幕間(うれしい事)と(嫌な事)たち
僕の名前は、カルメン。でも本当の名前は「カラクッチ=スイ」スイ国の第八王子。
普通は第八王子なんてあまり重要な立ち場でなく忘れさられるのが普通だが、僕の場合は違った。僕の場合は兄王と同じ前王妃を母親に持っている。
だから小さい頃から、何度暗殺されかかったか分からない。唯一僕がこうして生きていられるのは、僕が持っている記憶のお陰。後宮で住んでいた時、丁度五歳になった時に父王の側室の一人に階段の上から押されて、落ちて頭を打つ。運よく頭を打って出血したけど、命には別状がなかった。
何日間か熱にうなされたけど、その後は何も後遺症はない。ただ誰にも言っていないけど、熱にうなされた時に僕はここでない所にいた。みんな黒色の色持ちばかりの世界。茶色などの色を持つ者達もいる。僕は五歳の男の子。
家は使用人のような部屋で小さい所だったけど、お風呂やトイレとかとっても便利な物がたくさんある世界。この世界はテレビと言う物で何でも知ることができる。その世界は「地球」と言う名前。僕が住んでいる所は「日本」と言う名前。
地球の生活は安全で楽しい。驚いたことは、日本と言う国には王様がいるがみんな平等。小さい時から学校に行き、皆読み書きを習う。僕はスイ国のことを知らなかったけど、こうして年月が経ったから、スイ国が貧しい理由を悟る。この世界の歴史書にはスイ国で今起きていること同じことが書かれている記事がたくさんあった。
僕が中学校と言う所を卒業した時に他国で学ぶことを両親に薦めらた。他の国を見るいい機会だと思った。他国はこの日本と違って、スイ国の人と似た感じの人達がたくさんいた。地球の生活はこの高校生と言う時までだった。
でも熱が冷め目が覚めてからも、この男の子の夢を見る。夢か現実化分からない。僕はこの男の子の記憶を持っている。この現象を日本では異世界憑依と言っている。この経験によって、五才児だった僕は後宮で生き残ることができた。
僕と同じ王妃の血を受け継ぐ兄は第三王子だ。僕にとって、この第三王子だけが兄だった。他の兄弟姉妹が同じ血が流れているなんて考えたくもない。特に第八王女。こいつは母親にそっくりで毒婦。こいつの母親のせいで父王が愚王になってしまったのか。そして今も直、毒婦の親族でスイ国は国が偏っている。
今回毒婦のカイライ国への訪問は、兄王に丁度都合のよいもの。毒婦のいない間に、一斉に掃除をするつもりだ。僕はこの国にいてこの毒婦の監視役。本当はもう一つの任務もある。
それはけーこちゃんについての報告。兄王にしては当たり前の要求だ。国の経済が傾いている中、彼女は金のなる木。僕もあの男の子の記憶を元にこの世界を変えることが出来るけれど、決してそれはしない。
ただでさえこの知識によって脅威に見られた。今まで仲良くしている兄王にも敵に見られたくない。僕の夢は、僕の生まれたスイ国があの日本のように平和な国になって欲しいだけだ。
けーこちゃんが日本人と知って、懐かしい気持ちが溢れる。けーこちゃんはディランド神によってトリップをした。日本では異世界トリップを題材にした物語がたくさんあり僕も何冊か読んだ。だからけーこちゃんのことはすんなり受け入れられた。
そしてこのように無傷で生きていれるのは、ディランド神のご加護があるから。自国のスイが大切だけど神子を傷つける行為はできない。彼女はディランド神からこの世界へ落とされた「神の愛し子」この世界の者として、神子を守らなければ。
僕はいつもの通りにカイライ国の王都の教会に足を運ぶ。この教会はディランド神を敬う者達として筆頭教会だ。やはりカイライ国は国力が一番の国だから自然とそうなる。歴史も一番古く、この世界の創世記まであるらしい。僕はこの教会で神官長補佐のジョウイ神官へ会いに行く。
ジョウイは、実は僕の一番上の兄。兄王の上の兄。でもジョウイが王子とは一部の者達しか知らない事実だ。現に毒婦は知らない。前王が父が後宮へ女へ狂ったのもこのジョウイの母が関わっている。
ジョウイの母は私と兄王の母、王妃に付き添って来た侍女だ。身分は平民で、母の乳母の姪で小さい時から母のコンパニオンとして育った。母はスイ国の侯爵家の娘で王の嫁には小さい頃から決まっていた。父王は嫁いで来た母ではなくそのジョウイの母を好きになり愛した。その結果、ジョウイが生まれた。
母はジョウイの母のことが好きだったので、王様とジョウイの母を祝福し子供が生まれることを楽しみにしていた。でも欲深い貴族達はジョウイの母の後宮入りを認める代わりに、他の令嬢達の入団を要求する。
後宮は嫉妬と騙し合いと毒の毒婦達の住処となる。母はどうにかして彼の母親の出産まで守り、無事に父王は第一子のジョウイのことを喜び跡取りにしたかった。そのことがさらに周りの貴族達がジョウイの暗殺を次々送る結果となる。ジョウイの母は出産後の疲れであまり注意力が少なくなっている時に毒殺されて、命を落とした。父は彼のことを心配してカイライ国の王様へジョウイのことを頼む。
この時の父王はまだ正常だった。愛する者を失った父がおかしくなるのには時間がかからない。唯一よかったことは、王妃が王子を生んだこと。これで母が権力を持つことが出来て後宮を抑えることが出来たが、あの毒婦はとても母でも難しくスイ国の腐敗は早くなった。
カイライ国の王様は王位を継ぐことの難しい王子の将来を心配して、王子と言うことを隠して育てることにする。ジョウイは物心がついた頃に彼の生い立ちを聞いた。神官になることを選び、今は次の神官長になる者と言われる人。
そんなジョウイはやはり荒れて行くスイ国のことを気に留めてこうして兄王を助けている。ジョウイと兄王は僕が唯一心を許せる家族。
「カルメン。またせたな」
ジョウイは決して僕の本当の名前を呼ばない。お互い、仮名を使っている。ジョウイの本名を僕も呼ぶことはないだろう。
「これを黒姫から預かりました」
ジョウイが紙切れを渡す。手紙は二つ折りをしているので、中が丸見えだ。彼も見たに違いないが、内容を理解出来ない。けーこちゃんの丸帯びた震えた筆跡を読む。
「カルメンには、その暗号を特明かすことができるのか?」
ジョウイが興味深そうに聞いてきた。ジョウイは元々学ぶことが好きで、こうして教会で創世記などを勉強することを好んでいる。だから私がけーこちゃんのことを話した時に童話の創作者と言うことで興味を持ったに違いない。
「ああ」
僕は大きなため息を吐いて、その走り書きをもう一度読み返す。やっぱり何度も目を通しても同じ内容だった。
「カルメン。スイ国の王女とクソッテ神官が密会しています。内容をクローゼットに隠れている時に聞いた。カイライ国の孤児院の子供達の人身売買をしている。
クソッテ神官が連絡係と資金運搬をしていて、姫の家族が国で競売にかけている。う。これは王族が国自体がしているのですか。でも私はどうしてもカルメンがそんなことをしていると信じられない。私が他の人にこのことを言うまでに、会って話がしたい。
王女はドレリーと結婚をするために私を消すみたい。クソッテ神官はもう何か手はずを整えたと王女に言った。どうか早く私に会いに来て下さい。けいこ」
震えた文字の手紙。ジョウイが険しい意顔で拳を作って体を震わせている。
僕の国が。僕の血縁関係のある者が。こんな罪深いことをしていたなんて。もしカイライ国王が知ったら、我が国はどうなるだろう。秘密にこのことを解決したいが、もうどうしようもない所まで来てしまった。
今すぐに人身売買を止めるには、カイライ国王の力が必要だ。震える声でジョウイが聞く。
「それは本当か?」
「ああ」
ジョウイが信じたくない理由も分かる。クソッテ神官とは気が合わないが、同じ神官。まさか神官がこのように神を暴虐行為をするとは考えられないだろう。
ああ、けーこちゃん。僕はたまにしか君に会えないから、会った時はけーこちゃんがうれしくなる事だけを運びたかったな。一緒に日本のことを話して笑いたいと思っていた。それなのに僕野家族のせいでけーこちゃんを辛い目に合わせた。
【(うれしい事)と(嫌な事)たち
この世界で地球の記憶を持っている人は、けーこちゃんと僕だけ。だからどんなことがあっても守りたいと思った。
けーこちゃんがうれしそうにこの世界で生きてくれたらそれでよかった。これからは、僕がアメージンググレースの歌と一緒にうれしい事を運ぶね】