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熊田は俺をじっと見ていたが、やがて言った。
「そうか。まあ人間にもたまにいるが、急に気が変わる霊なんてものもいるのかもしれんな。幽霊のこまかい事情なんて、俺もよくわからんし」
熊田は再び部屋の中をじっくりと見渡した。
そして言った。
「あっちに行ったみたいだな。ここにいたやつは」
熊田は西を指差していた。
そこはあの心霊スポットの廃病院がある方向だ。
やっぱりこいつは本物だ。
なにがあってもミキに会わせてはいけない。
俺は熊田がミキにあった途端に除霊してしまうのではないかと本気で思い始めていた。
「まあ、今はいないからいいか。でも少し前まで確かに幽霊がいたんだ。なにか気付かなかったか。霊感のないおまえでも、相手によってはなにか気付く可能性だってある」
「いや、なんにも。なにも感じなかったし、なにか見たりもしてないし」
熊田は俺の顔をじっと見つめていたが、くるりと背を向けると玄関のほうに歩き出した。
「もう帰るわ。なんか変なことがあったら、遠慮せずに言ってくれ。状況にもよるけど、俺がなんとかしてやるから。それじゃあな」
背中のままそう言うと、そのまま出て行った。
――ふう、なんとかごまかせたみたいだな。
気付かれないかとひやひやしたが、俺のなにも知らないふりは、どうやら通用したようだ。
そのまま夜になった。
ミキが帰ってきていると思い、いつものように頭の中で語りかけてみたが、返事はなかった。
一定の時間をおいて何度か試してみたが、なにも返っては来ない。




