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セイレン党組曲  作者: くつぎ
Case 04~幼馴染な彼と彼女~
20/70

02 気付いてない

 ――石川巧人と山本晴香の場合②――


 ああ、腹が立つ、腹が立つ。


「何でお前がいるんだよ!?」

「はぁ!? 私いつもこの時間なんですけど! いっそ何でお前がいるのって話なんですけど!」


 用事があって、いつもより早く家を出た、ある日の朝。

 幼馴染の晴香が、ちょうど同じタイミングで家から出てきた。


「今日は早く来いって言われたんだよ!」

「それにしても遅くない!? いつもどんだけ遅いのお前!?」

「遅刻してないからいいんだよ! つうかお前が早すぎるだけだろ!」


 今日も今日とて、幼馴染はぴーぴーとうるさい。

 本当、腹立つ。うるさいし、面倒くさいし。


「お前いつもこんな早く行って何してんの?」

「何よ、別に何だっていいじゃない」

「こんな時間に行ったって一人だろ」

「一人なわけないでしょ! 結構来てるわよ、この時間だと!」

「嘘つけよ、誰が好んでこんな早い時間に登校すんだよ」

「私がいるっつーの、悪かったな!」


 ふんっ、とそっぽを向いて速足になる晴香。

 それでも歩調は俺とあまり変わらず、距離が広がるわけでもなく。


「お前、もっと早く歩いてさっさと行けば!?」

「はぁ!? なんで歩く速さまでお前に指定されなきゃいけないんだよ!」

「お前の方が歩くの速いんだから別にいいじゃん!」


 ぎゃいのぎゃいの。

 いつも通りの騒がしさで道を歩く。

 結局、言い合っている間に学校についてしまったわけだが。


「ほらな! 結構人いるでしょ! 私一人じゃないでしょ!」

「何なの、暇なの? なんでこんな早く来てんの?」

「うるさいなぁ! 万年遅刻間際のお前にはわからないってーの!」


 ふんだ!

 今度こそ、そっぽを向いて俺から離れていく。

 深くため息をついたら、ぽん、と背中を叩かれた。


「おはよう、石川」

「木村」

「お前の幼馴染、今日もパワフルだなぁ」

「うっとうしいって言うんだよ、あれは」


 クラスメートの木村の言葉にもう一度ため息をつきながら、玄関で靴を履きかえる。


「本当、あいつの相手すんの疲れる。声帯が擦り減る気分だ」

「はっはっは、そりゃあ、あんだけ怒鳴り合ってりゃーな」


 木村はそう言って、楽しそうに笑う。

 笑いごとかよ。


「あー、あいつの幼馴染やめたい」

「まぁまぁ」

「百歩譲って幼馴染は継続したとしても、朝からあいつと登校とか二度とごめんだ」


 朝からこんなに疲れるのは、もうたくさんだ。

 下駄箱に靴をしまってから振り返ると、木村は何がおかしいのか小さく噴出して、笑った。


「何だよ?」

「いや、別に?」

「?」

「幼馴染ってのも、難儀なもんだよなァ」


 木村の言っていることはよくわからないが。

 ……確かに、幼馴染ってのは、距離が近すぎてよろしくない。



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