02 難しい距離感
――福田良太と松本百合の場合②――
会いたいのは、私だけだろうか。
「福田先輩! お久しぶりです、私ですよ!」
「帰れ!」
この間、体調不良で早退した後、三日ほどお休みしていた私。
久しぶりの部活、久しぶりのランニングで久しぶりの福田先輩に会いに行ったら、いつも通りのリアクションが返ってきた。
「三日ぶりなのにその言い方はないんじゃないですかぁー!」
「せっかくこの三日間、静かに落ち着いて作業ができていたのに」
「またまたぁ、本当は私がいなくてさびしかったんじゃないですか!?」
「チッ」
「舌打ち!?」
思った以上に辛辣なリアクションが返ってきて私は泣きそうです。
いや、泣かないけどね!
「先輩、先輩! 今日も今日とてプログラミングですか! 精が出ますね!」
「言葉のチョイスが微妙!」
「ええっ!? まさかそこにツッコミが来るとは……さすが先輩です!」
「さすがなの!?」
「さすがです!」
「お前の価値観が俺にはよくわからない!」
呆れたように息をついて、先輩はまたパソコンに向かう。
その後ろ姿に近付いて、パソコンの画面を見た。
相変わらず、私にはよくわからない言語がつらつらと並んでいる。
「いやぁ、やっぱり先輩はすごいですねぇ……」
「こんなもの、勉強すればできるようになるもんだ」
「そうなんですかね?」
「俺だって独学の部分は多い」
「ど、独学……!」
先輩の横顔を盗み見た。
やたらと格好よく見えるのは、きっと惚れた贔屓目とかではないと思う。
「私にもできますかね?」
そう言ったら、先輩がこっちを振り向いた。
意外と近くにあった顔に驚いたのか、先輩は椅子ごと後ずさった。
「おまっ、顔ちっか!」
「えー、一緒に画面見てたらこんなもんですよね?」
「パーソナルスペースというものを考えろ!」
はぁぁ、と、これまで聞いた中で一番深いため息。
なんだか少し傷つきます、先輩。
「松本ー! またサボってんの!」
「ああっ、先輩!?」
パソコン室の外からの声に振り向けば、山本先輩の姿。
いつもここにいると、山本先輩に見つかっている気がします。
「ほら、ランニング! 行くよ!」
「はいぃ!」
山本先輩の方へ駆け寄りつつ、福田先輩を振り返る。
先輩はムッとした顔のまま、虫でも追いやるようにしっしっと手を振った。
「ううっ、先輩! 明日も来ますからね!」
「だからもう来るなって!」
パソコン室から出て、ランニング再開。
隣を走る山本先輩が、小さくため息をついた。
「押してダメなら引いてみろっていう言葉もあるよ?」
「山本先輩は押しも引きもできてないじゃないですかぁ」
「べっ、別に巧人のことなんて好きなわけじゃないし!?」
「私、石川先輩の話はしてないですよ?」
真っ赤になって私の肩をバシバシと叩く山本先輩。
山本先輩よりは素直なはずなんだが、福田先輩にはちゃんと伝わってないっぽい。
どうしたら、福田先輩は私のことを好きになってくれるんだろうね?




