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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 06~ドライな彼とクールな彼女~
32/70

02 似てはいない

 ――渡辺亮と西村葵の場合②――


 クールとドライの違いは、そこにあるのだと思う。


「今日も頑張ってんな」

「あら、渡辺くん」


 放課後、部活でランニング中のこと。

 野球部に所属しているはずの渡辺くんが、制服を着たまま玄関を出てきたところだった。


「どうしたの。野球部の練習ももう始まっているはずよ」

「今から行くんだよ」

「堂々とした遅刻ね」

「日直だったんだよ」

「あら、私もよ」

「……」


 渡辺くんがため息をつく。 

 スピードを緩めて横に止まると、渡辺くんは不思議そうな顔で私を見た。


「ランニング中じゃないのか」

「ええ、そうよ。けれど、あなたが私を呼びとめたから」

「そんなつもりはなかった」

「そう」


 無駄に止まってしまった。

 せっかくなので一度屈伸運動をしてからまた行こう。


「お前って」

「何かしら」

「熱血なのか冷血なのかわからない」


 見上げれば、渡辺くんは心底意味が分からないという顔で私を見ている。

 渡辺くんらしからぬ質問に、つい体が止まってしまった。


「唐突におかしなことを言うのね」

「前から思ってたんだよ。やる気はあるはずなのに感じないというか」

「それは由々しき問題ね」


 こんなにもやる気に満ち溢れているというのに、外側にそれが出ていないとは。

 チームの士気にも関わってしまうかもしれないわ。


「でも、そうね。渡辺くんの質問に答えるならば、私は熱血だと思うわ」

「そうなのか」

「いわば……そうね、雪山の下にマグマみたいな」

「は?」

「内側が熱くて外側が冷えているという意味よ」

「例えが壮大すぎるだろ」


 これ以上なくわかりやすい例えだったと思うのだけど。


「お前にこんな話をする義理はないんだが」

「あら、無理して言わなくていいのよ?」

「他に言う相手がいないからお前に言っておく」

「何かしら」


 渡辺くんは本当に、心底意味が分からないというような顔のままで、小さく息を吐いた。


「俺とお前は似ていると思っていた」

「……それはなんだか、嫌な気分ね」

「俺も嫌だ。……でもお前と話していると、まったく似ていないと思う」

「でしょうね。私もそっちが正解だと思うわ」

「だから意味が分からない。俺は何故、お前が俺に似ていると思ったのかがわからない」


 そんなことを言って、渡辺くんは腕を組む。


「そうね。私から言えるとしたら」


 口を開けば、渡辺くんはこちらを見る。


 確かに最初、私も思った。

 この人は私に似ているかもしれないと。

 けれど今は思う。

 この人は、私とは似ても似つかないのだと。


「私がクールなら、あなたはドライなのよ」


 つまり、そういうことなのでしょうね。



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