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my tale  作者: Shiki
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美女と野獣


 私はたくさんあるドレスの中から、動き易い若草色のドレスを選ぶ。髪も他の貴婦人のように使用人に結ってもらうけど、私の髪はストレートなので難しいみたい。準備ができた頃にサイラックさんが来た。二人で馬車に乗ってお城に行く。馬車の中で、新聞の話をした。


 あれからかなりの部刊を発行している。私の小話も数が増えてきて、そろそろ一冊の本にすることになっている。もう私の収入はどうなっているか分からず、ドレリーにあげると言ったけど断られた。結局はサイラックさんに全ての管理をお願いしている。本の収入を、全て国にある孤児院で使うように頼む。


 この前の謁見の時は、王様の計らいで椅子に座ったけど今は立っている。これはかなり大変。正装で長い話を聞いていないといけないのは、朝礼でハゲ校長の長ったらしい話を聞いているよりキツい。どうして下級の貴族の末席の私までここに呼ばれたのだろう。隣にいるサイラックさんは、真剣に王様の話を聞いてメモっている。ドレリーが、王様の後ろにいない。


 ドレリーを探していたら、王様の話が途切れて、あの声のいい従者が誰かのご登場をアナンスした。スイ国の第九番目の王女様がこの国に留学してきたらしい。顔は前の人達が背が高いので見えない。まあ、王女なんて関係ないから知らなくてもいい。サイラックが言った。


「けーこさん。クムリン殿がスイ国王女付きになるそうですよ」


「そうなんだー」


 近衛兵の仕事は大変。私が答えるとサイラックさんが私の顔をまじまじと見る。っ


「けーこさんは、まだ分からないのでしょうね。このまま私の予感が当たってなければいいのですが……」


 サイラックさんが難しい顔をしたと思ったら、また王様の方を見た。


 今日この会場に来た時、ドレリーのお母様とお兄様夫婦に挨拶をしていたら、あのドレリーのキモい従兄弟と鼻デカの奥さんと二人のお母様と言う伯爵婦人に会った。もう会った時から、ドレリーのお母様に嫌味のオンパレード。


 顔も「どこが姉妹?」と思うくらい平凡顔。ちょっとキモい感じのデブ女。まあ半分しか血が一緒じゃないにしても、不思議。嫌味に私が結婚三カ月しているのに妊娠していないのは、幼児体系で子供ができないと言うことだって。どうして結婚三カ月して妊娠をしていなかったら『石女』のレッテルを貼られないといけないの?


 そして他の女性軍に嫌味を言われたと思ったら、私が横にいるのにドレリーにアピールをしてくる。この女性軍、技がだんだんすごくなっていく。もちろん私が一人になる隙をついてくる。でも一番許せないのは、結婚して一年目に子供が出来ないと第二婦人を持っていいと言うヤツ。ついでにバレンシアは妊娠六ヶ月目だって。すごく自慢話。


「けーこさん。王様が呼んでおられます」


 隣のサイラックさんが私の腕にそっと手を添えて、私に言った。


「王様がクムリン夫婦は前にと。早く御前に行かれた方がよろしいですよ。私はお付き添えが出来ません。あちらでクムリン殿が待っておりますから、大丈夫です」


 どうして私は謁見の度に羞恥プレーを強制されるのだろう?


 チキンな私は競歩でいそいそとドレリーの横に行く。もう転ばないように足元ばっかり見ていたら、あっと言う間にドレリーにバッタリ。ドレリーが私の腕を捕まえなかったら、そのまま王様の所に突入する所だった。ドレリーが膝を就いて騎士の礼をするのいで、私も遅れながら息を整えてあの礼のお披露目と思ったら……王様に「けーこはお辞儀の必要ない」と言われた。でもまあ日本人ならではの、四十五度お辞儀をする。


「前に言っていたけーこの褒美をつかわす」


「けーこの褒美は、今まで無籍だったミトレ公爵を与える。クムリンの祖父のミトレ公爵をクムリンにミトレ公爵婦人の爵位をけーこに与える。それによって、館や領地の全てを爵位と共に与える。クムリン、受けてるな?」


「御意。有難き幸せでございます」


 意味が分からないけれど、隣にいるドレリーがお辞儀をしたので私もお辞儀をする。


「異議あり!」


 ドレリーのあのキモい従兄弟、確か名前は『グッテリー=サイトリ男爵』が勢いよく人混みを分けてドレリーの横に行き膝をつく。王様の許可なしに話はじめた。


「わたくしの従兄弟の身分は、伯爵家の次男でありますよ。彼の妻は庶民出身で、ましては孤児院出身と言うどこの馬の骨と分からない者を、わたくしの敬愛する祖父の爵位を継ぐことは納得出来ません。爵位はこのわたくしが血統的に一番相応しいではありませんか!」


 グッテリーが勢いよく言った。


「サイトリ男爵。わしはお主の意見など聞いていない」


 王様が低い声で言う。グッテリーの顔を見たいのにドレリーに隠れて見えない。


「まあ、納得出来ないなら理由を言おう。このけーこの業績を見ればすぐにでも納得するだろう」


「爵位はけーこのためにクムリンに与える。それを忘れるではないぞ、クムリン」


「っは!」


 隣にいるドレリーは礼をしたまま。


「けーこは、我が国で虐待を与えられた孤児院の子供達を救いだして、さらに新たな孤児院を自費で立てた。これだけで、十分な業績だが、スイ国の移民に仕事を与えて学校を開いた。われも前からスイ国の移民の対処をどうしたらいいのか悩んでいたのが、こうも艶やかに解決してくれるとは、のう?」


 王様が私を見て言う。


「知っておったか?」


「国の孤児院は虐待だけではなく、運営費の横領及び人身売買をしていることが分かった。今日はそのことについても罰しようと思う。確か、サイトリ男爵の妻の実家もこの孤児院の経営に関わっていると報告を受けている」


 王様がさっきから感情のない声で淡々と語っていく。


「モーレット男爵。及び、スクレル子爵、前へ」


 顔を真っ青にしたバレンシアのお兄ちゃんと、貴族の前列に立っていた丸々太ったハゲのオヤジがプルプル奮えながら前に出る。まるで死刑宣言を受けた人達みたい。


 あのハゲおやじの横にいる女の人知っている。王都に来る前に寄った街の服屋で頭の傷を作った女。スクレル子爵の娘って言っていた。前より派手な服を着ているので、今の真っ青な顔もあんまり目立たないけどお父ちゃん同様プルプルしている。


 死刑者の二人がグッテリーの横で膝をつく。二人の顔が見れないのが残念。


「二人の裁きは近い内にする。それまで身柄を確保及び、財産の取り押さえをする。もし身内の者達が国外に財産の持ち運び、逃亡があればそれなりの抱負を受けると思え。

 その親族に置いては、国の財産横領があるよって財産を調べさせる」


 王様は息継ぎなしに、さらに話す。


「分かったな、サイトリ男爵。そちの妻の結納金など全て国の物と言う可能性が高い。それに過去何年この横領をしていたか分からないが、そちの妻が使用していた過去の経費をそちが払うのが道理と言うものではないかのう?」


 王様がにやっとした顔でグッテリーを見ている。


「そ、それは違います。わたくしは、この妻の家族に騙されたのです。今すぐに離縁を申請します!」


「なっ、なにを言うの?」


 バレンシアが顔を真っ赤にして、グッテリーに近寄る。王様の前で夫婦喧嘩が始まる。子供がいるから離婚ができない。ドレリーに対抗して、バレンシアと結婚した。


 身分のないドレリーの婚約者は嫌だった。バレンシアはドレリーの婚約者? 驚いて隣のドレリーを見たら、何か言いたそうで私を見ている。


「もう、そこまでしておけ」


 イットおじいさんがため息をついて言った。イットおじさん、王様の横にいたんだ。


 それよりこう言う場合は王様が止めるのに、本人はニヤニヤして人の痴話喧嘩を見ている。謁見の後に私とドレリーは多くの人達に囲まれる。早速おべっかいとスリスリ。


 でも、ドレリーが王女の護衛がありますのでと周りの貴族を抑えた。公爵様へは、誰も何も言えない。部屋を出る時にサイラックさんが合流して、サイラックさんとドレリーが内緒話をしている。


 私達はスイ国の王女の所に行くことになった。私は王女に会う必要ないのに、と断ったらまた貴族達に囲まれるよと脅され、渋々ドレリーに引っ張られる。王女の滞在している客間に入った時に、パトリーとテモテシが侍女としていた。驚いている私に目でなにか訴えてくるけど、何を言っているのかさっぱり。


 王女の部屋から廊下まで女の人達の怒鳴り合う声が聞こえる。部屋の中には、あのスクレル子爵の女と彼女に似た顔の女の人がいた。橙色の髪で黄緑の目の気の強そうな所が同じ。スクレル子爵の女と違う人が王女? 


「まあクムリン様。いいえ、ミトレ公爵様。公爵様は気品がありますので、騎士で終わるお人ではないと思っておりましたのよ」


 王女がねっとりとドレリーに近付き、彼の腕に手を搦める。


「王女様。こちらが、我が愛しい妻のけーこです」


 ドレリーは王女の手を解いて、私の背に手を添えて私の紹介する。私は驚いたけど挨拶をして、サイラックさんも挨拶をした。ドレリーが王女の手を離した時にすごく嫌な顔をしたのは、気のせいだろうか?


 私をすごい目で見ているのも気のせい? そしてサイラックさんの爵位を聞いて、「四男」とバカにした感じで呟いたのも気のせい?

 目の前で顔は友好的なのにその目がすごい。ドレリーが聞く。


「どうしてスクレル子爵の令嬢がこの部屋におられるのですか?」


「あ~ら、私達は従姉妹同士なのですよ。叔父上が大変なことになってしまって。まあ、わたくしと叔父上とは血の繋がりはありませんけれど。それで可哀想な従姉妹に身柄を私が引き取ることにしました。


 叔母様もスクレル子爵とは離縁する話が前からありましたし、今回がいい理由になったと思いますわ。可哀想な叔母様は、スクレル子爵の妾とその妾の娘と同じ館で過ごしておられ。本当に可哀想なんですわ。これで落ち着いたら私の母の元へ、行かれるでしょう」


 王女が目に涙を浮かべて言う。


「この従姉妹には、わたくしの侍女をしてもらうことになりましたの。わたくしも国から誰も侍女を連れてこなかったので丁度よかったですの。そうそうお茶でもいかがですか。本当に、気の効かない侍女達なんでしょう」


 王女がパトリーとテモテシを見て言った。二人は王女の声が聞こえているのに、すました顔でお茶の準備をしている。


「いえ、私は護衛ですので、そろそろ仕事に戻ります」


 ドレリーが断り、私とサイラックさんも断る。王女はドレリーに、護衛だったら部屋の中の方がいいのではないかと何度も言っていてドレリーを離さない。


 私がサイラックさんの後を追いかけて部屋を出ようとした時に、今まで大人しくしていたスクレル子爵の令嬢が私を目掛けて頬打つ。後ろに倒れそうだったけどサイラックさんが受け止めてくれた。ドレリーが慌てて私の顔を見て言う。


「大丈夫ですか?」


 王女様がスクレル子爵の令嬢を叱っている声が頭に響く。王女が私の前に来て、涙ぐんで従姉妹は父親があんなことにあって正気じゃないから許してと訴えた。でもそれが嘘なのが分かった。


 王女の嘘の言葉を聞いていたくなくて、スクレル子爵の女を許すと言ったら王女に抱きつかれる。「あなたなんて、公爵に相応しくない。すぐに消される」と耳元で小さい声で呟いた。


(リジーナとネコの家


 同じ姉妹なのに。どうしてこんなに違う扱いをされるの……。)


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