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my tale  作者: Shiki
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親指姫

 ソニとユートが王都に行って三ヶ月経つ。二人の去った後、皆寂しそうだったけど最近また元通りになって来た。新しい年長さん達が、急にしっかりし始めた。今は冬で、クリスマスやお正月がなくて日本が恋しくなる。


 年の変わり目に、祝いのためにヤギを一頭食べた。今だにヤギの肉は、ハーブをたくさん入れて匂いを消したりお酒で肉を柔らかく料理をされているけど、完全に消えることのない独特の肉の臭みに慣れ無くほとんど食べる事が出来ない。ヤギのチーズも苦手。魚が恋しい。


 ここが内陸部なので貝類は絶対手に入らないの。いつか王都の反対側の西の海岸へ旅行をしたい。砂糖は高価なものでハチミツを使いクッキーやパイを作るけれど、マスターの奥さんのケーキが食べたいよ。甘味が少なく、洗濯の重労働のおかげで体重が減り腕のたるみが引き締まった。顔のむくみも取れ目が二倍の大きさになったみたい。ダイエットの成功のコツは、原始生活?


 ここの冬は、そこまで寒くなく雪も降らなく過ごし易い。生活はいろんなことで不便な亊があるけど、試行錯誤して工夫して生活している。洗顔クリームも化粧水もんなくて、ディランドのおかげで肌が荒れる亊がない。


 石鹸は手作りで、洗濯も体や髪を洗うのも一緒の物。泡も立たないし匂いもしないので、春が来たら大量に薔薇の香りの石鹸を作るつもり。自分用には少し作った。花は色彩が違うけど、匂いや種類は同じ。赤い薔薇と白い薔薇があってよかった。『不思議の国のアリス』の話を話した後に気付いて、調べたらあった。


 驚いた事が、青の薔薇があった。思いっきり遺伝子を無視している。髪の毛は週に一回卵を使って、こっそりトリートメントしている。歯磨きは塩と布と糸を使う。午後の勉強会は一人でやっている。

全然はかどらないけど、考え事したり物語を思い出したりして一人の時間を楽しむ。ユートとはあまり会話をしなかったけど、一緒にいる時間は、ソニといる時より心地よい時間。私はユートのことを、加奈子と違った感じで頼りにしていた。そろそろチビちゃん達が帰って来る時間だから、おやつの準備を手伝いに行こうかな。


「けーこ。けーこ。大変、早くミトお父さんが書斎に来てって。早く、早く」


 十三歳のキミトリックが、叫びながら部屋のドアを開けた。もう学校から帰って来てたんだ。キミトは、髪が黄緑で黄赤色の目のやんちゃ小僧で、最初に会った時は、私と背が同じくらいだったのに、いつの間にか顔を見上げない目を見て会話が出来ない。とってもくやしい。そんなキミトが、すごく興奮している。


 急いでミトさんの書斎に行き、ドアを軽く叩く。どうぞ」と、言う声がしたのでドアを開けて中に入った。中に入ると、目の前に真っ白いマントが見える。マントが揺れて、マントを着ている人がこっちに振り向く。

私は頭を上げると、目の前にいる人が銀の髪に紫の目の男性のエロスを感じさせる、二次世界に出てくる主人公のような綺麗な人がいた。


 この世界に来て美男美女に慣れたと思ったけど、まだまだのようだ。でもよく考えると、王子が金髪蒼眼でサブが神官や宰相、それか騎士が銀髪紫眼が王道だね。本物の銀髪紫眼が目の前にいる。


「あの、お呼びでしょうか?」


 私がそう言うと、ミトさんが話しそうとしたけど、ヨネさんが話し始めた。


「けーこ、すごいのよ。この方は、ドレリオット=クムリン様で王様の近衛兵なのよ。王様が貴方の本を気に入って、ぜひ会いたいと言う事でクムリン様がお迎えに来たのよ。どうしましょう。


 新しいドレスを作らないといけないわね。ミト、どの色が私に似合うかしら。そうそう、けーこには何色が似合うかしら。黄色かピンク。忙しくなるわね。クムリン様。出発は、何時になるかしら一月後、二月後かしら。どうしましょう、時間が足りないわ」


ヨネさんの暴走が始まり、騎士さんビックリしている。彼は王道の騎士だったんだ。


「マダム。今回はけーこ様だけをお連れするように命令されています。国王に早くお連れするように言われているので、明日の早朝に出発したいと思います」


ヨネさんが珍しく動揺して、言葉がどもる。


「あ、あ、あした。そんな急には、支度が出来ないわ。それに、女の子を一人で男の人と旅をさせるなんてそんなことは、出来ないわ」


私の持っている服は、全部で三着。こんな美形の人は相手がたくさんいて、平凡な私を襲うなんてない。女なら誰でもいいと言う変態だったら話は別だけど、曲がりにも近衛兵だしね。


「マダム私は近衛兵です。騎士です。私の付き添いでは不安だというのですか?」


 騎士様の顔が怖い。凄みの聞いた美声も怖い。美形が怒ると怖いって、本当だったんだ。絶対、平凡顔の人と結婚しよう。あのヨネさんが、抑え込まれているよー。奇跡的な瞬間に立ち会っているけど……怖い。

これって、ブリザードが来たって表現すべきなの? ミトさんをチラと見たら、部屋の隅に移動している。私も仲間に入って、ソッチに行っていい?


「い、い、いえ、私は、そう言うつもりで言った訳じゃなくて」


ヨネさん、又どもった。次のどもりは、きっと「う、う、うん」だね。


「では、明日の朝八時に迎えに参ります。それでは良い夜をお過ごし下さい」


騎士様は腕を胸に当てて、優雅にお辞儀をして優雅に退出して行った。ミトさんがいつの間にかヨネさんの横にいた。はやっ!


 その後は、荷造りをして(持ち物が数えれるくらいしかなくて、すぐに終わった)、お別れ会をして(皆のお土産リストが殺到。ミトさんの王都観光案内書っていうのが謎だー)、明け方にやっと眠った(興奮して寝れなかった。はい、遠足前のオコチャマです)。


朝起きれずにノロノロながら準備をして、ヨネさんの注意事項のマシンガントークを聞き流しながら朝食をしっかり食べた。クムリン様は、流石に時間通りに迎えに来た。

 爽やかな朝の風景をバックに、白馬の王子のような登場。実際は、赤馬の騎士だけどね。ヨネさんが二人乗りを反対して馬車で行くことを勧めた。


ヨネさんと騎士様のガチンコバトル第二段が始まり、結果は「馬の方が早く着く」と主張した騎士様が二勝した。二人共怖いよ、子供たちも怖がっているよ。


 チラっと、ミトさんを見るとキミトの後ろに隠れている。お別れも、騎士様の睨みのお陰で短くすむ。片道五日かかるので三週間で帰って来る予定。ソニやユートの時のように涙はなく、皆笑って見送ってくれる。只、最後までヨネさんがクムリン様にクドクドと『けーこの扱い注意事項』を聞かせていた。


 ヨネさんのあれは、きっと騎士様に負けた腹いせだよ。その中に私は盗賊に襲われて、家族を失い孤児になり、右肩に刀で切られ重傷を負い、頭も強く殴られて記憶喪失でかなり常識外れのことをするから、いろいろ教えて欲しいなど。


その時の後遺症で、文字を忘れて文章が書けない病気になったとか言っている。とても大げさだ。頭は小さいたんこぶだったし、文字が書けない病気ってあるのかな。それにそこまで常識外れじゃないよ。ヨネさん、私をそんなに不孝の少女(女)にしたいの?


「それでは、行って来ます。手紙は誰かに代用して書いて送るね。皆、元気でお土産楽しみにしていて良い子で待っていてね」

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