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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 13~照れ屋な彼と素直な彼女~
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02 難しい距離感

 ――福田良太と松本百合の場合②――


 会いたいのは、私だけだろうか。


「福田先輩! お久しぶりです、私ですよ!」

「帰れ!」


 この間、体調不良で早退した後、三日ほどお休みしていた私。

 久しぶりの部活、久しぶりのランニングで久しぶりの福田先輩に会いに行ったら、いつも通りのリアクションが返ってきた。


「三日ぶりなのにその言い方はないんじゃないですかぁー!」

「せっかくこの三日間、静かに落ち着いて作業ができていたのに」

「またまたぁ、本当は私がいなくてさびしかったんじゃないですか!?」

「チッ」

「舌打ち!?」


 思った以上に辛辣なリアクションが返ってきて私は泣きそうです。

 いや、泣かないけどね!


「先輩、先輩! 今日も今日とてプログラミングですか! 精が出ますね!」

「言葉のチョイスが微妙!」

「ええっ!? まさかそこにツッコミが来るとは……さすが先輩です!」

「さすがなの!?」

「さすがです!」

「お前の価値観が俺にはよくわからない!」


 呆れたように息をついて、先輩はまたパソコンに向かう。

 その後ろ姿に近付いて、パソコンの画面を見た。

 相変わらず、私にはよくわからない言語がつらつらと並んでいる。


「いやぁ、やっぱり先輩はすごいですねぇ……」

「こんなもの、勉強すればできるようになるもんだ」

「そうなんですかね?」

「俺だって独学の部分は多い」

「ど、独学……!」


 先輩の横顔を盗み見た。

 やたらと格好よく見えるのは、きっと惚れた贔屓目とかではないと思う。


「私にもできますかね?」


 そう言ったら、先輩がこっちを振り向いた。

 意外と近くにあった顔に驚いたのか、先輩は椅子ごと後ずさった。


「おまっ、顔ちっか!」

「えー、一緒に画面見てたらこんなもんですよね?」

「パーソナルスペースというものを考えろ!」


 はぁぁ、と、これまで聞いた中で一番深いため息。

 なんだか少し傷つきます、先輩。


「松本ー! またサボってんの!」

「ああっ、先輩!?」


 パソコン室の外からの声に振り向けば、山本先輩の姿。

 いつもここにいると、山本先輩に見つかっている気がします。


「ほら、ランニング! 行くよ!」

「はいぃ!」


 山本先輩の方へ駆け寄りつつ、福田先輩を振り返る。

 先輩はムッとした顔のまま、虫でも追いやるようにしっしっと手を振った。


「ううっ、先輩! 明日も来ますからね!」

「だからもう来るなって!」


 パソコン室から出て、ランニング再開。

 隣を走る山本先輩が、小さくため息をついた。


「押してダメなら引いてみろっていう言葉もあるよ?」

「山本先輩は押しも引きもできてないじゃないですかぁ」

「べっ、別に巧人のことなんて好きなわけじゃないし!?」

「私、石川先輩の話はしてないですよ?」


 真っ赤になって私の肩をバシバシと叩く山本先輩。

 山本先輩よりは素直なはずなんだが、福田先輩にはちゃんと伝わってないっぽい。


 どうしたら、福田先輩は私のことを好きになってくれるんだろうね?



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