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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 13~照れ屋な彼と素直な彼女~
66/70

01 毎日同じ時間

 ――福田(ふくだ)良太(りょうた)松本(まつもと)百合(ゆり)の場合①――


 飽きっぽそうなやつほど、意外と熱心だったりする。


 放課後、部活の時間。いつも通りのパソコン室。

 カタカタ、キーボードの音だけが響く空間。


 騒がしいのは苦手だ。

 こうして一人、画面に向かっているくらいがちょうどいい……のに。


「福田先輩、ちゃーっす! 私が来ましたよ!」

「帰れ!」


 毎日毎日飽きもせず突っ込んでくる後輩が一人。

 バドミントン部に所属しているはずのそいつは、何故かランニングの途中にいつもここまで来る。

 何故だ。


「福田先輩は今日も元気にプログラミングですか! 私は今日もランニングです!」

「見りゃわかるわ!」

「これ何やってるんですか? うっわ何語これ読めない、先輩かっけえ」

「何普通に入ってきてるの? お前のランニングって何なの?」


 ずけずけとパソコン室に入ってきたかと思えば、画面を覗きこむ。


「本当に私にはわからん世界だ……」

「だろうな」

「ちなみに先輩が今やってるそれって何ですか!」

「どうせ言ってもわかんないだろ」

「でも気になる! 気になりますもの!」

「気にしなくていい、お前には一生かかわりのないことだ」


 しっしっ、虫を追い払うように手を振っても、そいつはへらへらとした顔で俺の方へ来る。

 堪えない奴だ。懲りないと言ってもいい。


「先輩先輩、なんか私にもわかる楽しいことってないですか!」

「しつこい! 運動部はランニングしに帰れ!」

「運動部差別よくない!」

「俺の部活の邪魔をするな」

「だって先輩どうせ独りじゃん!」

「人をボッチみたいに言うな!」


 ぎゃーぎゃーとやり取りをしていたところに、足音。


「松本! サボってんじゃないよ!」

「あばば、先輩!」

「福田先輩、うちのがスミマセン」

「本当だよ! ちゃんと監督しといてくれよ!」

「すんません」


 どうやらバドミントン部の先輩だったらしい。

 俺の名前を知っているのは何故だかわからんが。


「ほら松本! あんたが福田先輩大好きなのは充分わかったから、行くよ!」

「うぅぅ……福田先輩ー! また来ますからねー! 待っててねー!」

「もうくんな!」


 引き連れられてランニングに戻る松本を見送ってから、溜息を一つ。

 パソコン上でメモ帳を起動して、ファイルを開く。


 同じ時間が連なるそのファイルに、現在の時間を記録。

 まったく同じ時間が、また追加された。


「……こんなん記録して、何の意味があるんだか」


 深くため息をついて、上書き保存。

 さてさて。


「続きすっかー」


 椅子に座り直して、画面に向かう。

 さて、どこまで書いたか。卒業までには、このプログラムも完成させねば。



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