03 徒歩百歩相当
――福田良太と松本百合の場合③――
俺はいったい何がしたいというんだ。
「っと、準備よし」
放課後、部活の時間。
目の前にずらりと並んだ部品たちを眺めて、独りでよしよしと頷いた。
「あと25分、か」
大体そのくらいで、いつも松本の突撃タイムが来る。
さて、どうしたものか。
「先にはんだ付け……いや、コテ持ってるときにあいつが突撃して来たら危ないな、あいつ馬鹿だからな」
「何独りでブツブツ言ってるんですか、先輩!」
「うおおおっ、出やがった!!」
驚きのあまり、その場から数歩後ずさった。
「おまっ、いつもと全然違う時間じゃねーか、どうしたことか」
「先輩、驚きのあまり口調がめっちゃ面白いことになってますよ!」
けらけら、楽しそうに笑うそいつは、よく見れば制服姿だ。
よく考えたらジャージ姿しか見たことなかった気がするな……。
「何で今日はそんなに早いんだ、部活前か?」
「何言ってんですか先輩、もうテスト前なんで部活はお休みですよ」
「しまった、そうだったか!」
「先輩って微妙なところで抜けてますよねぇ」
そうか、テストか。すっかり忘れていた。
「まあ対策なんてしなくてもそれなりに点数は取れるから問題ないな」
「余裕すぎかよ、さすが先輩! ひゅーっ!」
「しかしどうしたものか」
せっかくここまで部品をそろえたというのに。
そしてせっかくやる気が沸いていたというのに。
「……ま、テスト終わってからにするか」
目の前に広げた部品を、段ボールに収納していく。
「ところで先輩、コレ何の部品っすか?」
「パソコンだよ」
「えっ、先輩って自分でパソコン作れんの!?」
「一応な。家では自作パソコン使ってるし」
「す、すげえ!」
きらきら、無駄に尊敬のこもった眼差しで見られている気がする。
その視線を無視しつつ、部品をすべて段ボールにしまい終えた。
「で? 聞き忘れていたが、お前は何でここに来たんだ」
「先輩も部活休みになっただろうから一緒に帰ろうと思って!」
「方向が逆だ、却下!」
「ええっ、そんな! お家までお送りしますよ! 大丈夫、何もしないから! 本当に何もしないから!」
「逆だろ! それは本来男が女に対して言うセリフだろ!」
「!」
「……期待されても言わねーよ!?」
「ですよね! わかってた!」
そう言いつつ、分かりやすくがっくりと肩を落とす松本。
その様子に笑いがこみあげてくるのは、何故だろうか。
「校門までな」
そう言って鞄を持って、先に歩き出す。
少しぽかんとしていた松本は、やがて言葉の意味が分かったらしく、嬉しそうに笑った。
「やったー! ありがとう先輩!」
本当、こいつはいつもへらへらしやがって。




