2/6 「ネタバレ」
と言ったところで、そんな簡単にいうことは聞いてくれないよな。わかっていたさ。
さてどうしたものか。ネタバレらしいネタバレなんて存在しないんだけどな。
そもそもとして、この小説にはネタなんていう高尚な仕込みは存在しないからな。
他に決定的な興味を薄れさせる方法はないだろうか?
そうだ、決定的なネタバレがある。これを教えれば流石に手を引くだろう。
「この小説の犯人は著者なんだよ。みんなを騙しているんだ。ほら究極のネタバレだろ?」
なんだ、その期待に満ちた目は。いくらキラキラさせても何もないんだよ……。
犯人が著者で、他人の時間を無駄にしようとしている悪い人間なんだぞ?
なのにキラキラさせているってどういうことだ。
この人にとって時間というものは無限にでもあるというのか?
それとも5分や10分ぐらいなら大した問題にはならないとでも言うのだろうか。
「ただただ長い文を読ませて、最後はどうでも良い終わらせ方をするんだ。そんな小説を読む必要ってあるのかい?」
それでも読み続けるってことは何かしらこの人にとっては意味があるってことなんだろうな。
けど、最後のページを読むことはない。今、開いているページをじっくり読んでいる。
他に、他にネタバレになるようなことはないのか!?
この人の興味をなくさせるようなネタバレは!
くそ、とてももどかしい。
俺はこの小説の終わりを知っていて、それまでの道のりをすべて無意味にするような結末があるというのに、それを伝えることができないだなんて。
俺は諦めないぞ。ここで止めてもらえれば少なくとも被害は最小限に済むんだ。
ふー……。まずは冷静になろう。冷静になって考えるんだ。この人の読む行為を止める術を思いつくんだ……!
……思いつかん! 小指の先ほども思いつかんぞ!
俺ってやつはこんな程度なのか……?
核心的なネタバレさえも思いつけないちっぽけなやつだというのか?
そうじゃない。違う。俺はできるやつだ。きっと。
この小説について注意深く観察をすれば何かわかるかもしれない。ネタバレの種を探すんだ!
まずはこの小説の分析だ。この小説はただただ文章を書き連ねただけで、そこにはストーリーも構成も登場人物も存在しないのだ。そのくせ3万文字くらいはあって、それを読むとなると人によるだろうけど大体30分くらいはかかるだろう。
なんてことだ。30分という時間を無駄にしてしまうじゃないか!
30分といったら、例えば時給900円の仕事としたらそれの半分だから450円、うま○棒が45本は買える計算だ。俺ならそれで3日は持たせることはできる。多分。
どうだ、みたか。30分という時間をこれから無駄にするんだ! 仕事をしていれば3日は持たせることができるほどの資産を手に入れることができるかもしれないんだぞ? うま○棒計算だけど。
ふっふっふ。これだ。これこそが決定打だ!
「この小説を読んだらうま○棒45本分を損するんだぞ! それでもいいのか!」
……なんだその、こいつは何を言ってるんだ? っていう顔は!
その説明如きで読みを止めるとでも? うま○棒45本分だからなんだってんだ。意味がわからん。
っていう顔をするな!
うま○棒を舐めるな! うまいんだぞ! いや、むしろ舐めてうまさを味わえ!
ふう、さて、どうしたものか。
意味がないことを伝えるって難しいな。まだ意味があることを伝えるほうが簡単かもしれない。
それともうま○棒45本分という例えが悪かったのか? いや、そんなこと決してない! ないぞ! うま○棒は絶対なり!
5円チョコが90個分のほうが迫力あったかなぁ。俺、5円チョコってあんまり好きじゃないんだよなー。
俺の好きだの嫌いだのは置いといてだな、いかにしてこの人の注意をこの小説から逸らすかが本題だ。
そうか、そうだった! 簡単じゃないか。核心に迫るネタバレの方法があるじゃないか!
最後のページを開かせる。そう、それだよ。最後のページにはすべてが載っている。そこに答えがあるんだ。この小説のネタのすべてが集約されているんだから、それを開いてもらえればこの小説が意味のないものだってわかってくれるはずだ。
是非、最後のページを見てくれ!