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my tale  作者: Shiki
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幕間 アリとキリギリス

『サイラックさん へ


 今、ユートと街に来ています。仕事の話があるので、東街の『母の味』と言う食堂に夕暮れ時に来てくださいませんか。他に二作の話もあります。ぜひ来て下さい。けーこより』


 昼時に小さい男の子に渡された手紙を読み、テーブルの上に置く。彼女は、私がどんな事をしても、彼女の作品を読みたいと言う事に気付いていないのだろうか。


どうしてディランド神は、あんな幼く無垢な女性にこれほどの才能をお与えになったのだろう。けーこさんはまだ自分の持つ才能の偉大さに気付いていない。王はすぐにけーこさんの才能に気付き、王付きの近衛兵のクムリン殿を迎えにやった。


 高が子供の話とバカにする者もいるだろう。だがその発想は世の中を変えて行く物で、賢い者はその価値に気付き彼女を取り入ようとしている。けーこさんが王と謁見すると聞いて私は、何時もは絶対に行かない城に行った。


 その場でクムリン殿のけーこさんへの態度も驚かされたが、彼女は糸も簡単に惜しみもなく新しい話を大勢の前で披露する。その後の王の褒美の内容にも驚いた。


 きっとけーこさんが望んだら、一番高い公爵の地位を与えただろう。あの王のことだから、地位に縛りこの国に縛りこの国の発展に貢献をするように仕向けるだろう。その褒美によってやっとけーこさんの価値を見出したバカな貴族共が、謁見の後にけーこさんに面会に押し寄せた。きっとバカ息子共の嫁にして、王からの贔屓と褒美とけーこさんの財産を取ろうと言う魂胆なのは手に取るように分かる。 


 今は『乙女の花園』の会長のパトリーシア公爵令嬢と副会長のテモテシット伯爵令嬢によって守られているから良いが、これからは他の国からけーこさんの干渉が始まれば彼女達だけでは無理だろう。彼女達も変わっていて情報収集のために侍女などしている。


 でも彼女達の『乙女の花園』と、王妃の率いる『永遠の清らか達』の情報網は侮れない。彼女達の与える別名は、その者の本質を見抜いていて恐ろしい。


 私の『闇の貴公子』は、私が侯爵家の妾の子に対しての黒色を指すものだろうか。それとも闇の中で情報を操ている事に対してか。表の貴族社会に属せず裏の貴族と庶民の両方の社会に属していることに対してなのか、彼女達の思考はとても難しい。


 この二つの組織に気付かず、そして入会を拒まれた貴族女性は王宮内で見くびられている事にも気付いていない。一度でもその会員に守られた者に対して傷を付けたならば制裁を受ける。けーこさんを傷付けたスクレル子爵の娘は、近い内に凄惨を受けるだろう。


 只、今は王がスクレル子爵が関係をしているスイ国への人身売買の件に女性軍が、下手に関与をする事を止めさせるだろう。


 スイ国の現王は、前王妃の第一子で優秀だ。だが前王の残したたくさんの子供達が、王の座を欲し謀反を企んでいる。王女達は、国の財産を貪り国民を虐げていると聞く。


 今度、その頭の足りない王女の一人が親善とかなんとか下らない理由を付けてこの国に来る。本当はこの国の王族又は、身分の高い者との結婚を考えているらしい。この国は大国で、スイ国の高い地位の貴族より遥に豊かだ。この王女の母親は、前王の側室で一番質が悪いと聞く。


 そして、その側室とスクレル子爵の妻が姉妹とも聞いた。なぜか、嫌な予感がする。 現王と同じ母を持つ唯一の八番目の王子は行方が分からない。その王子も18歳ながら賢いと聞いた。


 スイ国の現王が、けーこさんに興味を持ち始めたとベアーの所属する闇の情報組織から報告を買ったばかりだ。スイ国の王も国の財政をどうにかしたいのだろう。


 だが陛下が、そんなに簡単に他国にけーこさんをみすみす奪われるような事はないだろう。近い内に台風がやって来る。そして、その台風の目はけーこさんだ。


 その闇の情報を扱っている裏組織の『テト』の組長のアット殿も、けーこさんに興味を持ったらしい。唯々、けーこさんがアット殿に会わないことを願うだけだ。

アット殿は庶民の間では実際の王だ。裏の王だ。アット殿も見方にすればカイライ国の王同様、この国いや他国でも強い権力を受け継ぐ事になる。アット殿は後妻の連れ子と今ゴタゴタしているので、きっとけーこさんに会う事はないだろう。


 私はアット殿に認められ、情報通になる。そして王宮と巷の情報を持つ者。けーこさんから新聞と言う物の事を聞いた時は、身震いをした。ある一定の者達にしか、私が『情報を持つ者』とは知られていない。それをあんなに簡単に見抜き、さらに情報を制御するための新聞と言う恐ろしい物を作るように言った。


 情報を操る物が世界で生き残る王者。けーこさんは、その事に気付いて言ったのかそれとも単なる思い付きなのかが分からない。今朝、早速けーこさんと私名義で特許の申請をした。情報紙の独占販売。それをしている自分が恐ろしい。この特許は、私達が生きている間の期間だけ認められた。


 私は、またけーこさんを恐ろしい世界に引きずってしまった。 私はけーこさんをこの舞台に引きずった責任で、ついけーこさんに結婚を申し込んだ。この無垢な小さな女性を母親のように貴族の餌食にして滅ぶ事を防ぐためにけーこさんに結婚を申し込み、その結果、私がけーこさんを悲しませてしまう。


 大体二十歳でどうして危機感のない性格になれるのかが疑問だ。あの田舎のマイ町出身と言ってもこの世界では、どこでも危険が溢れている。この世界に生きる者は、自然にそれを身に付けると思っていた。現に、けーこさんも盗賊に遭って怪我をして記憶を失くしたではないか。


 それなのに危機感が全くないのは、それほど周りに守られて生きてきた証拠なのかもしれない。あのクムリン殿や『乙女の花園』のように、無条件で庇護してしまう要素が確かにけーこさんにはある。私もあの無垢な少女に結婚を申し込んでしまった。

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