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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 05~引きこもりな彼と元気な彼女~
25/70

01 届け物と仮病

 ――加藤(かとう)順太(じゅんた)後藤(ごとう)舞依(まい)の場合①――


 いつか離れてしまうなら、出会いなんてなくていい。


「ふあ」


 欠伸をして、布団から這い出る。枕元に置いた眼鏡をかけて時計を見れば、夕方に近い時間だ。今日も一日、ほとんど寝て終わってしまった。


「……のど、かわいた」


 転がるようにベッドから降りて、のそのそと部屋の外。

 リビングを通ってキッチン。冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出して飲み始めたところで、こんこん、窓を叩くような音。


「加藤! 加藤ー!」

「っぶ!!」


 振り向いてみれば、満面の笑みで窓をノックするクラスメート女子の姿。

 思わずスポーツドリンクを噴出した。そのあとでむせた。


「あっはっはっは、加藤のリアクションは面白いな!」

「後藤、お前……」


 咳き込んだまま窓を開ければ、クラスメート女子こと後藤は、にっこり楽しそうな笑顔で俺を見た。


「やあ、加藤! 今日は結局学校に来なかったな! 風邪か?」

「あー……ちょっとした体調不良?」


 いや、本当はサボった。


「そうかそうか、ならば私がおかゆでも作ってやろう」

「窓から入ろうとするな、それに飯なら間に合っているから結構だ」

「む? そうか。なら話し相手にでもなってやろう」

「だから窓から入ろうとするな、頼むからそっとしておいてくれ」


 窓から侵入を図る後藤の肩を押さえつけながら、内心でため息だ。

 何の因果で俺はこの女子によくからまれるのだろうか。


「しかし加藤、たまには人と話さないと喋り方を忘れるぞ」

「極端な話をするな。今ちゃんと話せてるだろ、まだ大丈夫だ」

「私のおかげだな!」

「お前のその無駄に前向きなところすげーなって思うよ」

「褒めても何も出ないぞ!やっぱりおかゆ作ろうか?」

「結構だ」


 今度こそ本当にため息をついて、窓の外にいる後藤に視線を向ける。

 後藤は相変らず楽しそうに笑っており、気が抜けた。


「ああ、そうそう。忘れるところだった」

「何」

「私は別に、加藤におかゆを作りに来たわけではないんだ。プリントを届けに来たんだよ。……ああ、これだ」


 ごそごそと鞄をあさっていた後藤が、プリント数枚を挟んだクリアファイルを取り出した。


「ほら、これが預かってきたプリントだ」

「わざわざどうも」

「そしてこれは私が道中で拾ってきた小石」

「捨ててきなさい」


 流れるようにツッコめば、後藤はまた楽しそうにへらへらと笑う。


「では加藤、また明日! ちゃんと学校に来るんだぞ!」


 そんなことを言ってから、こちらに向かって手を振る後藤。

 小さくそれに手を振り返しながら、もう一度ため息をついた。


 お前だって、いつかは俺から離れていくだろ。

 そう考えたらなぜか、胸の奥が苦しくなった。


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