表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 13~照れ屋な彼と素直な彼女~
70/70

05 組立は慎重に

 ――福田良太と松本百合の場合⑤――


 緻密な作業は、学校でするものじゃないな。


「だいぶ組み上がってきたな」


 大きく伸びをしてから、目の前の基盤を眺める。

 窓の外は相変らずの雨模様だが、雨の音を聞きながら作業するといつもよりはかどる気がする。


「さて、もう少し」


 念のために手袋をはめて、手に取るのはCPU。

 精密機械だ、慎重に扱わなければ……。


「先輩! こんにちは! 私ですよ!」

「ああああああああ!」


 後ろから聞こえてきた騒音に、危うくCPUを取り落としそうになった。

 睨むように後ろを振り向けば、いつもの笑顔のまま固まった松本の姿が見えた。


「松本ォォオ!」

「ひいっ、よくわかりませんがスミマセン!」

「おまっ……頼むから静かに! 静かに!」

「う、うっす! スミマセンっす!」


 松本は両手を合わせると、極力静かにこちらへ近づいてくる。


「ノー! 来るな! いいと言うまでそこを動くな! ステイ!」

「えっ、ここにいていいんですか!?」

「いや、出ていってくれるならそれに越したことはない! むしろハウス!」

「おぅふ、それは嫌です、ここにいます!」


 その場に松本を制止させ、改めてCPUを手に基盤と向き合う。

 基盤にあるCPUソケットに向きを合わせて、慎重に、慎重に……。


「松本ォォオ! サボってんじゃないよ!」

「ああああああああああああああああ!」


 今度は松本の先輩らしき運動部員が入ってきた。

 完全に手が滑り、CPUが基盤にダイブした。


「山本先輩っ、シーッ! シーッ!」

「えっ、何?」


 後ろの方で何やら声が聞こえるが、いったんは放置だ。

 慌ててCPUを拾い上げ、裏側を確認。

 一見したところで、細かいピンが何本か欠けているのが確認できた。


「……マジかァァア!」

「うおっ、先輩!?」


 説明しよう。

 このCPUという部品、いわゆるパソコンの頭脳であり、かなり重要な精密機械だ。

 この細かいピンそれぞれも重要なもので……それが折れたということ……お察しいただきたい。


「おーまーえーらぁぁあ」

「ひ、ひぃぃっ、福田先輩が怒った!」

「や、山本先輩が大声出すからですよっ!」

「元はと言えば松本がサボってるからでしょ!?」


 CPUをそっと元の位置に戻してから、手袋を外し、あたふたと言い合いをする女子二人の元へ。

 そして。


「邪魔しかしないなら帰れ!!」


 無遠慮に廊下へ投げ飛ばし、勢いよくドアを閉める。

 席に戻り、無残な姿になってしまったCPUを見下ろした。


「……はぁぁ……マジか……」


 やる気が根こそぎ持って行かれた気分だ。

 このCPU、修復できるんだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ