01 有り余る時間
――藤田健一と橋本未来の場合①――
かったるい、かったるい。
放課後、帰宅途中。盛大な欠伸を一つ。
部活なんて面倒くさくて入ってないし、委員会だって面倒くさいから入らない。
人間関係も面倒くさい。表面だけ仲良くしておけば問題ないだろ。
「ねむ」
首を掻きながら歩いている途中、後ろから軽快な足音。
俺を追い抜いて行ったその足音は、俺の数歩前で止まった。
「あーっ、やっぱり藤田先輩だ! おはよう!」
「放課後だぞ」
「しまった、さっきまで寝てたから間違えた! こんにちは!」
「帰りのホームルーム中に寝てたのか、お前は」
へらへらと笑いながら挨拶をするそいつの横を通り過ぎる。
そいつは、相変わらず軽快な足取りで俺の横に追いついてきた。
「藤田先輩、一緒に帰ろうよー。あ、バッティングセンター行こう!」
「行きません」
「私がホームラン打ったらご褒美にジュースおごって!」
「だから行かないって」
「ホームラン打てなかったらジュースで慰めて!」
「どっちにしろ俺のおごりじゃねーか! つか行かねーって言ってんだろ!」
盛大にツッコめば、そいつは何故か嬉しそうにへらへらと笑う。
まったく、意味が分からない。
そもそもなんで後輩のくせにタメ口なんだ、意味が分からない。
「またまたぁ、藤田先輩はそう言いながら私に付き合ってくれるんだから!」
「最終的にお前が毎回強制連行していくんだろうが」
深くため息をついたところで、そいつが俺の左手をグイグイと引く。
「バッティングセンターの後は、最近できたカフェに行こう!」
「ちょ、おい橋本」
「それから雑貨屋! 友達の誕生日が1週間前だったんだって! プレゼント買わなきゃ」
「それ俺が付き合う必要ある!?」
こいつはいつもそう、自分勝手に予定を決めて、いち早く帰りたい俺を振り回す。
ご近所さんのよしみということで、なんて意味の分からない言い訳を振りかざす。
ここ最近の日常の中で、一番面倒くさい、面倒くさい、
「ほら、行こう、先輩!」
面倒くさい、はずなのに。
「……ったく、しょうがねーなぁ」
結局、毎回この勢いに負けてしまう自分が嫌だ。
結局、毎回この笑顔にほだされてしまう自分が嫌だ。
「明日はカラオケがいいなぁ!」
「げ、明日もかよ」
「やりたいことがいっぱいだよ! 時間がいくらあっても足りないよ!」
「お前は人生楽しそうだな」
俺が自堕落に過ごす分の時間、こいつがもらってくれればいいのにな。




