04 貴方の隣に私
――藤田健一と橋本未来の場合④――
やっぱり私は、貴方の隣が好き。
「藤田先輩、とくと見よ! この私の素晴らしいテストたちを!」
「……どれどれ」
中間テストがすべて返ってきた、ある日の放課後。
いつも通り、帰り道で藤田先輩に突撃して、返ってきたテストを自信満々に掲げて見せた。
「どう? どう? 私の中では画期的な点数なんだけど!」
「ほぼ七十点台じゃねーか、微妙」
「そんなこと言わないで! 私、いつも平均五十点台なんだよ!」
「それは普段のお前が心配になる話だな」
先輩は呆れたようにため息をついてから、テストを私に突き返した。
「これじゃとても好成績とは呼べまい。せめて平均八十点台を叩き出してきてほしかった」
「えぇぇ! そんな殺生な!」
「なので今回、パフェは却下だ。ソフトクリーム程度なら許可しよう」
「藤田先輩!」
「ただしバニラかチョコ、どちらかだ。ミックスは高いので却下」
「藤田先輩!?」
「あるいはコンビニアイス! 今のお前の成績ではその程度がちょうどいい」
「酷いよー」
結構頑張ったんだけどなぁ。
平均点から考えると、成績は大幅アップだったのに。
ため息をついたら、ぽんっ、と頭の上に何かが乗る感覚。
顔を上げたら、藤田先輩がの手が私の頭に乗っていた。
「ま、頑張りは認めてやらなくもない」
そう言うと、藤田先輩は小さく笑ってから歩き出した。
しばらく呆然とその後ろ姿を見送ってから、ようやっと、頭を撫でられたことを理解した。
「橋本ー、何してんだ、行くぞー」
前方から聞こえる藤田先輩の声に、顔のにやけが止まらない。
ゆるむ顔をそのままに、藤田先輩の背中を追いかけた。
「藤田先輩! 私っ、クレープのほうがいいな!」
「却下」
「ええっ、じゃあせめてかき氷がいいな!」
「値段によっては検討しよう」
「わーい!」
のんびりと歩く藤田先輩に追いついて、隣を歩く。
歩幅は全く違うのに、歩くペースは似たり寄ったり。
藤田先輩はのんびり屋さんだからなぁ。
そんなことを思ったら、にまにまと笑いがこぼれた。
「何を笑ってんだ、お前は」
「うふふー、だってね!」
見上げたら、こっちを見下ろす藤田先輩と目が合った。
身長差は二十センチとちょっと。
気持ち、ちょっと遠い感じがする。
「初めてだよ!」
「何がだ」
「藤田先輩が、先導してくれるの!」
いつも、私が藤田先輩の手を引いて、行こうって先導して。
だから、藤田先輩が『行くぞ』って言ってくれるの、初めてなんだ。
「……あー、そうだったか?」
「うん!」
にまにまと笑顔が止まらない私の隣で、藤田先輩はバツが悪そうな顔をする。
「おっ、藤田先輩が照れてる!」
「照れてない。断じて照れてない」
あはは、藤田先輩、耳が真っ赤だよ。




