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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 06~ドライな彼とクールな彼女~
31/70

01 やる気のなさ

 ――渡辺(わたなべ)(りょう)西村(にしむら)(あおい)の場合①――


 どうせいつか終わる人生に、熱意を傾けるなんて馬鹿馬鹿しくないか。


 桜がもうじき満開を迎えるらしい。

 特にそれを気にする理由も見当たらないので、いつも通りグラウンドに向かって歩く。

 すでに部活を始めているらしい運動部員が何人か、俺の横を駆け抜けていく。


「あら」


 ふと、俺の後ろから聞こえた声。

 声だけで誰かわかった。なんとなく眉間にしわを寄せて振り向けば、思った通りの見知った顔。


「西村」

「誰かと思えば渡辺くんじゃない。こんなところで何をしているの」

「今から部活だ」


 何を考えているのか、西村はスピードを落とし、俺の横を歩き出した。


「野球部はロードワークに行っているはずよ」

「戻ってきたら混じる」

「そう」

「それよりお前、ランニング中だろ」

「そうよ。でももう終わるところだもの」

「あ、そう」


 ぐっと伸びをしながら俺の横を歩く西村から視線を外して、グラウンドの方。

 サッカー部、野球部、ソフトボール部…あと、ランニングコースを駆け回るのはテニス部か。


「渡辺くん」

「何だ」

「あなた、いつもやる気がないように見受けられるのだけど、どういう気持ちで生きているの」


 思った以上に重い質問が来た。


「唐突に何てこと言うんだ」

「なんだかんだ、あなたとは1年の頃からの付き合いだけれど、私にはいまだにあなたという人物がよくわからないわ」

「俺はそのセリフをそっくりそのままお前にぶつけたい」

「なら私はそのセリフをまたあなたに向かって打ち返すわ。みぞおちを狙ったピッチャーライナー」

「殺す気か」

「大丈夫よ、あなたなら受け止めてくれると信じているわ」

「どんな信頼だ」


 おかしな方向に向かっていく会話。

 思わずため息を一つ吐いて、西村の方を向いた。西村はといえば、俺の方をじっと見ている。

 凝視するな、怖い。


「ま、それはそれとして」

「あら、はぐらかすの」

「答える義理がない」

「そう、残念」


 たいして残念じゃなさそうな顔で、西村はようやく俺から視線を外した。


「とりあえず、俺は部室に行って着替えて部活行く」

「そうね、それは大事よ」

「どうせ今年も予選敗退だけどな、弱小校だから」


 鼻で笑ってそう言うと、西村は真顔で俺の方を見て、口を開いた。


「目指せ甲子園、とか言わないの」

「誰が言うか。面倒くさいし、今さら行けるはずもない」

「最初からあきらめているようじゃ、高が知れるわね」


 ふん、なんて、今度は西村が鼻で笑う。


「目標は大きく持つべきよ。ソフトボール部の目標は『目指せ、日本一』」

「デカすぎる」

「だってその方が、必死になれるじゃない」


 そう言って、西村は数歩俺の先を行く。


「じゃあ、私は部活に戻るわ。またね、渡辺くん」

「……ああ」


 駆けていく西村の後姿を見送ってから、ガシガシ、頭を掻く。


「……やっぱりあいつ、よくわからん」


 冷静なのか熱血なのか、ぜひともはっきりしていただきたいところだ。



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