ベタっていいよね
なんか頑張れました。
書き溜め一切ございません。
「やっぱり、主人公最強系はいいよねぇ」
「わかってくれる?うん、モガミさんとはいい友達になれそうだよ」
僕の心からの叫びから五分後。僕たち二人はすっかり意気投合していた。もう僕は彼女のことを、美少女ではなく一人の同志として見ている。まぁ名字呼びは変わらないんだけどね。
「あのー・・・」
「やっぱりパッとしない主人公が、異世界とかで無双する話は読んでてワクワクするよ」
「まぁ、僕も男なら一度は最強を目指したいって思うよ」
今僕はたぶん、人生で一番スムーズに女性と話せている。やっぱり母なる大地は偉大だなぁと思わざるを得ない。
これから、彼女と異世界に行くにせよ、天国に行くにせよこの絆がなくなることはないだろう。
「あの~・・・すみません・・・」「主様、私がやりましょう」
「あ、そういえば読んだことある?主人公がゲームの中で無双する話なんだけどね。僕のお気に入りなん―――」
「ん?どうしたの?」
・・・モガミさんの肩越しに誰かいる。急に会話が止まってしまったけどしょうがないと思う。さっきまでは僕ら以外いなかったこの空間に他の人がいたら、誰だってびっくりすると思う。
そこにいたのは二人の人間・・・じゃない。片方は天使だ。だって背中に大きな白い翼があるから。
その天使さんは、水色っぽい髪色で顔立ちはまさしくクールビューティーの言葉が似合う顔立ち。服装は僕みたいなオタクからすればある意味見慣れている、純白の鎧。しかも、腰にはでっかい剣が差してある。例えるなら女騎士って感じかな。なんか強そうだし。
天使さんのとなりにいるのは、これまた例えるなら聖女。髪の色はシルクのような白髪。顔立ちはザ・清楚って感じ。でも今は困っているような顔をしている。なんでだろう?そして服装は白い羽衣みたいな服。手には辞書みたいな分厚い本が二冊―――
あれ?なんか天騎士さん(僕命名)が腰のどでかい剣を抜いたぞ?そしてそのまま大きく振りかぶって―――
ズガァァァァァァン!
思いっきり足元に振り下ろした。これが普通の大地なら真っ二つに裂けてそうな、威力と轟音。
その動作を見ていた僕はともかく彼女たちに全く気づいていなかったモガミさんは、その轟音に「きゃぁっ」とこれまた可愛らしい悲鳴を上げて体をビクッてさせていた。
・・・なにこれ?どういう状況?
両方の間に沈黙が生まれる。でもそれも一瞬のことで、
「あなたたち、我が主様から話がある。心して聞きなさい」
と、天騎士さんが言った。
主ってことはやっぱりこの人騎士なのかな?てか声こっわ。なんか無感情な感じがとても恐ろしい。だから逆らわないでおこうと思います。
そう思って、チラッと隣の聖女様の方を見る。
・・・なんか聖女様の顔がさっきとは全然違う。さっきは眉を下げて困っている感満載の顔だったけど、今はなんていうか慈愛に満ちてる感じだ。
印象も変わって今は聖女ではなくてまるで女神の様。全てを包み込んでそう。
「ありがとう、エリル。・・・えー、とりあえず、ようこそ「イルーテアガーデン」へ。私はこの世界の最高神を務めさせていただいているイルーテアと申します。こちらは私の護衛を務めている、天使のエリルです。後お見知りおきを」
「あ、どうも。僕、神谷 悟っていいます。あとこっちの娘は最神 遥です。こちらこそよろしくお願いします」
すごい下手な最高神様と出会った。隣の天騎士さんはエリルさんっていうらしい。
あとやっぱり異世界転生ルートだったらしい。僕たちが転生するであろう異世界の名前はイルーテアガーデンというらしい。・・・なんか安直な気がする。
「この度はあなたたちを無理やり連れてきてしまい申し訳ございませんでした。あなたたちをこの世界に転生させた理由はただ一つ、私の世界を救ってほしいのです。どうかお引き受けしていただけないでしょうか」
テンプレ展開キター。
でも、どうしよう。これはライトノベルの話ならば引き受けるものなんだけれども、いかんせん僕には元の世界に未練があるからなー。どうしよう。
悩んだまま、モガミさんに相談しようと思って彼女の方を見た。
モガミさんは・・・なんだか子供のような純粋な目をしていた。体もソワソワと動かしてる。うわー、まんざらでもなさそう。
「もちろん無償で、とは言いません。無事世界を救ってくださったらなにか一つ願いを叶えましょう。元の世界に帰ることもできます。もちろんあなた方が無事に事を成せるようにサポートもしていきます。最初に私の世界でしか使えませんが私ともう一人の神の加護を差し上げます。自分で言うのもなんですが私とその神の加護は結構強力ですよ?」
うーん・・・。ベタだけどこういう報酬は結構なんでもいけるから僕の少年心をワクワクさせるな。しかもチート付きか。
とりあえず、相談の意を込めてもう一度モガミさんの方を見る。
モガミさんはかなり転生する方に傾いているっぽい。見ればわかる。
「・・・ね、ねぇ悟くん。どうする?」
「どうしようかなー。モガミさんはどう思う?」
「私は絶対に行った方がいいと思うよ。だってその世界の人が苦しむんだよ?助けてあげないと!」
「本音は?」
「無双したいです」
大変素直でよろしい。
まぁ僕も結構気持ちが傾いてるから行ってみようかな、異世界。帰れるっぽいし。
「じゃぁ、行ってみますか。異世界」
「!ありがとうございます!それでは早速・・・。ゼアル~でてらっしゃ~い」
「お呼びですかぁ。主様ぁ。あぁ、転生ですねぇ、了解しましたぁ。早速準備しますぅ」
妙に間延びした声と共に現れたのは、一人の天使。エリルさんと違ってなんだか妖艶な雰囲気だ。
全体的に赤っぽい色で統一されたやけに露出の多い服を纏い、顔も若干化粧をしている感じで色気のある顔だ。目は若干垂れているがおっとりとした印象ではなく、どこか猫を思わせる。そして特徴的な声もなんだか扇情的だった。
「もう転生まで時間がないので手短に説明します。なぜ世界が危機に瀕しているのかというと、今の世界には最近発見されたモンスターが急激に増えています。それらを倒していただくために、その手のエキスパートであろうあなた方を呼んだのです」
僕たちがエキスパート?なに?もしかして僕らのオタク趣味のこと?確かにいろんなモンスターとかでるけど・・・。実際に倒せとか無理な気がする。
「詳しいことはこの本にまとめました。あとでそちら側に送りますので参考にしてください」
あぁ、その辞書みたいなやつね。まぁ確かにあれだけ分厚ければ困ることはないかもしれない。
「どうやら準備ができたそうです。それでは健闘を祈ります」
え?もう?はやくな――――――
そうして僕の視界は再度真っ暗になった。
倍ぐらいになった。
最初から書ければいいのに・・・
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