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1話


「レミちゃん、お疲れ様」


 「作業場」というプレートが掲げられた扉から一糸まとわぬ姿で現れたレミに、ユツキは真っ白なバスローブを羽織らせる。レミの顔には明らかに疲労の色がにじんでいた。


「やっぱり、朝から三人は身に堪えるね。お腹がきつくなっちゃった」


 下腹部をさすりながら、レミは社長席に腰を下ろした。ほんのり上気した顔といい、玉のような肌に光る汗粒といい、ポルノ映画の撮影後と見まがうような光景だが、彼女が今さっき終えたばかりの「仕事」は、世界中のどんな女優にも再現できないものだ。


「……無理させてごめん。三人とも、ボーダーの半年を過ぎても一向に返済してくれない人たちだったから。来客の予定もないし、今日はもう休みにしよう?」


 そう言って、ユツキは作業場の中を覗き込む。レミが扉を開けっ放しにしたのは、彼女ががさつな人間だからではなく、その「確認」を必要としていたからだ。


 地面のアスファルトがむき出しになっている作業場は、磯っぽい香りがぷんと鼻をつき、中央には白い粘液の溜まり場が形成されていた。その上で身を寄せ合う三つの巨大な卵は、鶏のそれを丸ごと大きくしたような見た目だが、その中身がトーストやスクランブルエッグの類に「適して」いないことは、辺りに無造作に転がった三人分の手錠が物語っている。


「うん、完璧。これで安心して軍の人に引き渡せるよ」


 ユツキは作業場の扉を閉めると、隣の冷蔵庫から、どろりとしたクリーム色の液体が入ったポットを取り出した。それをグラスになみなみと注ぎ、ストローを入れてレミの前のデスクに置く。


「なーに、これ」

「わたし特製のバナナジュース。無茶を聞いてもらったお礼にね」


 その単語が出た途端、レミは身を乗り出し、グラスを両手で持って覗き込んだ。少し気怠そうな表情から一転、子供のように目を輝かせるその姿は、23歳という数字以上のダイナミックさを誇る彼女自身の肉体に矛盾している。


 特に、その胸の大きさは野生的と言っていい。前を留めていないとはいえ、ワンサイズ上のバスローブの正面から谷間がのぞく異常事態を気にも留めず、レミはユツキの顔を見上げた。


「あの……飲み終わったら、そっちも飲んでいい……?」

「え、これ?」


 ユツキはジュースの残りが入っているポットを揺らした。


「もちろんいいけど……お腹は大丈夫?」

「バナナジュースは、いいの」


 その言葉が単なる「別腹」とは意味が違うことを、ユツキは察していた。嬉々としてストローを口に含んだレミだが、彼女がつい先ほどまで腹の中に収めていたのは、どこの馬の骨とも知れず、借金で首が回らなくなった年上の男たちだ。その「活躍」ぶりを長年見てきたユツキだからこそ知っていることだが、卵にすることが決まった債務者の中には、生きたまま丸呑みにされる恐怖ゆえ、大暴れし、涙や鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした挙げ句、最後には失禁してしまう人もいる。いくらレミが「無性竜」の血を引き、身体の一部や全身を竜に変えられる稀有な存在とはいえ、人の姿に戻ればユツキと同じ、一人の年頃の女性であることに変わりはない。多かれ少なかれ、抵抗感はあるだろう。


 また、呑み込んだ獲物を体内で同種化し、卵に変えることで繁殖する無性竜の力も、実際の個体にとっては重要な「本能」かもしれないが、竜人であるレミにとって、それはあくまで能力の一つに過ぎない。彼女が今日、獲物をスムーズに卵化させるために朝食を摂らず、たいして食い甲斐もない男たちを胃に落とし込んだのは、これがれっきとした仕事だからだ。


「えーっと、レミちゃん。一つ相談いいかな?」


 ポットをデスクに置き、レミがバナナジュースを啜り終わるのを待ってから、ユツキはおそるおそる話を切り出した。


「どうぞ」


 一口で半分近いジュースを吸い上げ、レミは椅子に深く腰かける。

決して軽くない咳払いが、オフィス内に響く。


「……怒らないで聞いてほしい。最近というか、この会社を作った時から兆候はあったんだけど……」

「なに。卵の収益が、とうとう貸金での収益を超えちゃったとか?」


 本気で頭の中を読み取られたと思ったのか、ユツキはぎょっとしたように身を引く。


「ど、どうして……?」

「そりゃあ、産んでるのは私だし。卵一個あたりの単価と、ここ数ヶ月間の忙しさを考えれば、流石に『そろそろ』だと思うよね」


 絵画、高級車、宝石、兵器……世の中広しといえど、このマザー商会から出荷される竜の卵と、価格面で並ぶ商品はそう多くない。もっとも、街の博物館で骨格展示が行われるというだけで長蛇の列が生まれるなど、生きた竜そのものが珍しい中で、学術的には存在しないとする説まである「無性竜」の卵となれば、高値をつけない方が難しい。


 買い手は竜を兵器として利用している軍を始め、金融方面で取引のあるマフィア関係者が多いが、どこで情報を仕入れたのか、まれに純粋なドラゴン愛好家や、異常性癖の持ち主(そういう人に限ってお金は持っている)なども流れ着いてくる。その場合、卵が孵った後に何が起きても自己責任となる旨、一筆書いてもらうのが会社のルールだ。


 また、メリットがもう一つ。著名な芸術家が遺した一世一代の作品や、奇跡的に産出された超大型のダイヤモンド、莫大なコストをかけて生み出された爆弾などと違い、この卵はマザー商会の事務所奥にある作業場で、文字通りレミによって「安定的に」産み出される。かかるコストがあるとすれば、半年以上にわたって返済の意思を示さなかった債務者の命と、卵の値段に比べれば雀の涙程度の貸し倒れ金くらいだ。


「そう、ついに本業と副業が入れ替わっちゃったわけだ。今後は鶏卵業者でも名乗ってみる?」

「その方がいいと思う。『竜卵』なんて一般には流通してないしね」

「……冗談だよ」

「え?」


 その時、年季の入った木がこすれ合う音がした。事務所は入り口から順に応接室、社長室、作業場と並んでいるが、奥の部屋でも誰かが入って来たらすぐに分かるよう、入り口の古いドアはあえて取り替えず、軋んだままにしてある。ドアチャイムの代わりというよりは、防犯のためだ。


「……来客の予定はないって言わなかったっけ」

「おかしいな、そのはずだよ」


 不安そうに首を傾げるユツキに対し、レミは何か覚えがあるように笑みをこぼした。


「恨みでも買っちゃったかな。つい最近、卵にした人の友達とか」

「どうだろう。うちのお客さんって何となく、そういう繋がりから縁遠い人が多い気がするんだけど……」

「……考えてる暇ないかも。多分、もうこの部屋の前まで来てる」


 レミの言葉どおり、社長室の扉が三回、不気味な間を空けてノックされる。

 二人は床に低く腰をかがめ、小声で言葉を交わした。


「レミちゃん。お疲れのところ本当に悪いけど、いざとなったら……」

「毒を食らわば皿まで、ね。三人も四人も一緒だよ」


 心強いセリフに「ありがとう」と返し、ユツキは忍び足でドアの横まで移動した。

 ノブがゆっくりと回転し、その人物が中の様子を窺おうと顔を出した一瞬を、彼女は見逃さない。踏み入れられた一歩目に足を引っかけながら、腕を首に巻きつけるようにして、相手を素早く部屋の中に引きずり込む。


「いでででっ!」


 流れるように腕ひしぎ固めへ移行するユツキ。得意の関節技で男を仕留める瞬間、彼女が身にほとばしるような悦びを感じていることは、本人に戦闘を教えたレミが一番よく知っている。人体で右にしか曲がらない部位を左に、左にしか曲がらない部位を右に曲げるだけで、自身に体格で勝るはずの男が、なんとも情けない声で許しを乞う。その一瞬が心地良くて仕方ないのだ。


「お、おい、俺は客だぞ! どうしてこんな……」


 男も察しが悪い。素直に降参していれば、二回目の悲鳴は上げずに済んだだろう。


「おあいにく様。これでも顧客満足度は高い方よ」


 ようやくタップした男を解放し、ユツキは冷たく笑う。遠くで見守るレミに対し「やっぱり私に任せて」と言わんばかりにウィンクを飛ばし、彼女は腕を押さえてうずくまる男を見下ろした。


「さて……お客様、本日のアポイントはお取りになられましたか? もし『ラトエール種苗』という会社に御用でしたら、そちらはもう倒産しておりますが」

「……あんなフェイクの看板に騙される奴がいるのか? まともな種苗会社が、こんな潮風の吹く倉庫街に事務所なんか置くもんか。俺はボディーガードの依頼に来ただけだ、あんたら『マザー商会』にな!」


 事実、あの錆びついた看板がフェイクだと知っている者は多い。相手が一見客であっても、マザー商会ではその旨を予約時に堂々と伝えている。


 これには理由があった。裏社会にも顧客の多い二人だが、実のところ、彼女たちが世を忍ぶ必要性はほとんどない。審査が緩く、金利は高いという闇金業者の基本に反し、至って良心的な融資を行っているマザー商会は、街の消費者金融とほぼ変わらない立場にある。


 もちろん、そんな低金利の借金すら踏み倒すような輩が、最近はほぼ毎日、この事務所で「失踪」を遂げているのも事実だ。しかし、彼らの属している組織自体がほとんど不法である以上、それが警察に通報されることはない。そもそも警察が踏み込んで来たところで、彼女たちの犯行を示す証拠は何もないのだが。


「……ボディーガード? 私たちは金融会社ですので、そのような依頼は承っておりませんが」

「知るか! こっちはお前らのチラシを見て来ただけだ!」


 チラシ、という耳慣れない言葉に、奥にいるレミがくすりと笑う。彼女はとっくに社長席に戻り、残りのバナナジュースを吸い上げていた。

 一方、ユツキは思わず溜め息をつく。


「あのねえ、もう少しマシな嘘をつきなさい。私たちが表立って広告なんか打つわけ……」

「じゃあ、これ見ろよ!」


 男がポケットから取り出したのは、雑に折りたたまれた一枚の紙だった。押しつけるように手渡されたそれを、ユツキはとことん呆れた顔で開く。しかしその後、夏が秋を飛ばして冬に突入するかのごとく、彼女の表情は瞬く間に青ざめていった。


「……ユツキ?」


 その動揺ぶりにレミも立ち上がる。


「嘘でしょ、どうして……」


 チラシの隅々まで食い入るように見つめながら、ユツキは口をぱくぱくと動かしていたが、レミが近づいてくることに気付いた瞬間、クオリティの低い笑顔が一瞬だけ戻る。


「な、何でもない。レミちゃんにはその……関係ないというか……」

「さすがに、関係なくはないと思うけど」


 バスローブ姿の美女の登場に、仰向けに倒れていた男はユツキと正反対の顔色を帯びる。彼が慌ててうつ伏せになったことと、目のやり場に困るレミの格好に、因果関係がないはずもなかった。


「隠さなくたっていいよ。ちゃんと見せて」

「あう……」


 レミに距離を詰められただけで力が抜けるユツキの習性は、八年前から変わっていない。メモクリップと化した彼女の指からチラシを抜きとり、レミはその内容を検めた。


「……へえ?」


 レミが興味深そうに声を上げたのを聞き、ユツキは両手で顔を覆う。


「ち、違うの! この会社を作った時、何から手を付けていいのか分からなくて……商売のイメージをまとめたかっただけなの!」

「お金の悩み、暗殺、ボディーガード……『なんでもご相談ください』って書いてるじゃねえか」


 わざわざ逆鱗に触れるようなことを。この男 の察しの悪さときたら、もはや絶望的だった。ユツキ渾身のヘッドロックによる三度目の悲鳴が響き渡るが、その際、男を無理やり仰向けに戻したところを見ると、ユツキは彼がうつ伏せになった理由を見抜いていたのだろう。


 恥じることはない。健康的な男子たるもの、レミのあられもない姿を前にして、それを抑える方が不可能なのだ。


「ああっ、やめろ! これはそういう意味じゃ……」

「……教えなさい。こんな物がどうしてまだ出回ってるの!?」


 屈辱的な体勢を強いられる中、男はついに観念したようだ。


「出回るも何も……このチラシ、どの組の事務所にも100部くらい置いてあるぜ。おたくの金利がゲロ安だから、首が回らなくなった若い衆がよく手に取るって話だ」

「そんな……じゃあ何で、今まで誰も持ってきてくれなかったのよ……」

「そりゃ、いちいち『チラシを見ました』なんて言う奴いねえだろ。可愛いマグカップでもくれるってのか?」


 不遜な態度に対する制裁、という名目で繰り出されたユツキのチョークスリーパーは、おそらく八つ当たりに近い。首が締まり、ますます生を渇望するようになった男の下半身を一瞥することもなく、レミはくすっと笑った。


「なるほどね。クチコミだけにしては妙に客足が絶えないと思ってたけど……そういうことだったんだ」

「レミちゃん、ごめんね。このチラシ、1回か2回くらいしか配ってないと思うんだけど、まさかこんなに広がってたなんて……」


 名誉挽回のチャンスと見たのか、ユツキの締めがゆるんだ一瞬をつき、男も会話に参戦する。


「お、俺はなかなか良いチラシだと思うけどな。ぶっ飛んでるというか……これまでにないというか……」

「……それはどうも。お礼にこのまま堕としてあげるね」

「し、信じてくれ! 俺は本当に、マザー・レミに仕事の依頼に来ただけだ!」


 おやすみ……耳元でそう告げてから、ユツキは男の頸動脈を閉ざそうとした。


「ユツキ、ちょっと待って」


 無気力なレフェリーのように手を上げたレミを見て、ユツキは素早く指示に従う。

再び酸素にありついた男を挑発するように、レミはその腹をまたいで仁王立ちとなった。

 

「君、どうしてその名前を知ってるの?」


 どうやらスイッチが入ってしまったようだ。男を辱めるべく彼を仰向けにしたユツキですら、その容赦のなさに息を呑む。


 蠱惑的な肉体美をもつ彼女にとって、雄の体内を流れる血を一点に集中させることなど造作もない。火薬庫と化した彼の下半身をバスローブで隠したまま、南国の果実のような双丘を見上げることを強いる無慈悲。彼が意にそぐわぬ回答をしようものなら、レミは男の上を離れ、白いカーテンの下からマジシャンのごとく、暴発寸前のそれを晒し上げるだろう。


「ひ、人に聞いたんだ。お前らに『期日までに全額返さないと卵にする』と脅されたって……」

「……ワンアウト。確かに無事に返した人はいるし、私の『能力』は知られててもおかしくないけど、その名前を私から名乗ったことはないよ」


 レミが片足を上げた数秒後、男は甘い声で喘ぎ、その身体はビクンと跳ねあがる。

 バスローブの下で何が行われているかは、本人たちにしか分からない。


「うおおおっ……」

「やっぱり、ツーアウトかな。私をマザー・レミって呼んだから」

「な、何が悪い! お前ら『マザー商会』だろ?」


 彼の的確な追及に対し、ユツキは目を逸らした。

 社名を考案したのは彼女だが、この問題についてはノーコメントらしい。


「嫌なものは嫌。次に嘘をついたら、あなたも産み直すからね」


 そのときの反応を見て、レミもユツキも、男が単なる一見客ではないことを確信した。ほとんどの人間が聞き返すであろう「産み直す」という異様な言葉を、彼はすんなり受け入れたのだ。


 とはいえ、それから男が口を割るまでには時間を要した。葛藤するふりをして、レミの温かい足裏が与える甘美な責め苦を、できるだけ長く味わおうとしたのかもしれない。だが彼女が男を悦ばせるとき、それがまもなく自分の腹に消えていく獲物への「手向け」でしかないことを、彼自身も理解しているはずだ。


 そういう意味で、男が口を開いたタイミングは完璧だった。あと一秒でも「楽しんで」いたら、レミは彼の「処分」を決断していただろう。


「お、俺の名前はドリーだ。お前らは覚えてないだろうが……八年前、まさにこの倉庫で、俺はお前らに会ったことがある」


 それを聞いた瞬間、レミは彼の下半身から足を外した。チョークスリーパーはどこへやら、今や恋人を背後から抱き留めるような体勢になっていたユツキも「えっ」と声をもらす。

 

「……当時、俺はパレタ皇国の新兵だった。マグナという上官に連れられて、マザ……じゃない、レミという女の子を捕縛する作戦に参加したんだ。正直、わざわざ密入国までするような内容じゃないと思っていたが……」


 一語一語を噛みしめるように、男は打ち明ける。


「……完敗だった。俺以外の兵士は全員、竜になったお前に食らい尽くされた。そしてマグナ中尉が呑み込まれている隙に……俺はあの『裏口』から逃げた」


 そう言うと、彼は自分が入ってきた方のドアを指した。確かに現在の正面口がかつて「裏口」だったことは、当時あの場所にいた人間しか知らない事実だ。ちなみに反対側にある巨大な鉄の引き戸(当時の正面口)は、今、卵の出荷口として利用されている。


「そう……食べ残してごめんね。あの日の続き、する?」


 レミは口角を上げ、自分の腹をゆっくりとさする。その動きで男性をここまで恐怖に陥れられるのは、彼女と、不倫相手に自らの妊娠を告げる女性くらいのものだ。


「とんでもない、依頼をしに来たっていうのは本当だ! 俺はとっくにこの国に亡命してるし、今更あんたを捕らえる意味なんてない!」

「……冗談だよ。あなたが生き残りだってことはわかったし、チラシに書いちゃった以上、ボディーガードの依頼も聞こうと思ってる。でもその前に……」


 レミは視線を奥にずらし、妖しく微笑んだ。


「元・上官に挨拶しておくといいよ。君の後ろにいるから」

「え?」


 背後を振り返った男の目に映り込んだのは、自らの顔ほどもある巨大なレンズに映る、自分の顔だった。


 そのレンズが「瞬き」をした瞬間、男は悲鳴を上げる。


「り、竜!? いつからこの部屋に……」

「ずっと隅で寝てたよ。多分、君のことを昼ごはんだと思ってるんじゃないかな」


 その予想を後押しするように、壁掛け時計のベルが正午を伝えた。

 人間など一呑みにしてしまいそうな口から、ぼとりと唾液が滴り落ちる。


「マ、マグナ中尉、やめてください……私です! ドリーです!」

「残念だけど、人間だった頃の記憶はないよ」


 習慣と本能に従うまま、味見をするように男の顔を舐め始めた竜に対し、レミは口笛を吹いた。


「マグナ、おすわり。その子は違うよ」


 その一言で竜を大人しくさせた後、彼女は社長席へと戻る。


「さて、ユツキ。お客様にお茶でも出してあげて」



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