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my tale  作者: Shiki
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長靴を履いた猫

 私、けーこは只今中世ヨーロッパの街、いえ異世界のメルヘンの街の王城の一室の少女マンガ定番のような、いえトリップ王道のピンクのヒラヒラ天幕付きのキングサイズのベット(このベット高いからベットに上がるのも一苦労)のふかふかピンクの羽布団のような布団掛けの中にうずくまって、自己嫌悪中。


 一晩寝て昨日のことを考えてみたら……とっても恥ずかしい。自分が不愉快だからと言って、他の人に八つ当たりして、良い大人のする行為じゃないよ。早めにドレリーに謝らないと。でも何て言おう?


 それと、侍女達とお医者さんと謝る人がたくさんいる。なんで昨日ぐっすり眠ったの自分。信じられないよ。それよりユートをどうしよう。恥ずかしすぎる。ユートに抱きついて、子供のように泣いてしまった。年下に何をしている、昨日の自分。しばらく反省、このままで居させて下さい。



 昨日は城に着いて後にドレリーにエスコートされ、長い天井の高い迷子になりそうな廊下を歩いて、やっと着いた入った部屋は乙女部屋。


 私達の後に私のたいして物が入っていないバックを丁寧に運んでる従者の人が、ある一定の距離を保ちながら付いて来る。存在を消し、距離を保ち後を付いて来るなんてすごい。なんのプロ?


 忍者、影、やっぱり忍びだよね、え、これもう言った?


 鬱な私もまだ下らない亊を考えていた。ドレリーは怪我をする前も紳士のように振る舞っていたけど、怪我をしてからは私がガラスの人形であるかのように丁寧に接する。


 乙女部屋には、王道のメイド達、いえ侍女達がお辞儀をして迎え入れた。もちろん王道パターンで、一人目は美人で姉御タイプ、二人目はおちょこちょいの癒され可愛いいタイプ。


 きっと年も王道パターンで、私より大人に見えるのに年下だよね、きっと。侍女長はロッテマイヤーさんだね、いつか見てみたい。ドレリーの姿を見た二人は顔を赤くして、ドレリーにエスコートをされて部屋に入った私を見て驚いた顔をした後、ドレリーに説明を促すように見た。


「こちらが、かの『不思議の国のアリス』と『人魚姫』を書かれたけーこ様です。


 そして、この者達がけーこ様の滞在中、身の回りをお世話をするパトリーとテモテシです。何か必要な事がありましたら何でも、こちらの二人に聞いて下さい」


「パトリーです。よろしくお願いします」


 侍女一号の美人で姉御タイプが、落ち着いた声で言ってお辞儀をする。


「テモテシです」


 侍女二号の癒され可愛いタイプが、にっこり微笑んでお辞儀をした。普通だったら好印象を与えるために面接で鍛えられた挨拶をするんだけど、きっと王道パターンではこの侍女達は、貴族出身で行儀見習いで城に奉公している令嬢だと思うと、きちんと挨拶が出来ない。


「あの、私はけーこです。そっそれで私は、孤児院出身の庶民なので、あの身の回りの亊は自分で出来ますので、お二人の手を煩わすことは出来ません」


 なぜかいつもは丁寧語が話すことが難しいのに、今はすんなり出ている。機嫌が悪いと丁寧語がすんなり出るらしい。本当はもっと違う負の感情があったけど、こんな言葉しか出なかった。二人は、不思議そうに私を見ていた。


「けーこ。貴方は王の来賓です。この二人は、貴方を傷付けたりしません。もしそのような亊があるとしたら私が貴方を守ります。どうぞもう一度、私を信じていただけないでしょうか」


 そう言ったドレリーの言葉にも、あまり心が反応しなかった。


「べっべつにドレリーが守るとか、二人が嫌とかじゃなく、本当に自分の亊は自分で出来ます」


 私はドレリーの目を見て話す亊が出来なくて、俯く。

「あのクムリン様。少しよろしいですか」


 パトリーさんがドレリーに聞いてきた。ドレリーがうなずくと二人はお辞儀を私にしてから、ドレリーを連れて部屋を出た。普通の私だったら部屋とかをきょろきょろ見るけど、今の私はその場に佇んでいた。廊下から侍女達の怒った声が聞こえる。


「まあ、親御さんの所からあんな幼い子を離して連れて来て」とか

「誘拐にならないの」「かわいい顔にお怪我をさせて」「クムリン様が付いておきながら」「スクレル子爵の娘なんて、たかが子爵の娘分際で」「貴族の恥さらし」「性悪女」とか、初めはドレリーを責める言葉が多かったけれど、段々とスクレル子爵の娘の悪口大会になり、侍女達は悪口を言い終わった後に、何事もないように部屋に入って来た。


「失礼しました。けーこ様、お疲れのことでしょう。只今温かいお茶でも入れますので、そこに腰かけてお待ち下さい」


 私はドレリーに手を引かれながら、三人がけのソファーに座った。他にも席があるのに、ドレリーが私の隣に座る。


「クムリン様、昼食はお済まされましたか?」


「いやまだです。それとイット様も呼んで頂けませんか?」


「かしこまりました」


 二人は、お辞儀をして部屋を出て行く。ドレリーと私は、何も会話をすることなく座っていた。ユートといる時に二人無言でよく散歩したり、木陰に座って空を見ていた時はその無言の穏やかな時間が好き。でもドレリーと一緒に居る時は落ち着かない。無言なんてありえないのに、この時の私は感覚が麻痺している。


 どれくらい経っただろう。短いのか長いのか分からない。テモテシさんが、カートいっぱいに皿をのせてテーブルの上に置く。ドレリーに促されて私は席に着いた。どうして、この世界の人は大食なんだろう。机の上に並んで居る食事はカラフルで美味しそうだけど、量が多過ぎる。


 よくヨネさんにもっと食べなさいと怒られたのを思い出す。ヨネさんに会いたい。テモテシさんが紅茶を入れてくれている。そしてドレリーが、私の皿を取り半分自分の皿に入れた。


 旅行の時に私が、食事を半分しか出来ず残すことがもったいないと言って無理して食べて吐いた時から、字の読めない私の代わりにメニューを注文した時に半分の量にするように言ってくれる。もしそれでも量が多い時は、こうして自分の皿に入れた。


 こっちの世界に来て自分で野菜とか育て、電子コンロとか無く釜戸で料理をする人の手間を掛けているのを知っているので、無闇に食事を残す事が出来無くなった。そんなドレリーの行動を見たテモシテさんがびっくりして聞く。


「失礼しました。クムリン様、量が少ないでしたか?」


「いや、これで良いです。只けーこ様には、この量は多過ぎの様です。けーこ様は少食でたくさん食べると体を壊すので、これからはこの半分でお願いします」


 ドレリーの心使いは、いつもうれしくなる。あまり食欲が無かったけれど、全部食べた。もちろんいつも食事の時にいろいろ会話が絶えないのに、今は無言でナイフとフォークが皿に当たる音しか聞こえない。


「失礼します。イット様をお連れしました」


 パトリーさんが、白髪で目が薄緑のおじいさんを連れて来た。


「はじめまして、可愛いお嬢さん。ほっほ、黒の色持ちかい。長生きをするもんだね。これで色持ちの者に出会ったのは二回目じゃ。黒色と言うのも珍しいの。本当に綺麗なもんじゃ。


 どれどれ、額の怪我を見せておくれ。おうそうじゃ、自己紹介がまだだったの。この城で医者をしておるイットじゃ。こんな可愛い子にイットおじいちゃんと呼んでくれるとうれしいの。よろしくの。それ、ベットに座って傷を見せておくれ」


 ドレリーの手を借りてベットに座った。ベット、高すぎ。この世界の人って皆背が高すぎ。あのソニが小さい方って言っていた。私はソニより十センチ以上も小さいのに子供サイズ? 私はイットさんの傷を見てもらい、新しい包帯を巻いてもらう。


「傷は良い具合に塞いでいるけど、少し貧血ぎみなのでよく休養するのじゃよ。傷も後は残らないだろう。ドレリー、そなたが付いといてこんな可愛い顔に傷を付けるなんて、何をしているんだ。


 後で王を交えて話し合うから覚悟しておけ。どれどれ次の患者が待っているから、退散するとしよかの。騎士見習いは、傷か耐えないからの。こんな老いぼれをあんな遠い所によく行かせておって。

 それじゃ可愛いお嬢さん、今度このジイジにも『人魚姫』の話を聞かせてくれ」


「あ、あの、傷の手当てありがとうございました。あの、あまり時間を取りませんので、それでお礼に『長靴を履いた猫』の話しても良いですか?」


 イットおじいさんが、うれしそうな顔をして許可したので、『長靴を履いた猫』の話をした。私はこのイットおじいさんが好きだ。会ってすぐに好きな人と感じる人がいる。もちろん嫌いな人と感じることもある。話が終わった後、私は高いベットから滑り落ちながら降りてきちんとお礼をした。


「素晴らしい。長生きするもんじゃの。こんなじいじの為に。可愛いお嬢ちゃん、じいじの権力を全て使ってでもお嬢ちゃんを守るからの」


 イットおじいさんは、涙脆いのかもしれない。


「あのー。えっと、今から騎士見習いの所に行くのでしたら、えっと私も付いて行って良いですか。えとね。ユートリックという名前で、同じ孤児院出身の子がいて、会いに行きたいです」


「ほうほう、あのユートリックと同じ孤児院出身かの。それじゃ、マイ町出身だったら町医者のヨナを知っておろうか。ヨナとわしゃは、同期でなあれは、わしに全てを押し付けて一人で田舎に勝手に引退しおっての。


 この前、何年ぶりに連絡が在ったと思ったらコナットという青年をわしの弟子に押し付けて来た。コナットは、真面目で優秀なんじゃがアレとおると女共が五月蝿くてかなわん。まあ、今は医学学校にいるから良いが休みの時は、たまらんの」


 恐ろろしべし、爽やか青年コナットさん。絶対、会いませんように。綺麗な人は、ドレリーでいっぱい。


「うん。ヨナおじいちゃんには、盗賊に襲われて、怪我をした時にお世話になりました。それで、コナットさんは、会ったことがありません」


 私がそう言うと、イットさんと侍女さん達が何か言いいたそうな顔をする。


「盗賊。ドレリー、後で詳しく報告を聞こうか。そうじゃの、ユートリックにはこっちに行くように伝えとくの。さあさあ、はよベットに横にならんかいの」


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