表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
my tale  作者: Shiki
61/62

眠り姫

 特に異世界へ渡って、その後また違う異世界へ渡り前の世界で授かった力を使い英雄パターン。本人は一生懸命地球に戻ろうとして奮闘。読んでいた私は一体何個あるか分からない異世界の中でそんな地球に戻る、ましてはその時代の日本設定だったら、それこそ読者からクレームいっぱいなご都合主義になってしまうぞーと思いながら、読んでいてつかれたけど、ご都合主義になるかならないか気になったので読み続けた。


 一体どれだけの確率で日本へ戻れるのだろうと思い読み続けたのに、三度目の異世界のチート英雄の所で更新が終わった。これぞネット小説! タダで読んでいるのは分かっているけど、どうしてどうして終わらせてくれない! この苦しみを私は一体どこへ訴えればいいのですか?と、二週間更新がされず我慢して後、二週間待った。そして、さらに一ヶ月が経って……もう諦めた時に更新され、「うっそー」と喜んだらまた前例のようなことになって……。もう読む気力がなくなった。また脱線している。!?


「お前に付き合っていたら、本当にこっちが浦島太郎になって、老けてしまう。初めは選択をあげようと思ったけど、刺されて死んで二週間後に戻るで決まり。それが私の中で一番面白展開。王道展開、いや邪道展開? 


 まあ、どっちにしろあのままお前は昏睡状態だしな。って、さっさと映画鑑賞するよ。今度はチーズ味のポップコーンにしよう。お前もいる?」


 死んでポップコーンを食べる私……。いいのだろうか? って、こんなノリの異世界設定ばかりあるから、自殺をした後に楽しい異世界トリップを信じてしまう若い子達が増えるのでは? と不安になる。って、私も少し大人らしく行動出来ただろうか。 


「い、いらない」


 あれー、喋った。


「そ、では続き。お前の口を開いたままのマヌケ顔も飽きたしね」


 や、やっぽり、わざとあの場面で停止したのね。く、く、くやしー。


 「くやしー」とディランドへ文句を言いたくなるけど動き出すスクリーンに目が言ってしまった。他の角度から見る自分と言うものは不思議。私はあんな声をしていたんだと思った。自分の声って不思議。話して聞くのと録音して聞くのは丸っきり違う。スクリーンに映っている私は映画女優のようだ。


 確かにドレスを着て中世設定の美形人種の中にいる東洋人の私は異様。異様だけど、なぜかあの中にあの空気にきちんと染まっている。私を自分の後ろに匿って王女と対決していたドレリーの顔を見た。あの時、私は彼の顔を見れなかったから、今こうして見るとドレリーはやっぱり真剣に私を守ろうとしていたことが分かる。


 そんな真剣なドレリーの顔を見て、胸が苦しくなって目元に涙が浮かぶ。ドレリーのアメジストの目はいろんな感情によってたくさんの色に変わる。最後に私を見ていたあの目が、脳裏に浮かんだ。誰も私の後ろから忍び寄るスクレル子爵の娘に気付かない。


「いやー、何度見てもこのシーンはいいねー。なんと言っても在り来りな王道展開! 名場面! このモブ最高! 存在感なんて有りません!のモブ。でも、実際は主人公になりたいけどなれない可哀想なモブ。最後には悲劇のヒロインにもなれずに忘れ去られるモブ。いやー、こう言う可哀相な女性って結構多いんだよね。お前もきっとあのまま地球にいたら、きっとこんなモブ人生をそのまま過ごしていたよ。いいように主人公女性、ヒロインから使われる人生。そんな役をしないといけけないモブ」


 いい、モブでもいい。平凡人生万歳だけど、使われポイ捨てモブはい嫌かな? でも、あのまま地球にいたら、友人A子に使われポイ捨てモブ役をしないといけない人生が待っていたかも……。お、恐ろしい。なんかそんな人生が見えるからもっと恐ろしくなる。


「い、嫌だ! け、けーこ、嫌だ! だ、誰かイット様を呼べー。よんで、くれ。け、けーこ、大丈夫だ。お願いだから死ぬな……」


 私を抱いて涙を流すドレリー。銀色の流れ髪がキラキラしている。


「ど、どれりー。あいしてる……」


 シーンとして、たくさんの幽霊が横切っただろう室内に響き渡る私の掠れた声。う~ん、我ながら「いい声」


「けーこ。けーこ、僕も君を愛している。だから、逝くな。お願いだ……」


 普通ならぎゃーと言って喜ぶ場面なんだけど、見ていて……号泣してしまう。


「いやだ、けーこ、愛している。あいしているー、で、ディランド神。僕の命を代わりに持っていってくれよ。お、お願いだ。お願いします」


 もう、ダメ。私は、そんなドレリーを見ていることが出来ずに両手で目を抑えた。私はどうしてもドレリーといたい。今すぐに泣いている彼に会いたい……。


「おい、ここからがいい場面なんだぞ」


 くっ、もっと哀愁に酔っていたかったのに、ディランドによってそれも出来ない。


 私が刺された後の光景。見なかったらよかったと後悔してしまった……。


「ドレリー、お主が短剣を一気に抜くのじゃ。ワシが布を当てて血を止める」


 額に汗を浮かべたイットおじいさんがドレリーに声をかけ、ドレリーが頷き私の胸にある短剣を抜いた。あのー、もう息をしてない死んだ人間を今から救助しても意味ないのでは……? と見ていて思う。

「まあ、そうだけど、お前はまだ死んでいない」

ぎょおー、ま、まじでー?

すっかり隣にいるディランドの存在を忘れていた。そう、ディランド隣にいたね。って、なんで死んでない? じゃないと、どうして私がここにいるの?


「おい。お前仮にも童話好きなんだろ。だったらすぐに分かるだろ。『眠り姫』と同じパターン。同じパターンなのは眠っていると言うぐらいだけどね。絶対に王子様のキスで起きると言う三文芝居展開はないから。


 そんなありきたり展開なんて面白くない。って、ことでお前は仮死状態。半分生きている。精神離脱。だから、お前と私は『狭間』にいる。くれぐれも死んで逝くと言う『あの世』じゃないから」


 そ、そうなんだ。って、仮死状態だったら、トイレどうなるの? が~ん、おねしょなんてしないよね!? 確か私、会場に行く前にトイレに行ったしね。私はチラリとディランドを見る。


「ぎゃーはっはっはー、やっぱお前、最高ー。細か過ぎ。そんなマイナーなことを心配するヒロインっていないよ。ぎゃーはっっはっはー」


 マイナーなことって、これってかなり重要だよね。本当に小説や漫画を読んでいて、下事情って気になるのにそんなことを書いている小説はあいにくない。私にとって、とっても知りたい要素なんだけど。それより私は主人公なんだ、ヒロインなんだ。


「っはあー、笑った。まあ、お前は今だけヒロインだな。私に感謝だよ。まあ、一応今後のお前の立場のためにおねしょは勘弁してあげる。あの刺された状態でお前の体は時が止まっているって言う訳だ。感謝しな」


 そ、そうなんだ。よかった。おねしょ展開が免れてよかった。いやー、おしめとかつけられたら絶対の生き返りたくないよね。


「まあ喜ぶのは早いけど、続きを観るぞ」


 ドレリーが左腕で私の体を抱き右手で剣を抜いた。血が「ブッシュー」って言う展開は、こなかった。


「ぬ、抜けない!」


 ドレリーがまた力を込めて剣を抜こうとするが剣はビクともしない。


「そ、そんな筈はない。ワシがやる」


 イットおじいさんが剣を抜こうとしたが剣はビクとも動かない。


「ぬ、抜けない……。そ、そんなバカな……」


 私達の周りにいる人達が騒ぎはじめる。


「ど、どけ。ワシが抜く!」


 王座から王様が人を分けて私の横に膝をついて剣に手をかけた。


「ぬ、抜けない。そ、そんなバカな……」


 やっぱりおじと甥の関係の王様。イットおじさんと同じこ台詞を言っている。周りにいる人達の騒ぎ声が大きくなる。私達の近くにはカルメン、ジョウイ、サイラックさんがいる。う~ん、やっぱりいい男が三人。絵になる。でも、三人の顔は他の人と違うのはなぜなんだろう。それより私はあのまま胸に剣が刺さったままなのかな?



「だから言っただろう。あの瞬間で時を止めた状態って言っただろう」


 そ、そうだった。そうだったけど、なんか違くない? さっき喜んだ私はなに?


「ディランド様、抜いて下さい」


 私は声を出してディランドに頼んだら、ディランドがにやりと私を見て笑った。


「やっぱり夫婦。一緒だね。これこそ夫婦の神秘。まあ、焦らず続きを観よう」


 夫婦の神秘?


「オー、偉大なるディランド神。これは一体どう言うことですか? どうぞけーこお戻しになって下さい。この剣はどうして抜けないのですか?」


 さっきまでザワついていた室内が、ドレリーの叫びによって沈み返った。ドレリーってなんて美声なんだろう。と、うっとりしてみる。ドレリーが叫んだ後、室内は今だにシーンとしている。おばけ、通ったよね? 


 私は通ってないからね! 私はまだおばけじゃないし、おばけじゃないよね? とディランドに聞いたら、「こいつバカ」と言う顔で頷いた。ディランドが一言も話してないけど今のは分かったぞ。私にも心を読むエスパーの力が授かった?なんては自惚れないぞー。


「うん、自惚れはよくないな」


 ディランドがぽつりと言って、画面を観る。


「嘘だろ! 空から氷が降ってくるー。建物の中へ逃げるんだー」


「助けてー、痛い」


 室内は静かなのに外から人々の叫び声と「ぐおー、ぐおー」と言う音がする。その音で兵士や騎士達が急いで外へ行き何人かの人達は窓際へ行って外を見た。


「し、信じられない」


「氷が降ってくるなんて聞いたことがないぞ」


「北には雪が降るが氷が降ってくるなんてことは聞いたことがない……そ、それもあんなに大きな氷が……」


 謁見室の入り口から一人の兵士が王様の横に行き跪いて手の平にある氷を渡した。


「こ、これです!」


「ご苦労」


 王様はまだ私の横で跪いた状態で氷を受け取りじっくり見て、それを隣にいるイットおじいさんに渡した。イットおじさんもため息をした後に、サイラックさんに渡し、その氷は次々と人へ渡されていった。きっとその氷はすぐに解けてなくなるよ。


「これはどう言うことじゃ……」


 外の悲鳴は終わったけど、怪我をした人がいるらしく騒がしい。でも室内は、また「しーん」としていた。もちろん、私のことは忘れ去られてない。ありがとうよ、ドレリー。ドレリーがまだ私の胸に刺さっている剣を抜こうとしていた。彼にとって外の異変もどうでもいいみたい。


「ディランド神。どうぞけーこを救って下さい」


 またドレリーが叫ぶ。


「きゃー」

「ぎゃー」


 あれは侍女達の声も含んでいると思うけど、室内にいる人達の声だよ。


「見えません」


「ど、どうして昼間なのに暗くなるんだー」


 人々の混乱の声と泣き叫ぶ声。


「誰か明かりを」


 その暗闇は室内だけじゃなかった。空が夜のように一瞬で暗くなる。ううん、普通の夜のように月があり少し明るいわけじゃなく、真っ暗だった。月も星も、電気のないこの世界にとって只の暗闇。人々が恐怖で泣き叫ぶ理由が分かる。


「け、けーこー。ど、どうして、け、剣が光っているんだ」


 私の胸に刺さっていた剣が蛍光灯のように初めは鈍く光、その後に明るく室内を照らした。どうして室内が照らさ

れているかって……はあ、私もディランドが面白好きと知っていたけど、まさかここまですると思わなかったよ。


「な、なんでこんなことするの!?」


 私は怒りで女を捨ててディランドを殴ろうとしたけど、空振り。もう一回試みるけど、空振りした。


「もう、続き観るぞ」

 ここで文句を言いたいけど、続きが気になるのでプルプルしながらスクリーンを観る。私の体が徐々に空中に登って行く。アニメ映画で見たようなシーン、ってあれは確かヒロインが空からゆっくりと落ちてくるシーンだったかな。確か胸のペンダントか飛行石と言うものだったかな? じゃあ、私の場合は胸の剣が飛行剣になるのだろうか?


 でも空に浮かぶ? 胸に刺さった剣が渡しを引っ張って上昇? マヌケだー。でも、皆は始めて体験する出来事でそんなマヌケな状態と気付いてないようでほっとする。


『私がこの世を思って送った者に何をした』


 不思議な声が響き渡った。


「きゃー、かっこいい演出でしょう。いかにも尊い神様のイメージの声なんでーす。この声はこの世界の全ての人が聞いていまーす。もちろん、この声に恐怖作用を含んだので皆が偉大なディランド神と気付くカラクリになっていまーす」


 隣で頬を赤らめた熟女ディランドが両手を頬に当ててきゃっきゃっしている。まさかそんなことまでするなんて……で、でもディランドだし……。


「申し訳ありません」


 ジョウイが光っている私の下へ来て床に土下座して平謝りをした。それに続いて、周りの人々が同じ体制をとった。土下座だー。THE 日本人だー。な、なんと、王様も同じ恰好をしているぞ!


『私の愛した者にした仕打ち、その償いは受けてもらう。これ後、三日間世界から光を取り除く。お前達がこの世の光を苦しめたように、この世から光を奪う。


 その間ただ私と愛し子の許しをこうむれ。もしみんなの心が一つで許しを聞き入れたら、この世の光りを戻してもいい。もし光りが戻らなかったら、この世は終わりと言うことだ。我が愛し子が戻るも戻らないのもみんなしだい』


 ディランドの話が終わると光っている剣がゆっくり私の胸から離れていった。私の体はなぜか光ったまま。光ったまま私は落ちていく。いやー、ゆっくりでよかった。意識なくても重力落下現象なんてイヤだしね。いつまで私は光っているのだろう?


「もちろんお前が起きるまで」


 がーん。丁寧な回答ありがとうよ、ディランドー。


「け、けーこ」


 ドレリーが私の体をとても壊れ物を扱うように抱き、私の唇にキスをした。キスをされた私はもちろん起きない。おい、せっかくなんだから『眠り姫』設定で今起きるようにしようよ。もちろんディランドは私の意見を無視してスクリーンを観ている。私から離れた胸の剣は光りながらゆっくりとジョウイの前に行き浮かんでいる。驚いたジョウイが、


「こ、これをわたくしへ預けて下さるのですか?」


 裏返った声でジョウイが聞いた。


「お前の私への信仰を知っている。今後このことを正しくこの世に伝えよ。そして、私の愛し子を守れ」


「は、は、はい。有難き幸せでございます。この命にかけ神子様をお守りします。ど、どうぞしもべの祈りをお聞きし、怒りを収めて下さい。そ、そして、神子様をしもべの元へお遣い下さいませ」


 ジョウイが平服して言った。周りも同じように頭を床につける。って、どうして私がディランドの愛し子なの?って私のこと好きなの?


「もちろん下僕とて、こんな面白いおもちゃって滅多に手に入らないから愛しているよ」


 そんな愛はいりません……。って、それより重大なことに気付いた!

「か、神子って、まさか私じゃないよね!?」


 私は右手に拳を作って聞いた。


(『けーこ物語』


 私の童話。そんな童話はいらないよ。作者様を恨みます。どうして想像力の乏しいこの世界に、私の童話ができるのですか?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ