02 応援される人
――村上海斗と田中朋絵の場合②――
俺もあれくらい、堂々とできたらいいのに。
突然だが、同じクラスの坂本は、隣の席の清水さんに片思いをしている。
この事実は、清水さんを除いたクラス全員が存じ上げている。
坂本の好きアピールはものすごくわかりやすい。それこそ顔に『好きだ!』と書いてあるんじゃないかというくらい。
そのアピールに気付かない清水さんに、クラス全員がヤキモキしている現状。
俺の席からも、何か話している二人の様子はよく見える。
なんとなくため息をつきながら、弁当を取り出した。
「む、村上くんっ! こんにちはっ」
「! あっ、たっ、田中さん! こんにちは!」
廊下の方から聞こえた声に振り返れば、整美委員会で一緒の田中さんの姿。
「あ、あああ、あのっ、これっ、あ、ありがとう……!」
そう言いながら田中さんが差し出してきたのは、教科書。
前の休み時間に、忘れてしまったから貸してほしい、と田中さんが借りて行ったものだ。
「いやいやいや、このくらい、全然っ」
「こ、このお礼は今度必ずするからっ……」
「そ、そんな気にしなくていいのに!」
おどおどとした様子の田中さんと、おそらく同じ顔をしているだろう俺。
このあがり症、何とかならないものだろうか。
女の子と話すだけでこのザマでは、将来が思いやられるというものだ。
「じゃ、じゃあ村上くん、また委員会でね!」
「あっ、う、うん! また!」
パタパタと隣の教室へかけていく田中さんの後姿を見送って、ため息。
田中さんは、可愛い。
あわよくばお友達になりたい。
だがしかし、こんな俺に連絡先を聞く勇気などあるわけもない。
「……はぁ」
ため息をついてから、教科書を机にしまって、先ほど取り出した弁当を開ける。
母さん、卵巻き、巻けてないぞ……。
「その言い方は村上くんが可哀相だ」
突然聞こえてきた自分の名前に顔を上げれば、清水さんと目が合った。
それと同時に、同じように俺の方を見た坂本にめっちゃ睨まれた。
見てんじゃねーよ、と顔に書いてある。無駄に怖い。
即座に目を逸らした。
「村上なんかどうでもいいって、だから勉強付き合ってくれよ!」
どうやら、一緒に勉強しましょうと坂本が清水さんをお誘いしているらしい。
ああ、俺も坂本くらい強気に強引に、あがることなく女の子とお話ができたらなぁ。
そんなことを思いながら周りを見たら、クラスメートたちが全員一様に、坂本と清水さんの様子を微笑ましく見守っていた。
「早く付き合えばいいのに」
「坂本がんばれー」
クラスメートがひそひそとそんなことを言っているのが聞こえる。
正直、ああやって応援される坂本ってすげーと思う。




