中級クエスト
気がつくと朝になっていた。いつの間にか寝ていたのか。隣にカエデも寝ていた。一緒のベッドで。
「は? ……はああああぁぁぁぁぁ⁉︎」
急いで起き上がる。どうやらもう疲れは取れてるみたいだ。いやいやいやそうじゃなくて!
寝ていても帽子を被ったままのカエデを叩き起こす。
「何よ朝っぱらからうるさいわね〜何時だと思ってるの?」
「お、おま、なんでいっのベッドで⁉︎」
「昨日看病してあげてたら途中で眠すぎてベッドで寝ようと思ったけど自分の部屋行くのめんどいから隣で寝たのよ。」
平然と言うカエデに驚きつつも俺はその平然さから恋愛対象に見られてないということを知った。
それかそういうことを知らない無邪気な奴か。
てかこいつは何歳なんだ? 身長とかからすると中学生ぐらいっぽいけど。
カエデを見ると目の下にはクマが出来ている。
「ありがとう。面倒見てくれて。」
「いいわよ、それぐらい。」
「あとさ、お前何歳?」
「それは体のほう? 中身のほう?」
カエデはベッドから起き上がり、大きなあくびをした。
「どういうことだ?」
「私達は体はこれ以上老化しないのよ。まあ髪や爪とかは伸びるけど。」
へー。そんなこと知らなかった。てかそういうこと色々知っとかないとな〜
「両方」
「体は14歳。中身は16歳よ。あんたは?」
「俺は16だ。」
「おお〜同い年か!」
意外に年齢高いな。その胸の絶壁からして小学生ぐらいだと思ってた。
「あ、そういえばクエスト代とカード返すわ。」
くしゃくしゃの封筒から9000アイーダとカードを出して渡した。
「やばいわ。9000だけだと家賃が払えない。」
「え、家賃とかあんの?」
「当たり前よ。あ、中級クエストを受けましょう!
中級クエストならお金も多く貰えるし、ポイントもたくさん入るわ!」
「ついでにあの前のクエストはどれぐらいのレベルなんだ?」
「初級よ?」
あんなやばいやつで初級なんだ。中級なんて無理に決まってるだろアホか。
という俺の意見も無視し、嫌がる俺を無理矢理ギルドに引っ張って来た。
「エリンー! エリンいるー?」
大声で叫びながらあたりを見渡すカエデ。エリンってどっかで聞いたことあるような……
「カ、カエデ! 私ならここです! 」
そう言ってギルドの休憩所の椅子から勢いよく立ったのは銀髪の少女だった。
あれ、この人……
「あれ、あんたイメチェンしたの? そっちのほうがいいよ!」
近づいてみると、やっぱりあの人だ。あの豊かな胸は
「運命神さん⁉︎」
運命神改めてエリンさんは俺を見るとみるみる顔が赤くなった。
前はビキニみたいな露出の多い服を着ていたが、今回はフリフリした可愛らしい服を着ていた。
「こ、こ、こんにちはソウタ。」
「こんにちはエリンさん。なんでここに?」
「あ、えとその、中級クエストの依頼をあなた達にしたいと思って。」
口調も前の男らしい感じと違って、品のある口調に変わってる。
「中級クエストの内容はなんですか?」
「い、一週間私の身の周りの世話をする。まあ召使いとして働くということだ。」
中級なんていうからてっきりドラゴンを倒すとかいうことだと思っていたけど、意外に簡単そうだな。
「ご、ご飯も部屋も提供するからど、どうかな」
「やりますよ、なあカエデ。」
「もちろんよ! メイドぐらいちょろいもんよ!」
「じゃ、じゃあ手続きはもうしておいたので早速天界に! ついて来て!」
エリンは宝石みたいな綺麗な赤い目をキラキラさせながら俺を見てにっこり笑った。
エリンの後をついて行き、ギルドを出て、町を歩いていくと、この世界に入った門に着いた。まさか…………
「さあ行きましょう! この世界はこの門を通ってしか出入り出来ないんですよ。
出る時は審査は無しなので安心して下さい。」
門の宝石が埋め込まれてる所にカエデが神候補の証のネックレスを当てると、ゆっくりと門が開いた。
やっぱり門の外にはあの2人がいた。
2人は俺たちを見ると何も言わずに敬礼をした。
3人共門から出ると、門は自動的にしまった。オートロックかな?
門の外は相変わらずジェットコースター以外は淡いピンク色の空間が続いてるだけだった。
「なあ……なんか他の乗り物なかったのかよ……」
「面白いじゃない! このジェットコースターは2年前に私とエリンが考えたのよ! それまではジェットコースターじゃなくてただの船だったのよ!」
「は? お前ふざけんのもたいがいにしろよ? 絶叫系苦手な奴のことも考えろよ‼︎」
高圧的な態度にびびったのか2人共涙目になっていた。
「じゃ、じゃあ今度作り変えときます……天界と現世を結ぶ乗り物と同じでいいでしょうか?」
「何の乗り物何ですか?」
「で、電車です!」
カエデの反論をあしらいつつエリンさんに今度電車にしてもらうことにした。
とりあえず今回だけはということで嫌々ジェットコースターに乗ることにした。
横が2列の6人乗り用だった。この世界に行くときは1人乗り用だったのに……
俺とエリンさんが先頭でカエデは後ろの列でぼっち乗りをすることになった。
「じゃ、じゃあ出発します!」
エリンさんの声と共にジェットコースターがゆっくりと進んだ。
「あのエリンさん、この世界に行くときは1人乗り用だったのに、なんで今回は6人乗り用なんですか?」
「え、え、えっとこの世界に行くときは基本候補者になって初めて異世界に行く人がほとんどなので1人用なんですが、天界に行く人はほとんどが複数人なので……」
「なるほど。あ、あとエリンさん服装、絶対そういう清楚な感じの方が似合いますよ!」
エリンさんの顔がまた赤くなった。嬉しいときは赤くなるのだろうか。
「あ、あ、ありがとうございます! あ、そろそろ一気に落ちますよ! 気をつけて下さい!」
言うのが遅い! とつっこみたくなるほど直前に言われたせいで心の準備が全然出来てないままジェットコースターは凄いスピードで走り始めた。急降下に一回転。
気がつくとカエデに知らない町でおんぶされていた。
「ここは?」
「ここは神々が住む町。天界よ!」
次回天界編です!