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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 10~自堕落な彼と多趣味な彼女~
51/70

01 有り余る時間

 ――藤田(ふじた)健一(けんいち)橋本(はしもと)未来(みらい)の場合①――


 かったるい、かったるい。


 放課後、帰宅途中。盛大な欠伸を一つ。

 部活なんて面倒くさくて入ってないし、委員会だって面倒くさいから入らない。

 人間関係も面倒くさい。表面だけ仲良くしておけば問題ないだろ。


「ねむ」


 首を掻きながら歩いている途中、後ろから軽快な足音。

 俺を追い抜いて行ったその足音は、俺の数歩前で止まった。


「あーっ、やっぱり藤田先輩だ! おはよう!」

「放課後だぞ」

「しまった、さっきまで寝てたから間違えた! こんにちは!」

「帰りのホームルーム中に寝てたのか、お前は」


 へらへらと笑いながら挨拶をするそいつの横を通り過ぎる。

 そいつは、相変わらず軽快な足取りで俺の横に追いついてきた。


「藤田先輩、一緒に帰ろうよー。あ、バッティングセンター行こう!」

「行きません」

「私がホームラン打ったらご褒美にジュースおごって!」

「だから行かないって」

「ホームラン打てなかったらジュースで慰めて!」

「どっちにしろ俺のおごりじゃねーか! つか行かねーって言ってんだろ!」


 盛大にツッコめば、そいつは何故か嬉しそうにへらへらと笑う。

 まったく、意味が分からない。

 そもそもなんで後輩のくせにタメ口なんだ、意味が分からない。


「またまたぁ、藤田先輩はそう言いながら私に付き合ってくれるんだから!」

「最終的にお前が毎回強制連行していくんだろうが」


 深くため息をついたところで、そいつが俺の左手をグイグイと引く。


「バッティングセンターの後は、最近できたカフェに行こう!」

「ちょ、おい橋本」

「それから雑貨屋! 友達の誕生日が1週間前だったんだって! プレゼント買わなきゃ」

「それ俺が付き合う必要ある!?」


 こいつはいつもそう、自分勝手に予定を決めて、いち早く帰りたい俺を振り回す。

 ご近所さんのよしみということで、なんて意味の分からない言い訳を振りかざす。

 ここ最近の日常の中で、一番面倒くさい、面倒くさい、


「ほら、行こう、先輩!」


 面倒くさい、はずなのに。


「……ったく、しょうがねーなぁ」


 結局、毎回この勢いに負けてしまう自分が嫌だ。

 結局、毎回この笑顔にほだされてしまう自分が嫌だ。


「明日はカラオケがいいなぁ!」

「げ、明日もかよ」

「やりたいことがいっぱいだよ! 時間がいくらあっても足りないよ!」

「お前は人生楽しそうだな」


 俺が自堕落に過ごす分の時間、こいつがもらってくれればいいのにな。



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