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そんな気がしてならなかった。
しかしいくら考えても、それがなんなのかは思い浮かばなかったのだが。
そしてお昼に学食に行った。
するとけっこう離れたところから、熊田がすたすたと少し小走りでこちらにやって来るのが見えた。
熊田の視線は俺ではなくて俺のすぐ右、つまりミキがいるあたりに注がれていた。
そしてその目、その顔は恐ろしく真剣だった。
――しまった。熊田のことを忘れてた。なにか肝心なことを忘れていたような気がしてたが、熊田のことだったんだ。失敗した。
熊田の視線、そして表情から判断して、もうミキを見つけてしまっているのは間違いない。
今さら逃げても駄目だろう。
俺は熊田に「おまえに女の子の幽霊が憑いているぞ」と言われたときに備えて、短い時間でありとあらゆる言い訳を考えていた。
そのうちに熊田がすぐそばまで来た。
――なに、あの人? じっとわたしを見ているわ。なんだか怖い。
ミキが言った。俺は慌てて返した。
――今はとりあえず黙っていてくれ。
――えっ? わっ、わかったわ。
熊田は俺の右側をにらみつけながら、俺のすぐ前に立った。
そして俺の耳元に顔を近づけると、小さな声で言った。
「おい、おまえのすぐ右に、女装した太ったおっさんの幽霊がいるぞ」と。
終




