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――ああ、待ちどおしいぜ。ミキ、早く帰ってこないかなあ。
――今日の講義はよくわからんかったな。あの教授、教授なのに説明するのが下手だからな。いつもなにを言っているのかわからん。ほんと、困ったものだ。どうにかしてほしい。
――ミキーーっ、ミキーーっ!
うるさい男だなあと思っていると、ミキが語りかけてきた。
――はーい、ただいま。お待たせ。
――ミキ、帰ってきたんだ。
――おおっ、ミキ、待っていたよ。さあ二人で究極の愛の伝説を作ろう。
――わたしはまさとに言ったのよ。あんたじゃないわ。
――またまた、照れちゃって。
――いや、照れてないだろう。嫌がられているだろう、おまえ。ところでミキ、いったいどこに行っていたんだ?
――あの廃病院よ。
――あの廃病院に。なんのために?
――こういうことだよ。
三人の会話に誰かが入って来た。
――おい、前にもいっただろう。ミキが嫌がっているのにちょっかい出すな。
――そうだ。おまえは女々しくてしつこいんだ。ミキがキモいって言うのも、よくわかるぜ。
――ほんと、どうしようもないクズ男だわ。
――こいつ、ミキだけじゃなくてこの生きているあんちゃんにも迷惑かけているな。心霊スポットに遊び半分でやって来るような不心得者はどんだけ驚かしてもいいけど、人のアパートに押しかけての迷惑行為は、駄目だろう。
――俺たちでおまえの根性を叩きなおしてやるから、覚悟するんだな。
声、と言っても耳から聞こえるわけではないのだが、言葉から判断するにミキみたいな幽霊が五人増えたようだ。




