05 弟からの提案
――吉田翔太と山崎愛の場合⑤――
どうしてこうなった。
「おおお……吉田くんのおうち……!」
「何で人の家に来て真っ先にヨダレたらしそうな顔してるの」
「はっ、ついお腹が空いてしまって!」
「何故」
それは梅雨の晴れ間のある日のこと。
お互いに都合がついたので、本日我が家に山崎さんが来ることに。
「ただいま」
「おっ、おおおお邪魔します!」
玄関を開けると、山崎さんは緊張したようにきょろきょろと玄関周りを見回す。
あまり見ないでいただきたい。若干恥ずかしい。
「まあ、言ってもうちは両親共働きだし、今は弟しかいないけど」
「そ、そっか!」
「悠斗ー? 帰ったぞー?」
多少声を張って呼びかけると、二階から転がるような足音。
そして階段から勢いよく躍り出てきた我が弟は、ヒーローのキメポーズみたいな状態で着地した。
「兄ちゃん! ごめん! 今ちょっと敵と戦ってた!」
「これが弟だよ」
弟を指さしながら山崎さんを見ると、何故かキラキラとした目で弟を見ていた。
「ほぉぉ……吉田くんの弟くん……!」
「うおっ、兄ちゃん誰だこいつ! 敵のスパイか!」
「お前はいったい何と戦ってるんだ」
「世界征服を企む悪い奴らさ!」
「小三にして厨二病か……」
将来が不安だ。
「今朝も言っただろ。どうしてもお前に会いたいと言い張るクラスメートだ」
「ああ! 思い出した!」
「しっかりしろ、記憶力」
そんなやり取りをしていたら、山崎さんが俺と弟の顔を交互に見ながらニヨニヨと笑っていた。
「山崎さん、どうかしたの」
「えっ、ああいやいや! 微笑ましいなぁと思っておりました!」
引き気味に尋ねれば、山崎さんが慌てたように弁明する。
「私、一人っ子だからさ、兄弟ってなんか憧れるんだ」
「そんなものかねぇ」
腑に落ちず、弟の顔を見た。
弟は俺の顔を見てから、山崎さんの方を見て、いいことを思いついたという顔をした。
「じゃあ、兄ちゃんと結婚すればいいじゃん! そうしたらもれなく俺という弟ができるぞ!」
「は?」
「俺も姉ちゃん欲しいし! 完璧なアイディアだぜ!」
思わず山崎さんの顔を見たら、目が合った。
途端、見る見るうちに山崎さんが真っ赤になった。
「う、あ……いやっ、そのっ、わわわ私などが吉田くんのおよよよよお嫁さんだなんてそんなバナナほうれんそう」
「うん、落ち着け」
思った以上に取り乱してた。
逆に俺が冷静になった。
「子供の言うことなんだから、気にしなくていい。どうせ深い意味はないんだから」
「そ、それはその、そうなんだけど……!」
ちらり、俺の顔を見た山崎さんは、ぼそぼそと呟くように言った。
「それもそれで、ありかなって」
……ちょっと待って、何でそんな嬉しそうなの。
こっちが恥ずかしくなるじゃん。




