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my tale  作者: Shiki
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かぐや姫

 私の名前は、杉山けいこ。この世界では、けーこと呼ばれている。年は二十歳と言っていたけど、大変な事実に気付く。


 なんと私は、先月で二十一歳になっていた。なんで自分の誕生日を忘れているのって、ここ異世界だよ。一年の日にちや時間の過ぎ方とか同じだけど月の数え方が違う。


 一ヶ月が三十日で十二月と一月の間に『年過ごし日』と言う日が四日か五日あって、これは年ごとに違って教会が管理をしている。カレンダーがないので、皆『種植えの月』とか『若葉の月』とか『収穫の月』とか生活の習慣でその月を呼んでいる。だから自分の誕生日を忘れてしまった。


 それにこっちの生活に慣れるために精一杯で、誕生日の事なんて頭にない。それに女なんて成人式を迎えた後は、と誕生日をあまり意識しないようになる。に孤児院はいつも誰かの誕生日で、私の誕生日を祝ってもらうも悪い気がしてついつ言いそびれてしまった。


 私はもう立派な大人。大人の行動をしようと思う。でも、どうやったら大人の行動が出来るんだろう?



 私とユートは、夕日が完全に姿を隠す前に『母の味』と言うボビートさんの行き付けの食堂に行く。カムリットと別れる時に、ユートは剣を返して貰った。その時のユートの顔がほっとしていて、どれだけその剣を大切にしているのかが伝わる。


 夕暮れ時の街をユートと手を繋いで歩いている時、とても楽しい。それぞれの家から夕飯の良い匂いが漂い、暗くなり始めた家に灯火が灯り温かい光が外にも漏れる。早く家に帰ろうとしている仕事帰りの人達や、母親の邪魔にならないように家の前で遊ぶ子ども達。なにもない日常風景が異世界でも日本でも同じで心が温かくなる。


 『母の味』は、石で作られた建物でソニのパン屋さんを二倍にしたくらいの広さ建物の中から騒ぎが聞こえる。店の中に入った時に、熱気に溢れて良い匂いがする。私達にすぐ気付いたドレリーが、私達の所に来た。


「けーこ」


 ドレリーが私の名前を呼ぶ。ユートと私の繋いでいる手を見て、彼がユートになにか言いたそうにしていたけど、ドレリーの後に付いて来たサイラックさんが彼の肩に手を置いたら何も言わなかった。


 ドレリーはユートと繋がっていない私の腕を引っ張って、人が少ない隅の部屋にあるテーブルに案内する。途中で何度もお店に女の人達が顔を赤らめてドレリーを見つめて、私達が過ぎた後に「きゃ、きゃ」と言いながら何かお互いに話している。


 テーブルには、ボビートとリュウーヒがいた。別れ際に私の黒髪を触った時から、リュウーヒのことをボスと呼べなくなった。

 この人は、私から名前を呼んで貰う事を切実に望んでいると思う。私を見たボビートが前歯の抜けた歯を見せながら笑って「無事で良かったです」と言った。

 やっぱり、ボビートは良い男。どうして、平凡の良い男はすぐに結婚するのだろう?


 結婚なんて安全性を求める。結婚によってその女性の一生が変わるから、イケメンと結婚してその後のハレークイーン並のドロドロの生活なんて嫌だ。


 今の世の中は離婚が簡単に出来るたから、そのイケメンを繋ぎ止めて置ける器量を持ち合わせているなんて、自惚れていない現実的な女には、平凡の良い人が最高。


 それより何このテーブル?


 ボビートと私以外、イケメンの密度が濃い。ほら周りからの女の人達の熱い視線。私に向かっている「けっ、何あの場違いなチビ」と言う視線。


 これは、チキンハートの私にはキツイ。それよりこの女性のみなさんによって、ボビートがまさにこの世に存在しない空気以下に扱われているは、一体どう言う事なの?


 リュウーヒはそのテーブル、ううん、テーブル以外のこのお店、この空間の全てが自分の支配する場所であるかのように、テーブルの端に寛いで座っている。彼は存在するだけで、支配者になる人。カリスマ性って、すごい。片目の紅赤色の血のような目で、私を唯見つめている。


 私もつい目が合う。なぜかその目は懐かしい人を見るように悲しく、それでいて嬉しそうだった。


 「目は口ほどに物を言う」とよく聞いていた言葉を思い出した。リュウーヒと、目を逸らすのを躊躇う自分がいるのに気付く。そんな私の腕をドレリーが引っ張ったので、正気に戻る。


 リュウーヒの眼力とカリスマが恐ろしくて、ドレリーが引っ張ってくれてほっとした。その長方形のテーブルに、ドレリーが座るように椅子を引いてくれたので私は、着ていたケープを脱いで椅子の背にケープを掛けて座る。ドレリーも私の隣に座った。私が椅子に座ろうとした時に、ユートがさっきドレリーがしたように何か言いたそうな顔をして、向かい側のサイラックさんの横に座る。


 テーブルの端にボビートとリューヒが座っていた。私はリュウーヒを見ないようにな、るべく反対側の端に座っているボビートを見るようにする

「綺麗な首飾りですね。けーこ、今日買ったのですか?」


 ドレリーが話かける。


「うん。これユートが買ってくれたの。ほらユートの目と同じで綺麗でしょう?」


「……」


 ドレリーがしばらく私の首飾りを見て、ユートの方を見た。


「そう、それでそのユート殿の付けている耳飾りはけーこが買い、贈り物にしたと言うのではありませんか?」


「うん。良く分かったね」


 私がそう答えると、サイラックさんとリュウーヒが「信じられねー」、とか「これは、酷です」とか言った。


「そうですか。でもけーこには、明るい色が似合います。丁度、我が家に紫の綺麗な宝石の首飾りがありますので贈らせて頂きます」


「えっ、別にいらないよ。それに貰う理由ないしね」


 私が言うと、周りがまた溜め息をした。


「いいえ。これは私とけーこの出会いの記念です。絶対に貰って付けて下さい!」


 あまりにもドレリーが迫力のある顔で言ったので頷く。私は、押しに弱い……。


 私とユート以外のテーブルの上には、みんな厚いグラスで出来たジョッキのようなコップに入った、カラフルな飲み物があった。


「けーこには、ミントのお茶を頼んでいるけど他のがよかったら他のを頼むよ」


「うん。それで良いよ」


 私は、ドレリーが私の好きな飲み物を覚えていてくれてうれしくて微笑む。基本的にどのお茶も好き。でもこの世界のミントは桜色なのでその色が好き。そして喉もすっきりして馬で旅をした時とか長い一日を終えた日は、好んでこのミントのお茶を飲んだ。


 孤児院にいた時はこんな風にお茶を楽しむ暇も、そしていつもそれを飲む贅沢も出来ない。孤児院にいる時は食事の時にミルクか水で、たまに飲むお茶は緑茶の味に似た茶色のお茶。


「あ、ありがとう。私の好きな飲み物覚えていたんだね」


「ええ。もちろんです」


 私達の目が重なる。ドレリーって、なんて有り得ない顔をしているのだろうか?


 あーあ、ドレリーが平凡で庶民だったら良かったのに……。


「えっ、けーこ様はユート様とお付き合いをなされているのではないのですか?」


 ボビートが少し顔を赤くしながら言う。彼はお酒を飲んでいるに違いない。


「いや、けーことユート殿は兄弟だ」


 ドレリーがユートを見て、にやっとした後にボビートに言った。


「ち、違う! 俺とけーこは、兄弟じゃない!」


 ユートが席から立ち上がり、ドレリーに叫ぶ。それどう言う意味? かなりショック。ユートって私を家族と思っていないの?


 お姉ちゃんは、寂しい……。


「ユート殿、席にお座り下さい。そして、クムリン殿もさっき話した事をお忘れですか。下手に刺激をあたえるのを今すぐにお止めになって下さい。下手な刺激を今すぐにお止めになって下さい。楽しい食事をしましょう」


 ユートの隣に座っていたサイラックさんが、ユートの腕を少し触る。ユートはドレリーと私と見て、最後にサイラックさんを見た後に座った。サイラックさんが、まだ手をつけていない自分の飲み物を、ユートに渡す。


「諦めろ。それが、年下の定め」


 今まで、ただ私達の様子を見ていたリュウーヒがユートに言った。はい、はっきり言って意味が分からない。やっぱり、男の人達も女の人同士で良く使う秘密の暗号を使っているのかも。


 ちょうどその時に、胸を半分見えているブラウスとエプロンを着けた女の人達がお茶のポットとコップやカラフルな飲み物のピッチャーとグラス、そしてこれまたカラフルな食事の皿を持って来た。


 女性の人達は自分達の胸を、ボビート以外にすり寄せたり体を屈んで見せる。胸の寂しい私には出来んい技、耐えるのよー、私。


 ボビートは、羨ましそうにその女の人の胸を見ている。ドレリーは、嫌そうな顔をしてその女の人を払い退ける。サイラックさんは、無表情で丁寧に対応していた。


 ユートは、顔を赤色に染め飲み物のグラスに口を着けてチビチビ飲む。そしてリュウーヒは……っと、はい、思いっきり触っていた。私はなぜ自分がここにいるの?


「あっ、そうだ。サイラックさん」


「なんですか?」


 サイラックさんが、私を見て微笑む。その時周りにいた女の人達に、リュウーヒが「去れ」と言うと瞬く間にいなくなった。やっぱり、リュウーヒは怖い。敵には廻したくない人。私には、一応友好だったよね?


「あっ、あのね。お昼にね。とっても絵の上手な子に会って、それで童話の挿絵を描いて貰ったら良いと思ったの」


「はい。その事はすでにボビート殿にお聞きしております。挿絵なんて、またすばらしい提案をありがとうございます。ボビート殿が預かっていた絵を見せて頂きました。


 確かに素晴らしい絵です。ぜひ我が社に来て頂きたいです。それに、足が不自由で子供達だけで生活をなさっておられるお聞きしています。それで私の家にはたくさん空き部屋がありますので、ご兄弟でそこに住んで頂くように交渉をしたいと思います」


 流石サイラックさんは出来る男。一を言って十を為成すなんて、本当にどうして独身なんだろう。


「あっ、ありがとうございます」


「いいえ。こちらこそ、あんな素晴らしい画家を紹介して下さり感謝しております。そして、私の母も幼い子ども達が一緒に暮らして下さることを喜ぶと思います」


 サイラックさんのお母さんも、私と一緒で子どもが大好きなんだ。


「あっ、そうだ。どうして、皆知り合いなの? えとね、一体どう言う接点があるのかなと思ったの」


 だって不思議じゃない。ボビート以外は、全員『乙女の花園』の独身リストに載っていた良い男達だよ。まさか、それの集まりの会があるのかな?


 それよりボビート以外の人達は、どうして私を頭の悪い子のように見ているのか不思議。まあ、良いわ。だって、このお肉と野菜の炒め物が美味しいもんね。色は相変わらずすごいけど味は地球の味でハーブと塩こしょうが合っていて、うん、とっても美味しい。


「そ、それは、僕はさっきみなさんと顔を合わせをさせて頂きました。一応、クムリン様とメトニン様とは面識はありましたが改めて自己紹介をしました。きっと、皆様方の接点は……格好良いと言うことでしょうね」


 ボビートが言った。えーと、格好良いと言うことで皆が知り合いになるもんなの?


「ボビート殿。少し酔われていらっしゃるので、そろそろ家に戻られたらどうでしょうか。ここのお支払いは私共でいたしますので」


「そうか。ありがとな。そうだな。俺も、待っている嫁さんと坊主達の所に帰らないとな。そうだな、失礼するか。けーこ様。これが預かっておりました絵です」


 ボビートが私の方に絵を渡そうとしたけど、ドレリーが受け取った。それより、なんでドレリーがここにいるんだろう。


「ドレリー。どうして、ここにいるの?」


 私はドレリーに聞いたのに、ボビートが答えた。


「そ、それは、クムリン様と俺が街で会って、けーこ様をお迎えに来られたので、一緒にここに案内しました。まあ、けーこ様も幼児体系とは言っても二十歳だし、変な趣味の人には襲われる可能性もないとは言えませんしね。


 俺だったら、胸が大きい方が良いのに。物好きの男もいるもんだ。胸のないけーこ様を嫁にしたいと言う、変わり者の顔を見たいものですよ。あははは」


 あはははー。


(なにがあはははーなの!)


 別に良いよね。ここで怒りに任せて人を殺して良いよね。いくら酔っ払いの戯言と言っても許せません。心が狭いと言っても良いよ。今この時を耐え抜いている私は、立派な大人だよね。


「ボビート殿。そろそろ帰られたら宜しいかと。奥方も心配されておられると思います」


 サイラックさん、そんな酔っ払い相手に丁寧に接しなくて良いんですよーだ。


「ああ、そうだな。けーこ様と違って胸をパフパフ出来るの嫁さんの所に帰ろう」


 ボビートはヨタヨタしながら帰って行った。私はボビートをコロスために椅子から飛び立つ。


 もちろん復讐をしたと言いたいけど、私の復讐は隣に座っているドレリーによってあっけなく阻止された。悔しい。ドレリーが言った。


「私は、巨乳より貧乳が好きです」


「……」


 あのー、これってどう言う反応を取れば良いの。お礼をすべきそれとも殴るべき?


「あっはははー」


 テーブルの端でリュウーヒが笑う。もう良い。せっかくの美味しい食事が冷める。私はさっき食べかけていたお肉と野菜炒めを食べる。ユートがどうしているか気になったので、食べながらチラッと上目で見た。


「あっ、あ、ぼ、僕も貧乳がす、す、」


「ユート殿。それ以上は、言わない方が賢明ですよ」


 サイラックさんがユートに言った。そしたらユートが、顔を赤色にして下を向いた。やっぱり、会話が分からない。


 ただユートが貧乳がす、す、すごいって?。


「あっははー。あっははー。おもしれー」


 リュウーヒが、さらにバカ笑いを始めた。そんなバカ笑いをしていたら女の人達が引くよ。そう思いながら私は周りを見渡す。さっきまでこっちのテーブルを見つめていた女の人達がいない。

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