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my tale  作者: Shiki
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タイコじいさん

 私こと、けーこはただいま究極の選択をしないといけない場面に直面している。どうしてこの手の選択は、二つだけで逃げ道って用意されないの?


 うっ、頭が痛いよー。確かカルメンに会って喉が渇いて、目の前の黄色いレモンジュースのような物を飲んだよね。


 お酒だったとか? これが良く聞く二日酔いって言う物なの?


 頭痛いよー。二十一歳の記念するべきイベントなのに。


 日本にいる時は、太っていて合コンの補欠にも誘われた事なかったのでお酒を飲む機会がなかった。今日は一日中このピンク乙女部屋のベットで籠もっていたい。


 でもそんな私の希望も叶えられずに、侍女達にまた無理やりお風呂に入れられて(もちろん抵抗はしたよ)、黄色のワンピースに着替えさせられた。ビックリしたのが、私の物をきちんと洗濯してアイロンまでかけてくれている。流石お城。


 今日は孤児院に帰る日だったのに、侍女達によると王様との謁見が夕方になった。前の私だったら別に褒美なんていらないと言うけど、今回は褒美に孤児院の設立の許可を頂こうと思う。そして今朝は、リュウーヒとの約束の地主さんに会いに行かないといけない。


 イットおじいさんが頭の様子を診察した。『安全組』の黄色と黒色の鉢巻が取れる事になり、うれしい。でも二日酔いの頭痛を言うと、酔い薬と言う液体をグラスに入れて渡された。


 なんと『青汁』。日本の感覚で緑色と思うけれど、ここは異様な色彩の世界。『青汁』と言えば青色。カクテルのような綺麗な青じゃなくてドロドロの濃い青色。不味かった。鼻から吹き出す所だった。


 飲んだ後、私は洗面所に駆け込んでうがいを何度もする。洗面所のドアの外から「吐くなよ。薬は大切にせー」と言うイットおじいさんの声が聞こえた。あれは、毒だと思う。そんな私を見て「小さいのにお酒を飲むのがいけない。ふぁふぁふぁ」と笑って部屋から出て行った。でも恐るべき『青汁』頭がすっきりした。これは、日本で売るべきよね。


 私はボーとソファに座りながらパトリーとテモテシの新聞のゴシップ欄に載せる話を聞いていた。驚いた事に二人共、私がイケメン四人とウハウハ夢の食事会をしていたって言った事。どうしてそこにボビートが含まれていないの?


 ボビートが貧乳と言ったのは覚えているけど、カルメンに会った後は全然覚えていない。変な事してないよね。それと、変な事言ってないよね? 不安。誰かに聞いてみよう。


 サイラックさんが迎えに来た。あれどうしてサイラックさんが来たのか尋ねると、サイラックさんも地主さんの所に付いて行ってくれるそうだ。なにかその人と知り合いだしお金の事はサイラックさんの方が詳しいからと答えた。


 私達は二日前のように腕を繋げて門に待機していた馬車の所に行って馬車に乗って街に行った。またお城を見たくて首を窓から出して見る。何度見ても綺麗じゃなお城。空を見ると、蛍光灯色の鳥が飛んでいて綺麗でまた「あー。あー」と言っていたら、サイラックさんが笑っていた。思議なのが『青い鳥』をまだ見てない。


「はは。済みません。けーこさんが可愛らしくて。どうぞ外を見て構いませんよ」


「ああ。済みません。髪が乱れましたね」


 サイラックさんが私の髪に手を伸ばして直す。この前のように、石のような物に車輪がぶつかったけど私は咄嗟に下を向いた。私の髪を直し席に座った。


「二日前の事がまるで遠い昔のようです。けーこさん、私はあなたが私を結婚相手にお選びならなくてもそれでも良いと思っております。ただこれから恋愛感情を抱けないのでしたら、兄として私をお側に置いて頂けないでしょうか?」


 サイラックさんの顔をしばらく見ていた。どうして彼は私の側にいたいのだろう。


「あ、あのー。サイラックさんの所以外で本を出版なんてしません」


 本の事を心配しているのかもしれない。サイラックさんが溜め息を吐いて言った。


「いいえ。そう言う意味ではありません。本のことはどうでもいいのです。ただけーこさんが幸せになるように、お側で見守らせて下さったらそれで良いのです。

 私の事を兄と思って側にいる事をお許し下さい」


 サイラックさんがとても真剣なので、断る事ができなかった。


「で、でも、私。明日、孤児院に帰ります」


 私がそう言うとサイラックさんは、少し悲しい顔をした。


「そうなると良いのですが……」


 私は、サイラックさんの言っている意味が分からない。


「それよりもう一度、『かぐや姫』をお話して頂けませんか。昨晩は暗くて書き取る事が出来ませんでした」


「あ、あの。私、『かぐや姫』の話なんてした?」


 サイラックさんが、私の顔を見て笑い出した。


「ははは。すみません。そうですか、覚えていませんか。そうですか。はい、私とクムリン殿とユート殿とリュウーヒ殿に『かぐや姫』の話をされました」


「そ、そうですか。あのー、私、なにか変なことしたり言ったりしてませんよね?」


 サイラックさん、その沈黙が怖いんですけど……。


「いいえ。ただ『かぐや姫』の話と、後『桃太郎』の話と『ピーターパン』の話をなされていてそして『桃太郎』の歌を楽しそうに歌っていました」


 うっ、歌を歌っていたってそれも『桃太郎』の歌? 恥ずかしい。


「あっ、はい。そうだったんだ。良かった。変なことを言ってなくて、良かった。あっそうだー、あのこの都に観光案内書ってありますか?」


 思い出してちゃんと聞けた。お土産はミトさんのだけ。これで明日安心して帰れる。


「都の観光案内書ですか? それは、いったいどんな本ですか?」


 やられた。ミトさん、あなたとヨネさんはこの世界で異常者だったのねー。


「えっ、ミトさんに頼まれていて、観光案内書と言うのは都の有名な所の説明や美味しいお店や宿の紹介とかする本です。新聞にも少し載せると良いかもしれません。あの新聞は、どうなりましたか?」


「ええ、今週中には第一段を発行する予定です。何か短い話はありませんか?」


 今週中に新聞を発行するんだ。小話どれにしよう。


 しばらく考えた後に私は『北風と太陽』の話をした。もちろん、サイラックさんは私の話を紙に書いていた。でもよくこんな振動の激しい馬車の中で書けると思う。その話の後に『かぐや姫』の話もした。かぐや姫』の話が終えた後すぐに馬車が大きな門の中に入って行って止る。目的地に着いたみたい。


 今回は、結構遠くまで来たみたい。サイラックさんに聞いたら城と反対の街の外れだった。サイラックさんに腕を支えてもらって馬車から降りた。降りて目の前にそびえ立つ建物を見て……顎が落ちてしまった。私はその建物を、ただ口を開けて見ていた。そんな私を見てサイラックさんが笑っている。


「あのー、これって地主さんの家? この中に入らないといけない?」


「はい、そうです。見た目はこうですけどすぐに慣れますよ」


 慣れたくないよ。その建物は私達乙女が想像する、れっきとした夢のお城。ディズニーランドのシンデレラのお城。でも絶対にあの乙女部屋のソファーさえ可愛くみえるくらい、ドクドクしたピンクの壁で屋根は真っ黒。そして極めつけに、あっちこっちに金箔がキラキラ光っている。「成金とラブホテルが混ざっているの色」


「けーこさん。そろそろ参りましょうか?」


 私はサイラックさんの腕に手を添えて、そのラブホテルの建物に入る。建物の入り口にリュウーヒがいた。彼にもこの建物は似合わない。サイラックさんとリュウーヒがお互いに挨拶を交わした後に、リュウーヒが私を見た。


「けーこ。二日酔いは大丈夫だったか? 頭の包帯取れたんだ。良かった。これで黒髪が綺麗に見える」   


 リュウーヒは、私の黒髪の事をよく話す。


「う、うん。朝頭痛くてイットおじいさんの青色の薬を飲んだら痛くなくなった」


 私がそう言ったら、二人共私をとても気の毒そうな顔をして見ていた。


「あははは。アレ飲んだのか? あははは」


 リュウーヒが、お腹を抱えて笑い始めた。


「あ、あのアレってどう言う意味ですか?」


 バカ笑いを始めたリュウーヒを無視して、サイラックさんに聞く。昨日からリュウーヒのキャラを疑いたくなる。初めはクールな人だと思ったのに、笑い上戸だった。なんか、何かに吹っ切れた感じもするんだけど……気のせいかな。


「ええ、そうですね。イット様の青色の薬はとても有名です。効果は最大なんですが、味がひどいので一口も口に入れる事が出来なく、全部飲んだら死ぬと言われている薬です。別名を『青の毒薬』。まさか全部飲んだ訳ではありませんよね?」


 サイラックさん、いつも丁寧な説明をありがとう。


 乙女の私が鼻から逆流しないといけない羽目にあったのよ。その後も鼻が痛くなり、鼻をインド人の鼻洗い方法を思い出しながらコップで洗ったんだからね。


「うん。全部飲んだ」


「ぎゃははははー」


 なんで「ぎゃ」まで入れて笑うのよ、リュウーヒ。サイラックさんを見習って、クールに大人の態度を取りましょう。サイラックさんも口に手を押して笑っていた。


 やっと落ち着いたリュウーヒに案内されて、建物の中に入った。執事や使用人が大勢いると思ったけど、人が一人もいない。私達はお城並の迷路のような廊下を通って、一階にある部屋の中に入った。その部屋は、暖炉がある書斎。茶色の革製のソファーと茶色の木で出来たテーブルで、落ち着いた良い部屋。


 私が部屋の中に入って一番に目を奪われたのは、壁いっぱいに飾っている紺色の髪で茶色の目をした女性の肖像画。その女性はとても優しい顔をしていて笑っていた。他のたくさんの肖像画は、とても幼い少女の姿から五〇歳位の女性まで様々な姿をしている。


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