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my tale  作者: Shiki
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リジーナとネコの家

 私の名前は『ケーコ=クムリン=ミトレ公爵婦人』。


 最近ドレリーがあまり家に帰ってこない。王女の護衛で忙しい。お城に行った時もドレリーは王女に付き添っているので、話をする機会がない。


 今日はお城の図書館へ行く予定。字が読めないけれど、魔女について調べようと思う。今日の付き添いは、リュウーヒの所の「イケメン眼鏡」。


 リュウーヒはお城が嫌いで、サイラックさんは最近新聞と童話の出版で忙しい。


 「イケメン眼鏡」はお城の図書館に行きたかったらしい。図書館に着いた途端、「けーこさまの護衛は必要ありませんね。お城は安全です」と言って本を探しに行った。


 私は司書官さんに手伝ってもらって本を探す。その時に、外から黄色い雄叫びが聞こえる。興味深々な野次馬の私は、窓から雄叫びの元凶を探す。なぜか白髭たっぷりの司書官さんも一緒に窓から顔を出す。


「きゃー。コナット様~」


(コナット!?)


 二階にある図書室のこの窓の真下にいる人達。あのハデハデ女の娘達に囲まれている金髪の頭の人が、あのコナット?


「みな様。私はミトレ公爵婦人を探しておりますので、道を開けて下さい」


 ミトレ公爵婦人って、私?


「コナット様は、どうしてけーこちゃんに会うんですか?」


 えっ、この声ってトリーの親友の侯爵令嬢のメルットちゃん?


「ミトレ公爵婦人とお知り合いですか?」


 コナットがメルットちゃんに聞いたら、「はっはい! 親友です!」メルットちゃんの大きな声が聞こえる。いつ親友になったの。私はメルットちゃんを見ていたら、メルットちゃんが顔を上げて私と目が合った?


「っあ! けーこちゃん、発見。図書館にいます!」


 バレた。私は急いで体ごとしゃがむ。コナットの顔を見てない。でも、黄色い雄叫びが遠ざかって行く。でも、段々と図書館の入り口から聞こえてくる。隣にいる司書官の腕を無理やり引っ張り、彼の使っているテーブルに行く。


 私は状況を掴めていない司書官に決して私がここにいることをバラさないで、と公爵婦人権力で命令した。そしてテーブルの下に隠れる。司書官さんが椅子に座るけど、膝がガクガク揺れている。すぐに雄叫びと共にコネットが司書官さんの所に来た。


「すみませんが、ミトレ公爵婦人がどこにいるか教えて下さい」


 これがコナットの声ね。ちゃんと覚えとこう。でも顔は知らないままでいいよね。


「わ、私は本を読んでいたので知りましぇ~ん!」


 しぇ~ん? 司書官の膝のガクガクが増える。


「そうですか。それでは、館内を少し探させて下さいね」


 また黄色い雄叫びと共にコナットがいなくなったので、私は急いでテーブルから出て図書館から離れる。庭のベンチで座って、鳥を見ていると黄色い雄叫びが近付いてくるので私は急いで食堂に行った。


 食堂でお茶を飲んでいると、また雄叫びが聞こえる。私は急いであっついお茶を飲みほして、逃げる。ちょっと舌を火傷したじゃない。どこに行こうか迷って廊下を彷徨っていると、なんと前方から雄叫びが聞こえてくる。今立っている部屋に入る。中に誰もいなくてよかった。扉に耳をつけて、外の様子を聞く。


「それでは、この部屋でお話をしましょう。王女様」


「クソッテ神官。早く要件を済ませて下さい。護衛と侍女達に付いて来るのを拒むのに、わたくしがどんなに苦労したか」


「姫。私がどれほど姫の母上や母上の実家のために苦労をしているか知っているのなら、あなたの苦労なんて対したことありません」


 なんかクソッテ神官の方が、上の感じがする。


「そ、それでしたら、わたくしも対価を払っておるではないか!?」


「姫だって、私に触られて気持ちいい思いをなされているではありませんか?」


「クソッテ神官。確かに孤児を売ったりその資金の運びを手伝いをして下さり感謝してますが、それなりの報酬は母上がしているではありませんか?」


 王女が孤児を売ると言った。この前、王様が言っていた人身売買。カムリットが孤児院で子供が売られるって言っていた、あのこと。震える体を抱く。


「姫。姫はミトレ公爵との結婚を望んでおられるのでしょう? 

 第一婦人が目障り。私がすでに消す手配をしています。体を触らせて下さいね。姫ももう濡れてきておられるでしょう。ご自分でするより、他人に触られる方がよろしいでしょう?」


「そ、そうね。本当に近いうちにあの女を、消してくれるんでしょうね?」


「ええ、とても近いうちに」


 二人は私が消えると言う。一体どうして? 

 徐々に体が震える。


「分かったわ。でも、決して入れてはなりませんよ。処女膜は結婚までなくてはいけませんからね」


「もちろんです。それでは、味見をさせて下さいな」



「あっ、あっ、あ~ん、き、きもちい~」


 私はなにも聞きたくなくて耳を塞いだ。


(ドレリー、ドレリー助けて! お願い助けて。)


 本当にどれだけ時間がたったのか分からない。二人は部屋にいない。私がとクローゼットから出ると、部屋にはいやな生臭い匂いがする。


 部屋をすぐに立ち去りたかったけど、机の上にあるノートを見つけて足を止めた。震える手で、カルメンに手紙を日本語で書いた。久しぶりに書いた日本語は滅茶苦茶。


 手紙を持ってジョウイのいる教会に向かう。城内に本部の教会があり、ジョウイがそこにいることにディランドに感謝する。でも教会にはクソッテ神官もいるかもしれないので、人目につかないように、注意しながら歩く。


 教会は、思ったほど簡単にジョウイに会えた。手紙を無事に渡せほっとする。顔色の悪い私をジョウイが、心配して聞く。そしてお付きについて聞かれ、私は咄嗟に外にいると嘘をついた。


 ジョウイにごまかしをして、教会から出た。教会を離れて、イケメン眼鏡の待っている図書館に行く。私は周りに注意をして歩く。建物の角で、大きな人に前を塞がれて立ち止まった。


「あっ、あの。済みません」


 その人を避けて通ろうと思って右側に動いたら、その人も私と同じ方向に移動した。


「冷たいな~。お兄ちゃんに会って、挨拶もなし?」


「お、お兄ちゃん?」


「そっ。お前の兄。アットの息子」


 私は驚いて目をいっぱいに開いた。息子は養子と言っていたから、似ていないんだ。


「あっ、初めまして」


 私はその人に頭を下げた。下を向いた時に覆い被ってきて、口と鼻に布を被された。布から薬の匂いがする。抵抗しようとするけど、頭が朦朧として力が沸かない。


「お前が養子になって、全財産を受け取るのが悪い」


 私は意識が遠のく中で、その人の言葉を聞いた。


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