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童話シリーズ

もしも北風と太陽の話を現代でやったら。

 十二月のほんのりと寒い時期、北風と太陽が幾年ぶりに出会いました。北風は前回は太陽に敗れて以来その雪辱を果たそうと鍛錬をしてきました。


「今度こそぼくが勝ってやるぞ! 勝負は前の時と同じだぞ」

「ふふん、果たしてそううまくいくかな」


 太陽は体を膨張させて自身たっぷりに言いました。太陽もあの力自慢の北風がもう一度再戦をしてくるのを楽しみにしていました。

 あの時の戦いから周りの様相は様変わりして、かつて旅人と呼ばれた人は一人もなくサラリーマンという人たちと、そこで仕事をするための背の高いビルであふれかえっていました。

 北風と太陽がコートを羽織ったサラリーマン男性を標的にしますと、さっそく北風がビュービューと冷たい風を送りました。


「ひゃー寒い。やっぱり冬本番だな。コンビニに寄ってカイロでも買おうかな」


 サラリーマンはコートを立ててコンビニに入り、カイロを買いました。おかげで体がポッカポカです。

 それでも北風は冷たい風を送り続けたので、たまらずサラリーマンはビル陰に潜んで北風から逃れてしまいました。

 北風が必死に風を送り続けましたが、一向に状況は好転せず、サラリーマンを脱がせることができず疲れ果てました。


「なんでそんな都合よく温かい物が置いてあるんだよ。建物の陰に隠れるだなんてずるいぞ!」


 北風がサラリーマンに文句を言っている様子を近くで見ていた太陽は、ここでぼくがさんさんと輝けばあっという間に温かくなって前の時のように勝利できると太陽の丸い顔が膨張しました。しかもあれからなん百年と時が経って、太陽が何もしなくても温かくなっていたのです。これはとても都合の良いことだと、にたにたと太陽は笑いが止まりません。


「北風くん、今回もどうやらダメなようだね。さあ見ててご覧」


 太陽がさんさんと輝くと、周りの気温がヒートアイランド現象も手伝って一気に十度以上暑くなりました。ほかの人たちが次々に上着を脱ぎだし始めて太陽は勝利を確信しました。しかし目標としていたサラリーマンの様子がおかしいです。

 サラリーマンは急激な異常気象による寒暖差で、血圧が乱降下してヒートショックを起こしてしまい倒れてしまったのです。

 北風と太陽が顔を見合わせて周りをよく見ると、あのサラリーマンと同じようにヒートショックで倒れてしまった人が大勢いました。


 結局サラリーマンのコートを脱がせることはできず、大勢の人を救急車送りにしてしまったのです。

 気象庁は、この急激な寒暖による異常気象の原因を懸命に調べましたがまったく答えが出せませんでした。テレビの街頭ニュースでは、連日異常気象についてやヒートショックとは何かについて繰り返し報道しました。

 その惨状を見て、北風と太陽はそろってこう言いました。


「「現代人とは軟弱なものだ」」


この季節、お風呂場でヒートショックが起きやすいので気をつけてください。

最悪死に至りますので。

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