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「いやそれが、大事な用があって、遊びには行けないんだ」
「大事な用ってなんだ?」
「それはちょっと言えない」
「ふーん、なんかおまえ変わったな」
「変わった?」
「明るくなったというか、元気になったというか。少し前まで一人で歩いているところを見ると、目が死んでたもんな。それが今はきらきらしている。まるでかわいい彼女ができたみたいだ」
「彼女ができたわけじゃないよ」
「まあ、そうだろうな。アパートに帰るとほとんどこもっているみたいだし。女と二人で歩いていたなんて話は、全然聞かないし」
そのアパートに幽霊の彼女がいると言ったら、河本はどんな反応をするだろうか。
その点についてはおおいに興味があったが、もちろん俺はなにも言わなかった。
「大事な用があるんじゃしょうがないな。じゃあまた今度な」
「ああ、また今度誘ってくれよ」
河本と別れた後、俺は急いでアパートに帰った。
――ただいま。
――おかえり。待ってたわ。
――ああ、ミキが待っていると思って河本の誘いを断ってきたよ。
――河本っていっしょに廃病院に来た人ね。お友達でしょ。いいの?
――いいよ。それくらいじゃ怒らないし、それぐらいで怒るやつなんて、友達じゃない。それに河本に無理やり廃病院に連れていかれたおかげで、こうやってミキと知り合うことができたんだから。河本には感謝しても感謝しきれないよ。
――恋のキューピットというわけね。
――そうそう、あんないかつい顔をしてるけど。




