02 届いてほしい
――木村大祐と青木奈々の場合②――
途方もないくらいずっと、片思いをしている。
「青木せんぱーい!」
「うわっ! また来たの!?」
放課後、グラウンド。
正確に言えば、美術室の外。
窓から中に向かって声をかければ、いつも通り驚く青木先輩。
あー、可愛い。
同級生どころか歳下にすら見える先輩の可愛さたるや、山の如し。
あ、なんか失礼な例えになっちゃった。
「先輩って本当可愛いよなぁ!」
「うるさいな。もっと可愛い子たくさんいるでしょう」
「青木先輩が一番かわいい!」
「また変なことを言う」
呆れたようにため息をついて、青木先輩はキャンバスに向き直る。
外の風景を描いているようで、俺の方からは青木先輩が何を描いているかわからない。
「先輩、何描いてんの?」
「絵だけど」
「いや、そうじゃなくて、何の絵を描いてんの?」
「グラウンドの風景だけど」
「へー、見たい!」
「何で木村くんに見せなきゃいけないの」
冷たい。
青木先輩が俺に対して冷たい。
その点、石川は幼馴染ちゃんに優しくされてると思う。マジで。
「そんなこと言わないでさー、こうチラッとだけでもいいから」
「嫌よ。重いもの」
「なんてこった、そこの労力を考えてなかった!」
きょろきょろ、辺りを見回す。
幸い、コーチは席を外しているらしい。トイレかタバコだろうか。
「失礼!」
窓に手をかけて、よじ登ろうとする。
と、先輩が立ち上がってこっちに来た。
「窓から入らない!」
「いて」
ぺしんっ、といい音がした。
どうやら頭をはたかれたらしい。
ああ、諸君、どうか引かないでほしい。
ぶっちゃけ、初めて先輩から触ってもらえたもんで、俺は今すげー嬉しい。
「入るならちゃんと玄関から……って、何よ、その緩んだ顔は」
「初めて先輩に触ってもらえた」
「え、今ので?」
青木先輩に引かれた。
「玄関から回れば見せてくれんの?」
「玄関から回ってこられたらね」
「よっしゃ! じゃあ先輩、今から行くから待ってて!」
意気揚々と玄関に向かおうとした矢先。
「木村ァァア!! お前はまたサボっとんかァァア!!」
「げえっ! コーチ!」
見つかってしまった。
練習に戻らなければ……そんなことを思いながら振り返ったら、青木先輩がくすくすと笑っていた。
どくん。
心臓が、大きく鳴いたのが分かった。
「ほら、行かないと」
「うー……絶対隙見つけて見に行くから!」
「来なくていいよ」
先輩に手を振って、走る。
あーあ、知らないんだろうな、先輩は。
俺が、入学してすぐに青木先輩に一目惚れしたことも。
それからずっと、先輩のことだけ見てんのも。
……どうやったら、ちゃんと伝わんのかな。




