04 私に付き合え
――加藤順太と後藤舞依の場合④――
私は何か失言をしただろうか。
「しかし加藤、テストの間はちゃんと出席するんだな?」
隣の席に向かってそう尋ねれば、加藤は面倒くさそうにこちらを見た。
いつも通りの、不機嫌そうな、不健康そうな、見ているだけで笑えてくる顔をしている。
「テスト休むと成績に響くからな」
「加藤、出席日数という評価基準に対してはどう考えている?」
「問題ない。ちゃんと計算して休んでる」
筆箱を鞄の中に放り込みながら、加藤はやはり面倒くさそうに答える。
頭のいいやつの考え方はよくわからない。
そもそも加藤は頭がいいのやら悪いのやら、そこからして私にはわからない。
「楽しいのか?」
口を突いて出てきた言葉。
加藤はぱちくりと目をしばたかせ、それから小さくため息をついた。
「楽しくはないよ」
帰ってきた答えは意外なもので、今度は私が目をぱちくりとしてしまった。
加藤は気だるげに鞄を担いで立ち上がる。
「……でも、学校も楽しいとは思わない」
そうだろうか。
少なくとも私は、学校に来るのが好きだ。
クラスメートとの会話は楽しいし、帰りに寄り道をするのも楽しい。
「だからもう帰る」
「えっ、もう帰るのか!」
「もう用はない」
確かにテストも終わったのだし、用はないのだろうけど。
だからって。
「そんなにあっさり帰られてしまったら、私が寂しいじゃないか!」
「は?」
「どうせ暇なら付き合え!」
慌てて荷物を鞄に詰め込んで、席を立つ。
加藤どころか、残っていたクラスメートが一様にぽかんとした顔で私を見ていた。
「どうした?」
「……何でお前ってそういう感じなの」
「何の話だ」
クラスメートが数人、何やらこそこそと話しているようだが、どうしたことだろう。
首をかしげていたら、加藤が目の前で深くため息をついた。
「こういう空気が嫌いなんだ」
「は?」
「で、俺はどこに付き合えばいい」
面倒くさそうな顔の加藤が、真っ直ぐに私を見てそう言った。
真正面から加藤の顔を見たら、周りの喧騒もどうでもよくなってしまった。
「まずは昼食だ! どこぞのファミレスにでも入ろうじゃないか!」
「はいはい」
加藤の手をつかんで引っ張ると、加藤は諦めたように私に着いてきた。
「そのあとは買い物にでも興じようじゃないか!」
「女子の買い物って長そう」
「そうだな! 今日はとことん付き合ってもらうぞ!」
「はいはい、分かりましたよ」
相変わらず、加藤は面倒くさそうな、不健康そうな顔をしている。
けれど少しだけ笑ったように見えたのは、私の気のせいではないよな?




