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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 08~あがり症な彼と口下手な彼女~
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02 応援される人

 ――村上海斗と田中朋絵の場合②――


 俺もあれくらい、堂々とできたらいいのに。


 突然だが、同じクラスの坂本は、隣の席の清水さんに片思いをしている。

 この事実は、清水さんを除いたクラス全員が存じ上げている。


 坂本の好きアピールはものすごくわかりやすい。それこそ顔に『好きだ!』と書いてあるんじゃないかというくらい。

 そのアピールに気付かない清水さんに、クラス全員がヤキモキしている現状。


 俺の席からも、何か話している二人の様子はよく見える。

 なんとなくため息をつきながら、弁当を取り出した。


「む、村上くんっ! こんにちはっ」

「! あっ、たっ、田中さん! こんにちは!」


 廊下の方から聞こえた声に振り返れば、整美委員会で一緒の田中さんの姿。


「あ、あああ、あのっ、これっ、あ、ありがとう……!」


 そう言いながら田中さんが差し出してきたのは、教科書。

 前の休み時間に、忘れてしまったから貸してほしい、と田中さんが借りて行ったものだ。


「いやいやいや、このくらい、全然っ」

「こ、このお礼は今度必ずするからっ……」

「そ、そんな気にしなくていいのに!」


 おどおどとした様子の田中さんと、おそらく同じ顔をしているだろう俺。

 このあがり症、何とかならないものだろうか。

 女の子と話すだけでこのザマでは、将来が思いやられるというものだ。


「じゃ、じゃあ村上くん、また委員会でね!」

「あっ、う、うん! また!」


 パタパタと隣の教室へかけていく田中さんの後姿を見送って、ため息。


 田中さんは、可愛い。

 あわよくばお友達になりたい。

 だがしかし、こんな俺に連絡先を聞く勇気などあるわけもない。


「……はぁ」


 ため息をついてから、教科書を机にしまって、先ほど取り出した弁当を開ける。

 母さん、卵巻き、巻けてないぞ……。


「その言い方は村上くんが可哀相だ」


 突然聞こえてきた自分の名前に顔を上げれば、清水さんと目が合った。

 それと同時に、同じように俺の方を見た坂本にめっちゃ睨まれた。

 見てんじゃねーよ、と顔に書いてある。無駄に怖い。

 即座に目を逸らした。


「村上なんかどうでもいいって、だから勉強付き合ってくれよ!」


 どうやら、一緒に勉強しましょうと坂本が清水さんをお誘いしているらしい。

 ああ、俺も坂本くらい強気に強引に、あがることなく女の子とお話ができたらなぁ。


 そんなことを思いながら周りを見たら、クラスメートたちが全員一様に、坂本と清水さんの様子を微笑ましく見守っていた。


「早く付き合えばいいのに」

「坂本がんばれー」


 クラスメートがひそひそとそんなことを言っているのが聞こえる。

 正直、ああやって応援される坂本ってすげーと思う。



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