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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 10~自堕落な彼と多趣味な彼女~
54/70

04 貴方の隣に私

 ――藤田健一と橋本未来の場合④――


 やっぱり私は、貴方の隣が好き。


「藤田先輩、とくと見よ! この私の素晴らしいテストたちを!」

「……どれどれ」


 中間テストがすべて返ってきた、ある日の放課後。

 いつも通り、帰り道で藤田先輩に突撃して、返ってきたテストを自信満々に掲げて見せた。


「どう? どう? 私の中では画期的な点数なんだけど!」

「ほぼ七十点台じゃねーか、微妙」

「そんなこと言わないで! 私、いつも平均五十点台なんだよ!」

「それは普段のお前が心配になる話だな」


 先輩は呆れたようにため息をついてから、テストを私に突き返した。


「これじゃとても好成績とは呼べまい。せめて平均八十点台を叩き出してきてほしかった」

「えぇぇ! そんな殺生な!」

「なので今回、パフェは却下だ。ソフトクリーム程度なら許可しよう」

「藤田先輩!」

「ただしバニラかチョコ、どちらかだ。ミックスは高いので却下」

「藤田先輩!?」

「あるいはコンビニアイス! 今のお前の成績ではその程度がちょうどいい」

「酷いよー」


 結構頑張ったんだけどなぁ。

 平均点から考えると、成績は大幅アップだったのに。


 ため息をついたら、ぽんっ、と頭の上に何かが乗る感覚。

 顔を上げたら、藤田先輩がの手が私の頭に乗っていた。


「ま、頑張りは認めてやらなくもない」


 そう言うと、藤田先輩は小さく笑ってから歩き出した。

 しばらく呆然とその後ろ姿を見送ってから、ようやっと、頭を撫でられたことを理解した。


「橋本ー、何してんだ、行くぞー」


 前方から聞こえる藤田先輩の声に、顔のにやけが止まらない。

 ゆるむ顔をそのままに、藤田先輩の背中を追いかけた。


「藤田先輩! 私っ、クレープのほうがいいな!」

「却下」

「ええっ、じゃあせめてかき氷がいいな!」

「値段によっては検討しよう」

「わーい!」


 のんびりと歩く藤田先輩に追いついて、隣を歩く。

 歩幅は全く違うのに、歩くペースは似たり寄ったり。


 藤田先輩はのんびり屋さんだからなぁ。


 そんなことを思ったら、にまにまと笑いがこぼれた。


「何を笑ってんだ、お前は」

「うふふー、だってね!」


 見上げたら、こっちを見下ろす藤田先輩と目が合った。

 身長差は二十センチとちょっと。

 気持ち、ちょっと遠い感じがする。


「初めてだよ!」

「何がだ」

「藤田先輩が、先導してくれるの!」


 いつも、私が藤田先輩の手を引いて、行こうって先導して。

 だから、藤田先輩が『行くぞ』って言ってくれるの、初めてなんだ。


「……あー、そうだったか?」

「うん!」


 にまにまと笑顔が止まらない私の隣で、藤田先輩はバツが悪そうな顔をする。


「おっ、藤田先輩が照れてる!」

「照れてない。断じて照れてない」


 あはは、藤田先輩、耳が真っ赤だよ。



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