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#033:ギルドで登録

2018/04/26 サブタイトルの桁数調整。及び、本文の加筆修正。

 魔力が満たされて元気を取り戻したシャノンはこれから暇だということで、美少女三人組となった私たちは商人ギルドを目指して(かしま)しくも歩き出す。

 その道中で私が行商人を始める事と、その護衛としてエミリーが期間限定の冒険者になる事をシャノンに告げて、装備品の選択や魔物が出たらどう動くかなどを話し合っていた。


 シャノンはたまに外へ出ているから魔物との遭遇経験があるみたいだね。

 私はエクレアを除くと数えるほどしか魔物を見たことがなくて蚊帳の外だよ。




 そうこうしているうちにも目的地が迫り、話に区切りが付くより先に、小さな商店が軒を連ねる通りと中央通りが交差する繁華街の境目に到着した。

 町の商売を取り仕切る商人ギルドはここにある。

 そこに入ろうとしたら『用事がないから外で待つよ』と言う二人と別れ、私は一人で煉瓦造りの立派な建物の中に足を踏み入れた。


 ヒンヤリとした空気に出迎えられた室内には、担当ごとに分けられた横並びのカウンターが設えられている。何度か訪れたことがあっても、一目見ただけでは行商人を扱う場所がわからなかったので、総合案内と記された机の前に成される短い列へと加わった。

 そこで待つこと(しば)し、担当者からの『次の方どうぞ』という声に促されて進み出る。


「行商人の登録にきたんですけど、どこに行けばいいですか?」

「はい、行商人ですね。あちらのほう、奥から二番目で受け付けております」

「奥から二つ目ですね。わかりました。ありがとうございます」


 案内されたとおりの場所へ向かってみても行列どころか担当の人がおらず、机上の目立つ所に置かれた呼び鈴を鳴らしてみたら奥から飛んできて対応してくれた。


「お待たせしました。本日はどういったご用件でしょうか」

「行商人の登録をお願いします」

「はい。では、こちらにご記入――失礼ですが文字の読み書きは」

「できますよ。これを書けばいいんですね」


 前世と比べたら識字率が恐ろしく低いこの世界では仕方のない質問だけれど、商人をやるからには文字の読み書きは必須技能だよ。契約書を作ったりするからね。


 渡された小さな羊皮紙にサラサラサラりと記入を終えて、銀貨(ソル)五枚という貯金残高にトドメを刺されるくらいの登録料を支払った。それらを回収した受付の人が部屋の奥の方に置かれている魔道具みたいな機械に書類を入れていた。

 それから行商人としての注意事項を聞かされて、先ほどの機械で作られた手のひらサイズの身分証を手にした私は商人ギルドを後にした。


 もう懐がブリザードだよ。

 寒さ吹き荒ぶとかお上品に言っていられないくらいに減っちゃった。




 商人ギルドから出てきた私は浮かない顔をしていたみたいで、心配させた二人には想像以上にお金がかかっただけ――と答えたら、呆れたように笑っていた。

 そんな二人と合流して、次はエミリーのために冒険者ギルドを目指して歩を進める。


 またいろいろと話しながら、町で最も大きな出入り口へ向かって中央通りを歩いていると、周囲にいる人たちの恰好が物騒なものになってきた。鞘に収めた剣を腰に下げているだけならまだしも、隙間が見えるほどにガバガバのカバーを付けただけでほとんど剥き出しの槍はどうにかしてほしい。


 それらにぶつからないよう注意して通りを進み、石造りの冒険者ギルドに到着した。

 特に怖じけることなくエミリーが扉を開けて中に入っていき、この方面には来ることがなくて物珍しさから内部をのぞいてみたいという欲求のある私は、シャノンを連れて冒険者ギルドへとお邪魔した。


 建物の中は外にも増して騒がしく、入口近くにある大きな掲示板の前では物騒な恰好の人たちが寄り集まって何やら話し込んでいる。

 そこから視線を外し、先に入ったエミリーはどこだろうと周囲に目を走らせていたら、シャノンに肩を叩かれて指差しで場所を教えてくれたので、そこへ向かおうと歩き出したところに声が飛んできた。


「やぁ、サラ君とシャノン君じゃないか」

「あ、マチルダさん。こんにちは。先ほどはどうも」

「やぁやぁ、チルチル」


 シャノンに名前を呼ばれたマチルダさんが苦笑を浮かべている。

 意外と仲が良かったんだなぁ。シャノンの魔術用品店でも買い物をしているのかも。


「ここに来たってことは、あの話を本当にやるのかい?」

「はい。そのつもりですよ。護衛もバッチリです」

「ああ、確かに安心だね。行き先は決めてあるのかい?」

「いえ、まだなんです。おすすめはありますか?」


 この付近にある狩場について簡単に教わっていたら、マチルダさんのチームメイトと思しき人が姿を見せたので、別れの挨拶を済ませると『稼いだらボクも指名してくれよ?』との言葉を残して出口のほうへ去っていった。


 結構な大荷物を背負っていたから、遠出する前の最終確認だったのかもしれないね。

 また傷薬を大量に買ってくれると思うし、いつもより多めに作っておこうかな。




 ありがたいアドバイスをいただいている間にもエミリーは登録を終えていたようで、私たちが追い付いたころには冒険者ギルドの証を見つめながら『むふぅ』とご満悦だった。


「エミリー、登録できた?」

「できたわよ。ほら!」


 満面の笑みで突き出された証に目をやると、真ん中に大きくFという鉄色の文字が見え、その上部には小さな文字で所属先のブルック支部とあり、下部には登録者であるエミリーの名前が記された金属製のメダルだった。側面には紐を通すような小さな輪っかが付けられている。


「サラのはどんなの? あたしのと同じ?」

「ちょっと待ってね……はい、これだよ」


 先ほど手に入れたばかりの行商人の証をスタッシュから取り出すと、エミリーと一緒にシャノンも覗き込んできた。


 私のほうはメダルではなく薄い金属板のようなカードで、その外周をお洒落(しゃれ)な模様が施された木枠で囲われている。そのカードの表面には気取った書体で所属地名であるグロリア王国・ブレア領・ブルックの町と記され、その下には商人ギルド・下級組合員という文字が並び、そのまた下に行商人見習いと私の名前(サラ)がある。

 ちなみに、背面には商人ギルドの紋章が描かれているよ。古風だけれど豪奢な天秤がね。


「すっごい豪華じゃない! いいなぁ」

「そりゃあね。銀貨(ソル)五枚ですから」

「うわぁ……高すぎ。あたしは全部込みで中銅貨(デニエ)二枚だった。半分は登録料ね」

「ミリっちのランクが上がるとメダルも変わるよ。維持費も増えるけど」


 中銅貨(デニエ)二枚っていうと銅貨(デニエ)二〇枚分じゃないですか。なにこの差、ふざけてんの。

 シャノンが言うにはランクが上がると維持費も増えるみたいだけれど、Fランクの維持費は季節ごとに更新料の半額――銅貨(デニエ)五枚らしいから、銀貨(ソル)五枚支払ってなお上納金が発生する私との差がありすぎる。

 商人よりも冒険者のほうが稼げるのって、この差額も関係していそうだよ……。




 料金の差にひとり(おのの)いていると、エミリーが『護衛依頼を出しにいこう。ちゃんとあたしを指名してよ』と言うので受け付けカウンターへと移動する。

 そこで私が話し掛けるよりも先に、受け付け担当の妙に色気のある女性が口を開いた。


「あれ、シャノンちゃんじゃない。おいしい依頼があるんだけど、暇ならどう?」


 その言葉を聞いた私とエミリーが陰に隠れていたシャノンに目で問い掛けると、苦笑いを浮かべて胸元から革紐でつるされた冒険者メダルを取り出した。銀色の文字でDと刻まれている。


「実はそうなんだ。サっちゃんは冒険者が嫌いだと思って言い出しづらくて……」

「……そっか。気を遣わせちゃってごめん。嫌いじゃないから安心してね」


 たぶん、父が出ていったせいでお給料がどんどん減っていくから、その愚痴を言ったことが原因だと思う。私が冒険者にはなりたくないと言ったことも影響しているのかもしれない。

 それを今まで気に病んでいただなんて、ちょっと不注意が過ぎたね。反省しよう。


「話は終わった? 依頼があるならどうぞ」

「あ、はい。では、護衛をお願いします。こちらのエミリーを指名で」

「ん~? 見ない顔ね。新入りだったら護衛は無理よ。あれは最低でもEランクからだから。シャノンちゃんなら大丈夫だけど、どうする?」

「えっ! あたしできないの!?」


 思わぬショックを受けて驚き固まるエミリーに、先輩冒険者であるシャノンが助力を申し出たことで、この場は一旦引き下がってランクを上げてから出直すことに落ち着いた。

 私もまだ商品を仕入れていないから、エミリーがランク上げをがんばっている間にいろいろと買い込んでおかないとね。


お読みいただきましてありがとうございます。

このあたりを区切りとして、次からはお金を稼ぐために話の舞台が変わっていきます。

投稿するペースは少し落ちますが、これからも応援のほどよろしくお願いいたします。

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