05 組立は慎重に
――福田良太と松本百合の場合⑤――
緻密な作業は、学校でするものじゃないな。
「だいぶ組み上がってきたな」
大きく伸びをしてから、目の前の基盤を眺める。
窓の外は相変らずの雨模様だが、雨の音を聞きながら作業するといつもよりはかどる気がする。
「さて、もう少し」
念のために手袋をはめて、手に取るのはCPU。
精密機械だ、慎重に扱わなければ……。
「先輩! こんにちは! 私ですよ!」
「ああああああああ!」
後ろから聞こえてきた騒音に、危うくCPUを取り落としそうになった。
睨むように後ろを振り向けば、いつもの笑顔のまま固まった松本の姿が見えた。
「松本ォォオ!」
「ひいっ、よくわかりませんがスミマセン!」
「おまっ……頼むから静かに! 静かに!」
「う、うっす! スミマセンっす!」
松本は両手を合わせると、極力静かにこちらへ近づいてくる。
「ノー! 来るな! いいと言うまでそこを動くな! ステイ!」
「えっ、ここにいていいんですか!?」
「いや、出ていってくれるならそれに越したことはない! むしろハウス!」
「おぅふ、それは嫌です、ここにいます!」
その場に松本を制止させ、改めてCPUを手に基盤と向き合う。
基盤にあるCPUソケットに向きを合わせて、慎重に、慎重に……。
「松本ォォオ! サボってんじゃないよ!」
「ああああああああああああああああ!」
今度は松本の先輩らしき運動部員が入ってきた。
完全に手が滑り、CPUが基盤にダイブした。
「山本先輩っ、シーッ! シーッ!」
「えっ、何?」
後ろの方で何やら声が聞こえるが、いったんは放置だ。
慌ててCPUを拾い上げ、裏側を確認。
一見したところで、細かいピンが何本か欠けているのが確認できた。
「……マジかァァア!」
「うおっ、先輩!?」
説明しよう。
このCPUという部品、いわゆるパソコンの頭脳であり、かなり重要な精密機械だ。
この細かいピンそれぞれも重要なもので……それが折れたということ……お察しいただきたい。
「おーまーえーらぁぁあ」
「ひ、ひぃぃっ、福田先輩が怒った!」
「や、山本先輩が大声出すからですよっ!」
「元はと言えば松本がサボってるからでしょ!?」
CPUをそっと元の位置に戻してから、手袋を外し、あたふたと言い合いをする女子二人の元へ。
そして。
「邪魔しかしないなら帰れ!!」
無遠慮に廊下へ投げ飛ばし、勢いよくドアを閉める。
席に戻り、無残な姿になってしまったCPUを見下ろした。
「……はぁぁ……マジか……」
やる気が根こそぎ持って行かれた気分だ。
このCPU、修復できるんだろうか。




