを映してナイか割り出した」
「"シドレ"って?」
「あ。SATOの量子コンピューター衛星。秋葉原上空3万6000km上空にいるの」
「ソレで?」
「気になる画像データは7つあったけど、全部空振り」←
1呼吸おいて、イヴァの言葉。
「ねぇソレって逃走を前提とした数字ょね?でも、犯人が逃げようとしてなかったらどーなるの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今宵も捜査本部は眠らない。
「警部!SATOのパツキン姐さんから秘匿電話です!3番!」
「あ、ルイナ。良かった、未だ起きてた!あのね、私が計算した逃走ルートだけど…」
「昼間、ヘリで空から徹底的に探したけど」
「違うの!秋葉原の外に出ると道の数が少なくなるから、逆に目立って捜査がしやすくなる。恐らく犯人はソレを知ってた」
「え。まだ、というか、ワザと秋葉原の中に留まってるとか?」
「YES。何処かに重トレーラーを止めて金庫を開け、重トレーラーは捨てて乗り換える…出来るだけ早くそのルート上の場所を割り出してみる」
「OK。今から全車、秋葉原に出すわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「台所町3から万世橋。新たなる想定ルート上に不審トレーラーの姿はなく、強盗団につながる手がかりはナシ」
「了解。再度パトロール願う。次の定時連絡は…」
「待て!万世橋、いた!いたぞ!碧眼ドライバーが言ってた黒のSUVを発見!」
第4章 木を隠すなら森の中
神田リバー沿いにある中古のコンテナハウス。何度かレンタルされた果てに忘れ去られ今は朽ち果てるのを待つばかり。
「だから言ったでしょ?」
「待て。今のはイカサマだろ?」
「ねぇ!誰かビール買って来てぇ!」
中では男女がトランプ賭博に明け暮れていたが、唯一ある古い窓をドンドンと叩く音がスル。全員が武器に手を伸ばす!
「あのぉごめんなさーい。ガソリン分けて。ガス欠なのょ」
おぉ!絶世の巨乳が窓に胸の谷間を押しつけてウィンクしているではナイか!コ、コレは夢なのか?!いいや、現実だ!
「俺が行く!」
「待て、俺が!」
「ねぇ。私のカード、見ないでくれる?」
男全員が武器を放り投げドアノブを掴んだ、その瞬間!
「万世橋警察署!万世橋警察署!全員動くな!」
万世橋の警官隊が拳銃片手にナダレ込む!
椅子を蹴飛ばしテーブルをひっくり返す!
「手をあげろ!早くしろ!」
「膝をつけ!」
「警部、主犯のディベ・リビトがいません!」
現場指揮のラギィ警部は唇を噛む。
「重トレーラーも見当たらないわ…よし。2手に分けて尋問開始ょ。ヲタッキーズ、いる?」
「はい、警部」
「このチョビ髭、外に出して絞ってくれる?で、ハゲ頭のアンタ、コッチに座って。重トレーラーは何処?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
屋外に連れ出されたチョビ髭は、マリレとエアリから交互に責め立てられる。メイド姿で情け容赦なく追い込んで逝くw
「ココまでで、もうアンタの武装強盗罪は確実ょ」
「人質が死ねば殺人罪が加わるわ」
「わ、わ、わかった。重トレーラーは近くに隠した。だが、場所は知らない!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィがコンテナハウスから出て来てヲタッキーズを呼ぶ。
「ハゲ頭は重トレーラーは池袋だって」
「警部、ウチのチョビ髭は近くだと言ってるわ」
「どっちがホント?ドッチかがウソをついてるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その場でラギィは、超天才のルイナに相談スル。
「犯人を捕まえたけど、主犯と重トレーラーが見つからないの!1人は近くで、もう1人は秋葉原の外だって言うンだけど」
ルイナは即答だ。
「それじゃ古典的な論理パズルで行きましょ。それぞれに、相棒が何て言うと思うかを聞いて」
「え。どーゆーコト?」
「ラギィ、あのね。1人は真実を言ってるの。2人の答えの反対を探せば良いワケ」
「うーんワカッタようなワカンナイような。また電話スルわ…ヲタッキーズ、来てくれる?ちょっとした心理作戦を試すコトになったわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コンテナハウスの中でハゲ頭を尋問するラギィ。
「警部さん。だから、俺は全部話したょ」
「あーらアンタの相棒もそう言ったわ。泣きながら白状スルってね」
「なら、奴は間違いなくこう言うハズさ」
ハゲ頭はニヤリと笑う。
「今頃重トレーラーは池袋だと」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コンテナハウスの外でチョビ髭を尋問するヲタッキーズ。
「奴が吐いたって?あり得ねぇ。メイドさん達は騙されてルンだ」
「アンタも私達を騙してルンでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「2人とも秋葉原の外だって」
「ビンゴ!ソレなら、未だ秋葉原にいるってコトょ。今、2つある選択肢の内、どちらか一方が嘘で、もう一方が真実。相手の言葉を予想させれば2人ともウソを言う。ウソが二重になるってコトょ」
「ルイナの言うコトはわかったけど、肝心の探してる重トレーラーが見つからナイの…あ。でも、重トレーラーが姿や形を変えていたら?」
「とりあえず、同じスケールのモノを探してみます?」
「待って。見て。神田佐久町河岸町に、江戸時代からの物流拠点だった名残のトレーラーパークがアルわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田佐久町河岸町のトレーラーパーク。
「この中に重トレーラーが隠れてるカモ。ミユリ姉様は?」
「ムーンライトセレナーダーに変身済み。standby」
「あら?コレを見て!このハウス、最近来たばかりだわ。植込みの草が未だ青い」
トレーラーパークにはトレーラーに載せるタイプの長目のコンテナハウスが建ち並ぶ。1種のグランピング施設なのだ。
「やっぱり。見て」
試しにエアリがドアを開けると…コンテナw中に入れない←
足回りを囲っているチャチな化粧板を外すと無骨なタイヤ。
トレーラーハウスに見せかけた重トレーラーそのものだ!
「発見!」
その瞬間、重トレーラーがエンジンをふかし走り出す!
「止まれ!ディベ・リビト、逃げられないぞ!」
ふれあい通りに飛び出した重トレーラーは、止めに入った万世橋のパトカーを蹴散らす。その前に立ちはだかる人影は…
「ムーンライトセレナーダー!重トレーラーを止めて!」
「勝利を射よ!」
「正義あれ!」
電光一閃!青白い稲妻が運転席を直撃!
「ぎゃー!助けてぇ!」
急ブレーキをかけた重トレーラーから、火だるまになった主犯のディベ・レベトが転がり出て来て絶叫。
一斉に泡消火器を浴びせかける警官隊。哀れ泡塗れのママ、地面に転がされ後ろ手に手錠をかけられる。
「手を見えるところに出して。動くな!」
その背中を踏みつけ、拳銃を突きつけるラギィ警部w一方…
「あぁ!リカロ・タナモさん!ヲタッキーズです!」
ムーンライトセレナーダーが必殺技"雷キネシス"の最小出力で重トレーラーのバックドアを吹き飛ばす。その中には…
「もう大丈夫です。口のテープをはがします」
「…私、お金は渡さなかった」
「そうょ!thank you!thank you!」
ムーンライトセレナーダーが傷だらけの人質を抱き起こす。
「貴女は、貴女の命を賭けて子供達を護った。医療班を呼んで!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「どう、私?病んでるかしら?萌え?」
松葉杖に絆創膏顔で微笑む元人質リカロ・タナモ。
「良い女かな?ソレともワイルド?」
「ホント、ワイルドだわ」
「あら。ちゃんと病んでる。素敵ょ」
未だ腕を釣ってる碧眼のルスラ・バーナが合流。
金髪のイヴァ・シャダが、元人質達と抱き合う。
「ウクライダへ戻れる?」
「もちろん。子供達が待ってる。今から?」
「バカね。その松葉杖が取れてから」
金髪、碧眼、肌白の美人達が抱き合う。美しい絵だ。
ソレを物陰から見守る、恰幅の良いマケル・シャロ。
「彼女達は、自らの命を顧みず、子供達の未来を護った。あんな目に遭いながら、その苦難に耐えたの。ソレは、ただ、貴方の5億を守るためだと言うの?」
ムーンライトセレナーダーの声にも振り向くコトなく、ただただ美人達をじっと見つめる、恰幅の良いマケル・シャロ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「SATO司令部のルイナ、みんな。聞いてる?」
捜査本部からイヴァ・シャダがアプリで話しかける。
「恰幅の良いマケル・シャロが示談に応じたわ。3000万の補填と交換に5億を請求スル権利を放棄したわ!」
SATO司令部に歓声が沸く。
「ブラボー!」
「ハレルヤ!」
「ばんざーい!」
ヲタッキーズも大歓声だ。
「守銭奴の目にも涙ってコト?」
「でも、どうして?」
「ムーンライトセレナーダーの一言のおかげょ。あの言葉が胸に沁みたみたい。ありがとう、ムーンライトセレナーダー」
「何よりも、色白、碧眼、金髪美人の"トリプル真摯な姿勢"を見たからだわ。みなさんこそ、素晴らしい」
「みんながみんなの姿に感動した。ホントに素晴らしい街だわ、秋葉原。この街に感謝します。ホント」
イヴァが感謝の言葉を述べて、アプリが切られる。
ソレを見届けてからSATO司令官代理のマデラが…
「彼女達はSBU。ウクライダ国家保安庁の諜報員ょ」
「えええええええっ!スパイなの?いわゆる美人スパイ?」
「YES。ウクライダへの武力侵攻に際し、首相官邸は国際世論に同調、SATOの量子コンピューター衛星"シドレ"の衛星インテリジェンスと連携した自爆ドローンによる対地攻撃システムの輸出を決定したの。しかし、遺憾にも情報漏洩があり、急遽"佐藤のゴハン"の緊急輸出と言うニセ情報を流したら、アッサリみんなひっかかったわ。ゴメンね。ホントは"佐藤のゴハン"はカモフラージュだったの」
「え。私達、ダマされたの?」
「ゴメーン。私はマデラから聞いてたわ」
「ムーンライトセレナーダー?!あぁ姉様にダマされた!」
マリレとエアリから非難轟々w
でもミユリさんは涼しい顔だ←
「いいえ。マジでダマされたのはハゲタカね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATOモリン心理作戦部長のセラピー。
「ルイナ。貴女、13才の誕生日に御家族が車椅子の貴女をキャンプに連れて行ってくれたんだって?」
「え。でも、モリン部長。アレは家族が決めたコトで、私は行きたくなかったの!」
「そう?そして、ルイナはキャンプ場で迷子になり、12時間ぐらい行方不明になった。御家族はモチロン、地元警察やレンジャーが総出で探し回った。お母さんは、キャンプに行こうと言い出した、お父さんを責めた」
「ソレが何なの?ねぇコレは私のセラピーなの?」
モリン部長は答えズ質問を続ける。僕は…唖然w
「それについて、ルイナはどう思うの?」
「自分にムカついた。でも、違うの。全て、誤解なの。私は道に迷ったんじゃない」
「と言うと?」
「私は車椅子で迷惑がられてたし、ひとりで家に帰ろうと思っただけ」
「キャンプ場から?そんなの信じられるワケないだろ?やっぱり、お父さんが悪いんじゃないか?」
ウッカリ口を挟むバカな僕←
「テリィたんは、お黙り」
「すみません、部長」
「ねぇ。何でソンな昔の話をスルの?もう忘れてよ」
モリン心理作戦部長は、うなずく。
「でもね、ルイナ。ホントは家族がうとましかったんじゃない?絶対そうょ。ソレを御家族が気づいてないとでも?みんな、顔を見ればわかるモノょ?」
「家族には、そう見えたかもしれない。だって、いつだって家族の楽しいコトは…私はノケモノだった。いつもホントに楽しいコトは私抜きだったの!」
「なぁルイナ。ホントに迷子じゃなかったのかい?」
「みんなが思うほど非力じゃないわ」
「タイヘンな目に遭ったんだね」
僕がそう逝うと、ルイナはワッと泣き出す。
モリン心理作戦部長が優しく微笑み尋ねる。
「では、テリィたんと仕事をスルのは?」
「僕は、ルイナを何かうまく利用してる気がしてる」
「ねぇ。ルイナ、貴女は?」
「…好きなの。テリィたん達とワイワイ仕事をするのが」
僕は画像の中のルイナに語りかける。
「本気で車椅子で帰る気だったのか?」
「だって、道に出たら、スゴく簡単だったし」
「ティーンエイジャーだったんだろ?」
「もう博士号は3つ、持ってたけどね」
「車椅子バスケみたいに飛ばすつもりだったの?」
モリン部長も加わり、僕達の話は続く。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"ハゲタカファンド"をテーマに、恰幅の良い禿鷹ファンド、彼が雇う巨乳傭兵、強盗団長、救援物資の奪還に命をかける金髪、碧眼、肌白の3美人、強盗を追う天才や敏腕警部、種明かしの防衛機構の司令官代理、心理作戦部長などが登場しました。
さらに、ヒロインと超天才の恋の駆け引き、主人公の超天才への屈折した想いなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、製鉄所投降の情報が駆け巡る秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。