こんなところにも詩があった
ふと思ったことですが、
ある色を修飾する言葉は、
その物の本質でありながら
色に結実する周辺になり得るのでした。
例えば、
睡眠導入剤の白い錠剤の並んでいるシートは紫のメタリック
あるいは、
ありふれている夏の雨音の染み込んでくる薄青さ
これらを並べるともなく並べ、繋げるともなく連ねてみると、
ねえそれとって などといわれないままのパンツはオレンジに白の縞
清涼飲料水などと名乗っている液体を彩るデザインの水色
切れ味の鋭すぎる爪切りの背は銀色で胴体は艶消しの黒
保冷剤に描かれたペンギンのなぜか美しくも見える腹の白さ
こんな感じになってきました。
脈絡はいらないから、その雰囲気だけをもっと取り出してみます。
脚の取れてしまった角材に
目鼻だけを付けた猫の人形は
木目も鮮やかなままに窓辺に置かれていて
日の当たらないこの部屋で
唯一太陽の気配を漂わす
プロバイオティクスと書いてある
整腸剤はちっとも効かなかったのに
それを見ているだけで少し安心してしまう
うす緑の蓋の色
焼き物だって固まって役に立つのに
固まらないままのわたしがいて
急がずに生きていたいのに
人より早くなければ役にたたないから
急ぎ流れるわたしの思考は濁流の水
なるほど。
こんなところにも詩があったのでした。
お読み頂いてありがとうございます。