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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 11~一途な彼とひねくれた彼女~
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02 届いてほしい

 ――木村大祐と青木奈々の場合②――


 途方もないくらいずっと、片思いをしている。


「青木せんぱーい!」

「うわっ! また来たの!?」


 放課後、グラウンド。

 正確に言えば、美術室の外。

 窓から中に向かって声をかければ、いつも通り驚く青木先輩。


 あー、可愛い。

 同級生どころか歳下にすら見える先輩の可愛さたるや、山の如し。

 あ、なんか失礼な例えになっちゃった。


「先輩って本当可愛いよなぁ!」

「うるさいな。もっと可愛い子たくさんいるでしょう」

「青木先輩が一番かわいい!」

「また変なことを言う」


 呆れたようにため息をついて、青木先輩はキャンバスに向き直る。

 外の風景を描いているようで、俺の方からは青木先輩が何を描いているかわからない。


「先輩、何描いてんの?」

「絵だけど」

「いや、そうじゃなくて、何の絵を描いてんの?」

「グラウンドの風景だけど」

「へー、見たい!」

「何で木村くんに見せなきゃいけないの」


 冷たい。

 青木先輩が俺に対して冷たい。

 その点、石川は幼馴染ちゃんに優しくされてると思う。マジで。


「そんなこと言わないでさー、こうチラッとだけでもいいから」

「嫌よ。重いもの」

「なんてこった、そこの労力を考えてなかった!」


 きょろきょろ、辺りを見回す。

 幸い、コーチは席を外しているらしい。トイレかタバコだろうか。


「失礼!」


 窓に手をかけて、よじ登ろうとする。

 と、先輩が立ち上がってこっちに来た。


「窓から入らない!」

「いて」


 ぺしんっ、といい音がした。

 どうやら頭をはたかれたらしい。


 ああ、諸君、どうか引かないでほしい。

 ぶっちゃけ、初めて先輩から触ってもらえたもんで、俺は今すげー嬉しい。


「入るならちゃんと玄関から……って、何よ、その緩んだ顔は」

「初めて先輩に触ってもらえた」

「え、今ので?」


 青木先輩に引かれた。


「玄関から回れば見せてくれんの?」

「玄関から回ってこられたらね」

「よっしゃ! じゃあ先輩、今から行くから待ってて!」


 意気揚々と玄関に向かおうとした矢先。


「木村ァァア!! お前はまたサボっとんかァァア!!」

「げえっ! コーチ!」


 見つかってしまった。

 練習に戻らなければ……そんなことを思いながら振り返ったら、青木先輩がくすくすと笑っていた。


 どくん。

 心臓が、大きく鳴いたのが分かった。


「ほら、行かないと」

「うー……絶対隙見つけて見に行くから!」

「来なくていいよ」


 先輩に手を振って、走る。


 あーあ、知らないんだろうな、先輩は。

 俺が、入学してすぐに青木先輩に一目惚れしたことも。

 それからずっと、先輩のことだけ見てんのも。


 ……どうやったら、ちゃんと伝わんのかな。



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