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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 01~不器用な彼と鈍感な彼女~
6/70

06 落ち着く場所

 ――坂本大翔と清水由紀の場合⑥――


 君の隣は、居心地がいいようです。


「もう七月だし、そろそろ席替えでもしようか!」


 担任の言葉に、教室がにわかに盛り上がった。

 ああ、そう言えば確かに、入学してからずっとこの席順のままだ。

 ちらりと隣を見ると、坂本くんは机に頬杖をついたまま、ぽかんとした顔で黒板の方を見ていた。


「ってわけで、公正を期すためにくじは先生が作ってきた! 不正はさせん!」

「えー!」

「えーって何だ、やるつもりだったのか!」

「ノリですよ、ノリ!」


 教室中が盛り上がる中、担任は黒板に線を書いていく。

 時々振り向いては、机を数えて、あっという間に見取り図が出来上がっていく。

 それから、それぞれの机にランダムで数字が書かれていく。


「よーし、じゃあ出席番号順……と思ったけど、いつもそれだとつまらないな。逆順で行こう」

「はーい」


 出席番号と逆順、最後尾の渡辺くんからくじを引いていく。

 さ行の私は中盤より少し後。ずいぶん少なくなってきたくじを引き、中を開いてみた。


 十三番。


 何とも言えない数字を黒板で確認すると、なんと窓際の後ろから二番目。

 とてもラッキーだ。今年の運気を使い果たしたのではないかと思うほど。


「全員引いたなー? 確認したら移動開始!」


 机の中身を取り出して、鞄を持つ。

 その際に隣を見ると、坂本くんはくじと黒板を交互に見て、難しい顔をしていた。 


「あ、由紀ちゃんの席そこ?」

「おっ、後ろは美咲ちゃんかー」


 席を移動したら、後ろの席には文芸部仲間の美咲ちゃん。

 改めてよろしくねー、何て言っている間に、クラス全員が席に着いた。


 何気なく隣を見れば、渡辺くんの姿。

 何気に身長が高くてガタイもいい彼が隣にいると、妙な威圧感がある。

 そして、斜め後ろには坂本くん。

 彼はどこか不機嫌そうな顔をして、じっと渡辺くんの背中を睨んでいた。


「全員座ったな? あ、黒板が見づらいとかあったら言えよー」

「はい、先生! 前の席の渡辺が無駄にデカいせいで黒板がよく見えませーん!」

「おっと、そうか。じゃあ坂本と渡辺は交代だな」


 そういった経緯で、隣と斜め後ろが入れ替わる。


「悪いな、渡辺」

「全然!」


 そんなことを話しながら私の隣に座った坂本くんは、にっこり、嬉しそうに笑った。

 さっきの不機嫌そうな表情が嘘のよう。


「また、よろしくな」


 そう言って笑う坂本くんにつられて、顔が緩むのが分かった。


「うん」


 不思議だ。

 坂本くんが隣に来ると、どこかほっとしている私がいる。



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