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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 08~あがり症な彼と口下手な彼女~
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01 ゴミ拾い勝負

 ――村上(むらかみ)海斗(かいと)田中(たなか)朋絵(ともえ)の場合①――


 世界はどこまでも優しいらしい。


 高校に入って初めて、委員会というものに入ることになった。

 クラス中の誰もがなるのを嫌がって、最後まで決まらなかった整美委員。

 最終的に先生からの指名で、たまたま教卓の目の前の席にいた私が選ばれてしまった。


 ついてない。

 本当、ついてない。


 委員会活動が行われている化学室、後ろの方の隅っこの席でため息をついた。


「では、本日は校舎周りの清掃を行いますので、後ろにあるゴミ袋とゴミばさみ持って移動しますよー」


 先生の指示で、ぞろぞろと生徒たちが動く。

 私も席を立とうとしたけれど、生徒たちで混雑していて掃除道具が取れる状態じゃない。

 仕方がないから席でしばらく待機しよう。


「あーあ、面倒くせえ」

「適当にやっときゃいいだろ、こんなん」


 ゲラゲラと笑いながら掃除道具を取って行く生徒たち。

 やる気がないのは別にいい、仕方ない。

 私だってやる気はないもの。

 だけど、それをおおっぴらに言うのはどうかと思うの。


「はい」


 ふいに、私の目の前に軍手が差し出された。

 きょとんとしながら顔をあげると、男子生徒が一人、私に向かって軍手を差し出していた。


「あの、引っ掴んだら余分に取れたみたいでさ。持ってないなら使ってよ」

「え、あ、……ありがとう」


 軍手を受け取れば、その人はほっとしたように笑って、私の後ろを見た。


「あ、ほら、ゴミばさみ取れそう」

「えっ、あっ、うん、そうだねっ」


 ようやく混雑が一段落したらしい。

 残っていたゴミばさみは少し歪んでいて、うまく物を挟めなさそうなものばかり。

 さっきの男の子が取ったゴミばさみもそうだったようで、彼は苦笑しながら私の方を見た。


「残り物に福がなかったパターンのやつだ」

「そうだね」


 つられて苦笑しながら、そばにあったゴミ袋を取る。

 ……ああ、そうだ。


「はい、ゴミ袋」

「えっ、ああっ、ありがとう!」


 軍手のお礼にゴミ袋を取って渡したら、彼は大げさなくらい驚いて、それから笑った。


「ああ、そうだ、俺、一年二組の村上って言うんだ」

「あ、えっと、私は一年三組の田中」

「田中さん! よろしく!」


 にっこり。

 少しだけ照れ臭そうに、彼……村上くんは笑った。


 笑顔だけでなんとなくわかる。

 この人はきっと、優しい人なんだろうな。


「む、村上くんっ、どっちがいっぱい拾えるか勝負しようっ」


 ふと思いついてそう言ったら、村上くんは面食らったような顔をして、それからまた照れ臭そうに、はにかむみたいに、笑った。


「じゃあ、負けた方が勝った方にジュースおごるってことで!」

「受けて立つ!」


 不思議だな。

 さっきまで、ついてないなんて思っていたのに。

 ……委員会、入ってよかったな。



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