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my tale  作者: Shiki
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色の国

 朝は私付きの侍女に起こされた。この侍女は意外に普通。お城で見た侍女達が強烈な種類だったんだ。その人は、ヨネさんのような年配の人だったけれど会話がきちんと出来る人。


 言葉のキャッチがきちんとしてくれる人。他の使用人の人達も立場を弁えて、それでいてフレンドリーに接してくれる。何より一番すごいのは、私のムードをすぐに察知して気遣う所。『影』といい、一体どんな訓練を受けているんだろう。とっても気になるけどこの質問もヤバい感じがしたので聞かない。


 やっぱり、異世界トリップに欠かせないスキルを身に付けたんだー。うれしい。


 朝食の時にリュウーヒもなぜかいた。どうしてリュウーヒはいつもいるんだろうと思って聞いたら、「けーこと居ると面白い」と答えた。朝食の後に、ソニの所に行く。ソニに早くに結婚のことを伝えないと後で大変なことになる。

 

 ソニの所には、歩いて一人で行こうと思ったけど道が分からないので、結局はリュウーヒに馬車で行く。昨日は馬車に二人で乗るのが心苦しかったけど、今日は平気だった。私は道を覚えようと窓から頭を出して外を見る。


 そんな私を見てもリュウーヒは全然笑わない。リュウーヒの笑いのツボが分からない。


 リュウーヒにエスコートされてパン屋に入ったら、ソニにが驚いた顔をして、それからが大変だった。リュウーヒはソニに挨拶をして、お昼に迎えに来ると言ってリュウーヒを引き止めようとしたソニにうまくごまかして出た。


 リュウーヒは強引な女性が苦手らしい。後に残された私は、もっと大変。ソニに仕事の邪魔になるから簡単に説明をして帰ろうと思ったのに……なぜか「今朝は暇なのよ!」とパン屋さんみんなに囲まれて私の養子のことや孤児院のことや結婚のことを話す。


 結婚式の夜会の話になるとソニとシーレさんが、ドレスの用意をしないといけないと大騒ぎになった。シーレさんは、そんな大きなお腹で夜会に出るんだろうか?


 旦那さんが、興奮しているシーレさんを落ち着かせるのに苦労している。シーレさんはお腹の赤ちゃんに「出て来るのは結婚式の後にしてね」っと言っている。そんなんで、いいのだろうか?


 きっと、私の結婚式の時にお産が始まって、花嫁の私はヒロインの立場から下ろされるんだろう。


 みんなが落ち着いた後に、私は『桃太郎』の話をして『きびだんご』の話を持ちかけたら、パン屋さんのおじさんが特許のことを聞く。どうして、この世界は特許特許とうるさいのだろう。それはパン屋さんで、取って欲しいと言ったけど断られた。スイ国の人やパンの必要な人達のために使って、と説得してやっと頷いた。


 それから中学で習ったドーナッツの作り方を思い出して、キッチンでパン屋のおじさんとシーレさんの旦那さんに教えた。流石パン屋さんですぐに作り方を理解して、はっきり言って私より遥に上手に作っている。


 ちょっと悔しかったけど、久しぶりにアッツアッツのドーナッツを食べれてうれしい。もう、私はこのパン屋さんの常連になるよ。ソニも始めてドーナッツを食べてすごく喜んでいる。毎日食べるとまで言っている。ソニは太る前にコナットと結婚した方が良い。


 ソニに「夜会にコナットも呼ぶんでしょ」と、聞かれたけれど「王様が決めるので」とうまくごまかす。コナットに一生会いたくない。


 またコナットのよさをソニが暴走して話始めてうんざり仕掛けた時に、リュウーヒが迎えに来た。これほど、リュウーヒに会って感謝したことない。お昼をパン屋で食べようと誘われたけど、リュウーヒが上手に断った。私もリュウーヒのそのスキルを、手に入れたい。


 お昼はリュウーヒと街の中央の露店で、ピタに似た薄いパンにチキンと野菜が挟まった物と紅茶を買って、木陰に座って食べる。地面には柔らかい草が生えていて服は土で汚れない。昨日のようにお店の中で取った食事より、落ち着いていて美味しい。


「なあ、クムリンとの結婚、本当に良いのか?」


 リュウーヒが聞いてきた。リュウーヒの顔がとても真剣なので、私の心がドキと一回跳ねる。私はやっとの思いで「うん」と頭を頷く。


「そっか。でも、もし本当は嫌だったら、俺が他の遠い国にけーこを連れて行くからな。アット殿も協力をするぞ。生

活は心配しなくて良い。俺がなんとかする」


 リュウーヒの紅赤色に熱を含めて、小さな声で呟く。


「結婚して、もし辛そうにしていたら俺がけーこを攫ってどっか遠い国に連れて行くからな。無理するな……約束だ。分かったか!」


「う、うん!」


「俺とお前は対だ。それを、忘れるなよ!」


 リュウーヒは私の頭に手を置いて、髪の毛をクチャクチャにし始めた。


「もう、髪の毛が滅茶苦茶じゃない!」


 私がリュウーヒの手を払いのけて、後ろに体を引く。


「ああ、ごめん。ごめん。せっかくの綺麗な黒髪を滅茶苦茶にして、悪かったな。まあ、ドレスの試着するから、どうせまた髪が乱れるか」


 リュウーヒの指の長い固い手で、私の髪を撫でて綺麗に直す。どうして彼は、私の黒髪をそこまで気にするのか不思議。 


 ドレリーの実家のクムリン家は、とても落ち着いた色の貴族屋敷。リュウーヒと馬車に乗って貴族街に入った時に、私は自分の目を疑ってしまった。なんとアットおじさんのラブホがまで、可愛い方だったなんて……。


 貴族の方々、ドレスの色もすごいと思っていたけど、家の色彩もすごい。あの黄色と赤色のある国家色があった。ちなみに日本国色とアメリカ色とフランス色と、紫と赤と黒の怪しげな色もある。絶対お呼ばれされたくない家。ネオン館もあって、風俗街?


 庶民街がメルヘンで落ち着く。ドレリーは結婚したら、実家を出よう。


 クムリン伯爵家の皆様は、摩訶不思議要素をたっぷり。ベルばらカップルのお母様とトリーもビックリだけど、お兄様夫婦もすごい。お兄様は、トリーをさらに渋くした感じのハンサムなんだけど、お姉様がつまりお兄様のお嫁さんが、地味だった。トリーのように服を地味にしているんじゃなくて、顔がううん、全てが地味!


 ロッテマイヤーさんが、すごくお洒落に見える。お姉様の顔は細くて、目が平安美女のように細くて鼻が尖っていて……高い!


 その小さい眼鏡はなに?


 似合いません! 鼠みたい。すぐにお止めするように申し上げたい。背は平均だけど、痩せていて、む、胸が……私並。こ、これは貧乳同盟が結束される奇跡的な瞬間ですか?


 一番許されない、ううん信じられないのが、ハンサムなドレリーのお兄様とその鼠さん奥様が挨拶を交わした後に、イチャイチャし始めた。


 二人はキスまでし始めた。トリーとドレリーとお母様は、別になんの反応をしない。アットおじさんとサイラックさんは、まだ来てない。二人共、遅れて来るなんてとっても正解な判断。


 お兄様夫婦のキスシーンがあまりにも強烈すぎて、ガン見をして目が離せない。でもガン見はいけないので一緒にいるリュウーヒを見たら、紅赤色の右目を大きく見開いていて目が落ちそうで口もポカーンと開けて、お兄様夫婦のキスシーンを凝視している。初対面の挨拶の時に、普通イチャイチャ始める?


 それよりお兄様夫婦、舌を絡め始めて、いやー、この先は説明を省かせて。乙女には決して侵入を許されない危険地に突入?


 まだ日中でお天道様がって言いたいけど曇り空だけど、寝室じゃないし……。私はどこを見たらいいか分からずにいたら、ドレリーに促されて部屋を出て庭に行く。私達の後に続いて皆も出て来て、確実にその部屋はしばらく開かずの間になる予定。お母様が執事さんらしき人に、部屋に誰も入れないように言った。


 その執事も何も言わずに頷く。その行動が当たり前のようで、いつものことらしい……。絶対、何がなんでもこの家には住まないことに決めたよ。


 中庭に来て……なんとクムリン家は、庭もすごい。もうビックリはいりません!


 精神的にくるものがある。庭中に、薔薇が咲いている。


 『不思議の国のアリス』のハートクイーンもビックリ! それも青色の薔薇と黒色の薔薇。地球ではありえない青薔薇と黒薔薇。


 ブルーローズとブラックローズの意味は、「不可能・有り得ない」い、いいのですか?


 地球では「不可能・有り得ない」、遺伝子無視のこの薔薇をあっちこっち生えているよ。薔薇は綺麗だけど、色のこの組み合わせがなんとも言えない。


 妖しい!


 この二つの薔薇の匂いが、普通の薔薇より匂いが強い。


「父が母のために植えました。綺麗でしょう?」


 ドレリーがニコニコ言ったので、私とリュウーヒはお互いに目を合わせた後に頷く。


 執事がお茶の用意をしたのを飲む。お茶を飲んでいる間、お母様が薔薇の話を永遠にしている。ドレリーのお父さんとの馴れ初めいろいろを、聞いてないのに顔を桃色に染めて話しをしている。隣に座っているトリーも顔を赤らめ話を聞いていて、ドレリーもニコニコしていた。


 私とリュウーヒは、顔を引き面せながらお母様の強烈なラブロマンスを聞いていた。なんとか話を聞いていたら(これってかなり苦行)、この家にグリーンハウスもあって、その中にも薔薇がたくさんあるみたい。


 「見ますか?」と聞かれたけど今回は断った。薔薇は好きだけど色が強烈だと精神的に疲れる。もうこうなったら、薔薇石鹸の薔薇はこのお母様から貰うことに決定。


 早速ビジネスの話をしたら、あっさり承諾。あっさり過ぎて気が抜ける。この家族と話をしていると、気が抜ける。こうなったら、もうひとつのビジネスも提案。お母様が目をキランキランしてその話もあっさり承諾。


 この話は、お花屋さんを開くこと。お城で聞いた通りこの世界は花を飾る習慣が無かったし、花を送ったりプレゼントに一輪添えたりしたら、やっぱり楽しい。フラワーアレンジでブーケの話をしたら、私の結婚式にお母様がブーケを作ると張り切り。もちろん結婚式の後の昼食会や夜会もお花で夢のような飾り付けをすると言い切った。


 もう張り切り出したお母様をお止め出来る人は、いない。ついさっきお茶会に参加したアットおじさんとサイラックさんとリュウーヒを懐に入れて、お母様の生きがいビジネスライフが幕を開ける。私はついつい成り行きで話しただけなので、後はご自由にとお母様にバトンタッチして、トリーの部屋にドレスの試着のために席を立った。


 リュウーヒとサイラックさんも私達とこの庭から抜け出したそうだったけど、お母様に敵う者はいない。特にリュウーヒはこの手の女性が苦手。誰もこのお母様だけは敵にしたくないと思う。

『ドレリーベル薔薇母には、逆らうな。逆らうと命がない』


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