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my tale  作者: Shiki
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シンデレラ

 杉山けいこは、王道トリップイケメン騎士様と結婚をした。名前は黒髪黒目けーこに、『クムリン』と言うお菓子のような名前がくっ付く。結婚後に待っている茨の道を考えると恐ろしい。


 私は今だにお相手は、平凡の方がいい。


 結婚式が終わった。本当に終わって、私は人妻。『人妻』なんとエロい響き!

 結婚式の説明を飛ばしすぎ?


 仕方ないよ。ここは異世界で想像力の乏しい所。お花を飾る習慣のない世界の結婚式に、なにを期待しているの?


 トリップ小説や漫画やファンタジーを読んでいて、どうして結婚式が地球と一緒なのか不思議。私の結婚式は、王道教会結婚式。神官と国のお偉いさんの前で書類にサイン。もし字の書けない人は、『X』マークをするみたい。


 自分の名前が一応書けてよかった。名前が『X』だと密かに落ち込む。名前が『黒髪黒目のけーこ』と言うのがビミョーに嫌だけど。


 この教会に来た時がすごかった。私達の結婚式をしてくれた神官があのカルメンの言っていた『ジョウイ』だった。年はサイラックさんより少し上。


 こんな端正な渋い顔で神官なのと驚かされた。髪の色は黄緑色で、目の色が水浅葱色。水色の目がカルメンと同じ。なぜか顔立ちがカルメンと似ている。この世界の神官って、結婚してもいい。


 この独身の神官には関わりたくないんだけど、カルメンとの繋がりがなくなるのは嫌なので、ちょこっとだけ愛想良くする。


 どうして『ジョウイ』が独身か私が知っているのかと言うと、教会に来た時に入り口で『あ~、ジョウイ様。ステキ。お嫁さんにして下さい』と黄色い声を出しているお姉様軍隊がいた。その軍隊の横をドレリーと「そー」と通ったのに見つかってしまって、大変だった。


 ドレリーと一緒にいる時はとてもよい感じのする神官だったのに、ドレリーがちょっといなくなった瞬間に、表情が百八十度変わった。


「初めまして。黒姫。カルメンからお聞きしております。カルメンの加護を受けた姫を、私の力のある限りお守りします」


 ジョウイが優雅に私の手を取ってキスをする。この世界の手の甲にキスする習慣には、いつになっても慣れることがない。私はさっさと手を引っ張って後ろに隠す。


 本当にお姉様方が室内にいなくてよかった。じゃないと、八つ裂きにされるところだったよ。って、自分の結婚式にこんな心配をしないといけないのって私くらい?


「ふ~ん。ジョウイ神官は、魔女とお知り合いですか?」


 魔女?


 私達の所にジョウイと同じゆったりとした銀色のローブを着けた神官が来て、目の前に立つ。美男美女の世界に平凡をとっくの昔に通り越してしまった顔の人がいる。『痩せキモ』と覚えていたらいいって、それより覚えなくていいから。


「失礼。クソッテ神官殿。魔女ってどう言う意味ですか?」


クソッテ? 糞?


 ぎゃーはっは。水門さん米さんのカップルの名前の方がまだましー。腹の中で笑う。もちろん私はいい子なので顔の筋肉を動かさない。


「もちろんジョウイ神官殿と一緒にいる、その女性のことですよ」


「クソッテ神官殿でも、クムリン婦人への侮辱の言葉は許されません。クムリン婦人は、王からも目をかけられておられる方と言うことをご存知ですよね。それを魔女などと仰られるのは、一体どうしてですか?」


 ジョウイ神官が私の前に立つ。


「その黒色の色持ちなんて魔女そのものではないか。


 元に庶民のくせに、王を誑し込み貴族と婚姻を結んだ。クムリン殿は大の女嫌いだったのに短期間で好かれるなんて、それこそディランド創世記に出てきた魔女と言う悪者ではないか? どうして皆の者はそれに気付かないのか?」


 えっ、ディランド創世記なんてあるんだ。読んでみたい。


「クソッテ神官殿。創世記のことは秘密事項です。そう軽々しく口に出すことをお止め下さい。クムリン婦人は決して魔女ではありません」


「ふ~ん。分かった。それでは私がその女が魔女と証明しよう。そうした暁には、神官長は私に決まりだな。ジョウイ殿は魔女の一味として、一緒に焼かれるだろうな。


 はっはー。これは楽しみ。今度開かれる次期神官長選がとても楽しみだな。では、またお会いする時までご機嫌よう。せいぜい貴族生活を楽しみなされ」


 魔女狩り。王道イベント。そんな王道なんて、怖い。誰か、ディランド、助けて!


 クソッテの足音が遠のくのが聞こえるけど、私は怖くて震えている。


「クムリン婦人。黒姫。落ち着いて下さい」


 ジョウイ神官が両腕を抱いて、下を向いている私の背中に手を置いて擦った。


「私がどんなことをしても守ります。クソッテ神官の狂言に過ぎません。どうか落ち着いて下さい。今日はうれしい結婚式ではありませんか?」


 私は下を向いているのでジョウイの顔が見えない。でもジョウイの声がカルメンの声と重なって聞こえる。今カルメンに無償に会いたい。何日か前に会ったばかりなのにカルメンに会いたい。


 ジョウイには私とドレリーの結婚が恋愛結婚に見えるのかな。一生懸命に励ましてくれるけど、私にとってはうれしい結婚式じゃないのに。


「あ、あの魔女って、とっても自然的な力で人や家畜に害を与える女の人のことですか? それと、ディランド神を信仰してない異端者のことですか?」


 私はそっとジョウイの顔を見上げながら聞いた。ジョウイは驚いた顔をしている。


「はあ、やっぱり黒姫様は特別な方なんですね」


 ジョウイが私の背から手を離した。


「ええ、その通りです。ここまで『魔女』の意味を『ディランド神創世記』を読んでいないのに把握されているとは。やはりカルメンや王様があなたをお気に入りにする理由が分かりました」


 ジョウイが息を吐く。


「『ディランド神創世記』にはディランド神の創世記に反対する異端者達の筆頭者が女性で、その人達の思考をなにやら妖しい術で操っていたそうです。その女性は火やぶりのい刑で処刑されました。


 魔女は普通は悪い女性と一般の人は思っているのですが、ある地域では白魔女と言う考えの人達もいると聞いています。白魔女と言う者は人に善の術を使うそうです」


 この世界は地球の中世ヨーロッパを真似しただけあって、歴史にも似たところがあるんだ。いろんな宗教がないのは想像力のない人達が多いからなのかもしれない。


「じゃあ、黒、黒色は悪の色ですか?」


 またジョウイが、ハッとした顔になる。


「ああ。失礼。いいえ、黒は悪の色ではありません。黒は闇の色ですが夜の色です。夜も闇も全てディランド神がお作りなられた素晴らしいものです。ただなぜか黒色の色彩を持つ人はなかなかいません。それで珍しくその黒色を欲しがる人達がおり、特に女性だとその人達に女神にされて敬えられます。


 黒姫様のはその黒色の色持ちです。とても特別な存在です。これは異端信仰の発達になります。それで……神官の中に黒を悪と決め付け、人々に教えようとする動きがあります。


 でも今の神官長は、その考えを厳しく取り締まっておりました。しかしその神官長は年を目されディランド神に召される日はそう遠くありません。それで、今、次の神官長選をする予定です。どうぞご心配なさらず。私の権力で決して黒色を悪の色と唱える神官達や人達を抑えます」


 私はジョウイの言葉をしっかり心に刻むようにするけど、その度に体が震える。


「けーこ。どうしましたか?」


 ジョウイの手が離れ、代わりにドレリーの手がそっと背中に添えられる。私は気分が動揺していてドレリーが側に来たことにも気付かなっかたみたい。


「クムリン殿。少しよろしいですか?」


 ドレリーが少し間を取って私の顔を見た後にジョウイの後に付いて行き、私からも見える所で二人で話をした。

 私の隣に戻って来たドレリーは、「大丈夫です。私が守ります」と言って、そっと私の震えている体を包む。ほっとした。


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