巨大魚
こちらは百物語六十八話になります。
山ン本怪談百物語↓
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小学校2年生くらいの時でしょうか。
当時悪ガキだった僕は、友達と一緒に冬休み中の小学校で遊んでいた。
時間は夕方の5時過ぎ。
辺りはすっかり暗くなり、もう家へ帰ろうとしていた時でした。
「なぁ、プール見て帰ろうぜ」
友達の1人がそう言い始めた。冬休み中の使われていないプールが少し気になったのです。
「うわぁ、汚い水…」
うちの小学校には、低学年用プールと高学年用プールがあります。低学年用プールは浅く、溺れる心配がないように作られています。
「6年生はこれを掃除するんだよね。大変そうだなぁ~」
冬休みということもあり、プールは荒れ放題になっていました。プールサイドは枯れ葉やゴミが散乱しており、プールの水は黒く濁って底が見えないほど汚れていました。
「こんなの見ても楽しくないよ。もう帰ろうぜ」
僕たちがプールから離れようとしたその時…
バシャンっ!
低学年用プールから水のはねるような音が聞こえてきたのです。
「おい、誰かいるんじゃないか?」
最初は誰かがプールの中にいるのではないかと思いました。しかし、プール全体を見渡しても誰一人姿を確認することができません。
しかし…
バシャンっ!
再び水のはねるような音が聞こえてきました。そして僕たちは見てしまったのです…
「おいっ!なんだあれっ!?」
友達が指さす方向を見ると、低学年用プールの濁った水の中で蠢く「何か」に気がつきました。
「………魚?」
低学年用プールに「魚」がいたのです。それも普通の魚ではなく、驚くくらい巨大な魚でした。
「なんでプールに魚がいるんだ?」
ドロドロに濁った水の中を巨大魚が泳いでおり、少し離れた場所から見ている僕たちにも背びれや尾びれが見えるくらい存在がはっきりしていたのです。
「ピラルクだ…ピラルクだよ…!」
皆さんはピラルクという魚を知っていますか。体長3m以上になる巨大な淡水魚で、世界最大級の魚として有名です。プールで泳いでいる魚は、そのピラルクに似た魚でした。
魚はしばらくプール内を泳いだ後、忽然と姿を消してしまいました。
低学年用の浅く小さなプールで身を隠す場所なんてあるのでしょうか…
冬休みが終わった後、クラスのみんなにこのことを話しても誰も信じてくれませんでした。
あの魚の正体は一体何だったのでしょうか。
低学年用プールは現在改装工事が行われており、真相は何もわかっていません…