01 ゴミ拾い勝負
――村上海斗と田中朋絵の場合①――
世界はどこまでも優しいらしい。
高校に入って初めて、委員会というものに入ることになった。
クラス中の誰もがなるのを嫌がって、最後まで決まらなかった整美委員。
最終的に先生からの指名で、たまたま教卓の目の前の席にいた私が選ばれてしまった。
ついてない。
本当、ついてない。
委員会活動が行われている化学室、後ろの方の隅っこの席でため息をついた。
「では、本日は校舎周りの清掃を行いますので、後ろにあるゴミ袋とゴミばさみ持って移動しますよー」
先生の指示で、ぞろぞろと生徒たちが動く。
私も席を立とうとしたけれど、生徒たちで混雑していて掃除道具が取れる状態じゃない。
仕方がないから席でしばらく待機しよう。
「あーあ、面倒くせえ」
「適当にやっときゃいいだろ、こんなん」
ゲラゲラと笑いながら掃除道具を取って行く生徒たち。
やる気がないのは別にいい、仕方ない。
私だってやる気はないもの。
だけど、それをおおっぴらに言うのはどうかと思うの。
「はい」
ふいに、私の目の前に軍手が差し出された。
きょとんとしながら顔をあげると、男子生徒が一人、私に向かって軍手を差し出していた。
「あの、引っ掴んだら余分に取れたみたいでさ。持ってないなら使ってよ」
「え、あ、……ありがとう」
軍手を受け取れば、その人はほっとしたように笑って、私の後ろを見た。
「あ、ほら、ゴミばさみ取れそう」
「えっ、あっ、うん、そうだねっ」
ようやく混雑が一段落したらしい。
残っていたゴミばさみは少し歪んでいて、うまく物を挟めなさそうなものばかり。
さっきの男の子が取ったゴミばさみもそうだったようで、彼は苦笑しながら私の方を見た。
「残り物に福がなかったパターンのやつだ」
「そうだね」
つられて苦笑しながら、そばにあったゴミ袋を取る。
……ああ、そうだ。
「はい、ゴミ袋」
「えっ、ああっ、ありがとう!」
軍手のお礼にゴミ袋を取って渡したら、彼は大げさなくらい驚いて、それから笑った。
「ああ、そうだ、俺、一年二組の村上って言うんだ」
「あ、えっと、私は一年三組の田中」
「田中さん! よろしく!」
にっこり。
少しだけ照れ臭そうに、彼……村上くんは笑った。
笑顔だけでなんとなくわかる。
この人はきっと、優しい人なんだろうな。
「む、村上くんっ、どっちがいっぱい拾えるか勝負しようっ」
ふと思いついてそう言ったら、村上くんは面食らったような顔をして、それからまた照れ臭そうに、はにかむみたいに、笑った。
「じゃあ、負けた方が勝った方にジュースおごるってことで!」
「受けて立つ!」
不思議だな。
さっきまで、ついてないなんて思っていたのに。
……委員会、入ってよかったな。




