色の国
私の名前はけーこ。でも、後少しでまた名前が変わってしまうんだけど。
女の子は、白馬の王子様より結婚式のことを考える方が多いと思う。まだ結婚を受け入れられない自分がいるもん。もう、いい。流れに身を流せって言う言葉あるしね。
ただユートのことを思うと胸が苦しい。また二人で一緒に空を見たい……。
雨に濡れた私をパトリーとテモテシが優しく迎えた。二人に無理やりお風呂に入れられて、温かい夕食を食べさせられた後に眠った。いつもの通りパトリーとテモテシに起こされ、朝の準備をする。
二人共いつものように接しているけれど、テンションが低い。でも、ドレリーとの結婚のことは喜んでいる。私がお城を離れることは寂しいけれど、いつでも会えることを喜こぶ。
今度『乙女の花園』に招待された。ドレリーは騎士なので別に貴族社会の人とは、あまり仲良くしないと言いたいけど二人のことは好きだから何も言わない。貴族だから仲良くしたくないと言う私の考えの方が、人種差別をしていることに気付いた。そんな自分が恥ずかしい。
朝食の後にサイラックさんが来た。本当はリュウーヒが来る予定だったけど、昨晩リュウーヒに頼まれたらしい。理由は侍女が怖いらしい。それを聞いてつい笑う。
「やっと笑ってくれましたね。けーこさんには笑った顔が似合います。クムリン殿との結婚のことも聞きしました。ユート殿のことも聞きました。
今は無理でも時間がたてば、ユート殿もけーこさんと今まで通りにお付き合いするでしょう。あまり思い積めずに待ってましょう。ご婚約、おめでとうございます。けーこさんが結婚されても、私はあなたの兄です。どうかいつでも私を頼って下さい」
「ありがとう」
私達の乗っている馬車がラブホの城に玄関の前に止まる。サイラックさんに手を借りて馬車から降りた。地面が濡れていて水たまりあった。私は別に汚れてもかまわないブーツを履いていたので良かった。
私の荷物は元々少なかったので、荷造りがすぐに出来た。サートの絵は、布に包んでいてサイラックさんが他の荷物と一緒に持ってくれた。ウドットの小鳥とユートの黒色のピアスを桃色のバックの中に入れて持っている。玄関の前の何段かある階段に昨日と同じでリュウーヒが待っている。
リュウーヒとサイラックさんは言葉を交わさず、何か目でお互いに合図をした。リュウーヒが私の前に立って前かがみになる。リュウーヒの目は、昨日泣き過ぎた私の目も真っ赤なんだろう。私の場合は真っ赤に腫れて変な顔をしていると思う。
「目が真っ赤。ユートのことは心配するな。俺がどうにかする。まあクムリンは、俺が一発殴っておくよ」
ユートがそう言って、私の髪の毛を優しく撫でる。
「ど、どうしてドレリーのことを殴るの?」
「あー、これは俺の権利だ」
はっきり言ってまた意味不明。男同士のことは、恋愛経験ゼロの私には分からない。
私達が玄関から中に入ると、使用人が一斉にお辞儀をしていた。確か昨日は誰もいなかったよね? 驚きサイラックさんの後ろに隠れる。
「ほっほっほ。けーこさん、いらっしゃい」
昨日よりさらに若返ったようなアットおじさんが、サイラックさんの後ろに隠れていた私の所に来て挨拶をする。私の頬に軽くキスを落とす。
「あ、はい。おはようございます。あ、あのこの人達はどうしたのですか?」
私は失礼だけど使用人の人達を指差して聞いた。
「あーあ。使用人じゃ」
「き、昨日はいませんでした!」
「ほっほっほ。いつもは客に姿を表さないように、仕事をしておるんじゃよ」
はっ、なんですか? このラブホは忍者屋敷なの?
私達は昨日と同様に、アットおじさんの執務室に行って話をした。もちろん孤児院の許可のことと結婚のこと。なぜか私が説明をしなくてもサイラックさんの方が詳しく知っている。
マイ町の孤児院の皆がお城に泊まり、婚姻式の後にお城で昼食会をすると聞いたアットおじさんが急に怒鳴る。怒鳴り声が恐ろしく座っていたソファーの背にしがみ付く。
「アット殿。けーこさんが怯えています」
サイラックさんが声をかけるとアットおじさんが「すまぬ。すまぬ」と灰色の髪に手を当てながら謝る。私は「う、ううん」と頭を振るのに精一杯。
「わしの娘の結婚式を勝手に取り仕切りおって。けーこさんの家族はわしの家族じゃ。孤児院の皆はここに泊めるのが筋ってもんじゃ。そう思わないか?」
アットおじさんが、サイラックさんとリュウーヒと私に聞く。私は筋とか分かんなかったけど、二人の真似をして頷く。私達が頷いたので、アットおじさんの気が晴れたみたい。
「そうじゃろ。そうじゃろ。夜会は仕方ないが、昼食会はここでやらせてもらう。サイラック、王様とケリを付けて来い!」
サイラックさんは、メチャクチャな命令に顔色を変えずに頷く。
『トントン』
「失礼します」
執事らしき人がドアを開けドレリーとドレリーのお母さんとオスカル様、いえいえトリーが入って来た。相変わらず美しいお母様と地味なトリーっと思ったら、彼女が明るくなっている。
地味な焦茶色のドレスではなくてサイラックさんの髪の色と同じ色のドレスを着ている。失礼だったけど、口を開けてトリーを見てしまった。
「ど、どうしたの? トリー」
さっきから私って、人を指している。で、でもこのショック分かるでしょう?
「え、え、ええ、ベアーさんの奥様のモイリット様に言われて、もっと明るい色の服を着ようと思いましたの。似合いませんか?」
「うん」と頭を下げそうになったのを咄嗟に止めて「とっても良いです」と言った。
「ええ。とてもお似合いです」
サイラックさんがそう言った。トリーは入って来た時にサイラックさんに気が付いて見つめていたけど、サイラックさんと目が合ったら私の方を見る。
「あ、あ、ありがとうございます」
今のトリーの顔をリュウーヒの目の色のように真っ赤。ドレリーがアットおじさんにあいさつをして、お互いに自己紹介する。ドレリーがここに来たのは、結婚式に関する話し合いと自己紹介をするためみたい。
みんなでお茶を飲んだ。『影』が出て来て給仕をする。トリーは私と一緒で体を仰け反って驚いていたけど、ドレリーとお母さんは平気な顔をしていた。お茶を飲みながらおのおので話をした。トリーは、一生懸サイラックさんに話しかけていて可愛い。
私の隣に座ったドレリーは、リュウーヒにいろいろ言われている。ドレリーのお母さんとアットおじさんの間にピンク色の空気が漂っているんだけど、これって気のせいなんだろうか?
結局の話し合いは、私のドレスを何着か用意するるので明日クムリン伯爵家に午後に行くことになる。アットおじさんも付いて行くことになり、サイラックさんとリュウーヒも行くことになった。サイラックさんがトリーが童話のお人形を見たいと言った申したてに、トリーがすごい勢いで頷いた。リュウーヒがなんで付いて来るのか聞いたら「面白そうだから」だって。
面白い要素ってどこにあるんだろう?
昨日はドレリー達が帰った後は、意外にゆっくりした。アットおじさんとリュウーヒと昼食を取って、その後は部屋の真っ白なベットの上で昼寝。昼食の時に気になっていた土地代や結婚式の費用のことを聞いたら、リュウーヒがまたバカ笑い。
結局は、私がアットおじさんの養子になったから別にそんな物はいらないと言われた。断ろうとしたけど、土地代の他にいろいろ経営に費用が必要なので、ありがたく受け取る。私のドレスもアットおじさんが揃えるとなぜか張り切っている。