01 毎日同じ時間
――福田良太と松本百合の場合①――
飽きっぽそうなやつほど、意外と熱心だったりする。
放課後、部活の時間。いつも通りのパソコン室。
カタカタ、キーボードの音だけが響く空間。
騒がしいのは苦手だ。
こうして一人、画面に向かっているくらいがちょうどいい……のに。
「福田先輩、ちゃーっす! 私が来ましたよ!」
「帰れ!」
毎日毎日飽きもせず突っ込んでくる後輩が一人。
バドミントン部に所属しているはずのそいつは、何故かランニングの途中にいつもここまで来る。
何故だ。
「福田先輩は今日も元気にプログラミングですか! 私は今日もランニングです!」
「見りゃわかるわ!」
「これ何やってるんですか? うっわ何語これ読めない、先輩かっけえ」
「何普通に入ってきてるの? お前のランニングって何なの?」
ずけずけとパソコン室に入ってきたかと思えば、画面を覗きこむ。
「本当に私にはわからん世界だ……」
「だろうな」
「ちなみに先輩が今やってるそれって何ですか!」
「どうせ言ってもわかんないだろ」
「でも気になる! 気になりますもの!」
「気にしなくていい、お前には一生かかわりのないことだ」
しっしっ、虫を追い払うように手を振っても、そいつはへらへらとした顔で俺の方へ来る。
堪えない奴だ。懲りないと言ってもいい。
「先輩先輩、なんか私にもわかる楽しいことってないですか!」
「しつこい! 運動部はランニングしに帰れ!」
「運動部差別よくない!」
「俺の部活の邪魔をするな」
「だって先輩どうせ独りじゃん!」
「人をボッチみたいに言うな!」
ぎゃーぎゃーとやり取りをしていたところに、足音。
「松本! サボってんじゃないよ!」
「あばば、先輩!」
「福田先輩、うちのがスミマセン」
「本当だよ! ちゃんと監督しといてくれよ!」
「すんません」
どうやらバドミントン部の先輩だったらしい。
俺の名前を知っているのは何故だかわからんが。
「ほら松本! あんたが福田先輩大好きなのは充分わかったから、行くよ!」
「うぅぅ……福田先輩ー! また来ますからねー! 待っててねー!」
「もうくんな!」
引き連れられてランニングに戻る松本を見送ってから、溜息を一つ。
パソコン上でメモ帳を起動して、ファイルを開く。
同じ時間が連なるそのファイルに、現在の時間を記録。
まったく同じ時間が、また追加された。
「……こんなん記録して、何の意味があるんだか」
深くため息をついて、上書き保存。
さてさて。
「続きすっかー」
椅子に座り直して、画面に向かう。
さて、どこまで書いたか。卒業までには、このプログラムも完成させねば。




