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my tale  作者: Shiki
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桃太郎

 私こと、けーこは無垢で一生懸命に生きているから子供が大好き。。物語を話してあげると目をすっごくキラキラして、話の途中で何度も何度も表情が変わるの。きっと私が童話を書きたいと思ったのは、その表情を見たかったのかも。


 昨日は、あの後……っえ、あの後って。何って。私にまた、あの事を言わせるつもりなの?


 えーと、ファーストキスをした後。えっ、どっちって。シ、シマッター。同じ日に二人の人にプロポーズされて、二人にキスされたって。これは、ヤバいかも。私って、恋多い悪女?


 嫌だー。しばらく、乙女ベットで乙女布団の中に沈ませて下さい。大体、ヨネさんの「男から身を守る方法」の第三条の「可愛い顔をして相手に接吻をするつもりで顔を接近して頭突き」、少し状況が違うけど咄嗟にそんな行動が出来ないって証明されたよね。ヨネさんの掟を守れた子がいるんだろうか……。


「きゃー。クムリン様がけーちゃんの部屋に居ます。一大事です。パトリー」


「そうです。すぐに『乙女の花園』に連絡を入れなければなりません。テモテシ」


 外がなんか五月蝿い。そして、何か勘違いしているみたい。昨日は部屋に誰もいなくてドレリーが警護をすると言って、リビングのドピンクソファーに寝て貰った。私はベットルームの乙女ベットで寝た。


 だから一大事の理由が分からない。お気に入りの若葉色のワンピースに急いで着替えて、朝の支度を急いでする。


 隣の部屋のドアを開けた。ドレリーが少し眠たそうな目でショキングピンクのソファーに座りながら侍女達に質問されていた。パトリーとテモテシに問い詰められて少し可哀想。ドレリーは、すぐに私に気付いて私の所に来て私の顔を覗き込んであいさつをする。彼の銀髪がリボンで結ばれていなくて乱れている。


(寝癖かな?)


「おはようございます」


 ドレリーがにっこりして言った。一緒に旅をした時のような感じがする。こうして二人でいる時のドレリーは、以前のように穏やかな人なのに他の人達が居ると可笑しくなる。なんでだろ。不思議。


「おはよう。髪……」


「っん。髪?」


 キョトンとしたドレリーは、可愛い。


「寝癖」


 ドレリーが慌てて胸ポケットから白色のリボンを取り出し、髪を後ろで一つ結びをする。それから、一緒に朝食を食べた。私はいつの間にか、こうして二人でいることが自然に思えるようになっている。


 ワイワイ五月蝿い孤児院での朝食も、この二人だけの朝食もどっちも大好き。朝食の後、ドレリーは色々と用事があると文句を言いながら近衛の仕事に行った。その時、ドレリーにサイラックさん宛に手紙で私がここにいることを伝えるようにお願いした。


 ユートとの買い物には、部屋の前に待機をしている兵を護衛に連れて行くようにと言われた。もちろん断ったら、それでは自分が一緒に行くと言ったので、兵隊さんに付いて来て貰うことにした。


 私は、ユートが迎えに来るまで少し時間があったので侍女達に進められ、部屋から近い中庭に行く。中庭は、乙女部屋を出て右にずっとずっと歩いて廊下の突き当たりで左に曲がり、すぐに外に出るドアが見える所にあると言われたので一人で行った。もちろん護衛の兵隊さんが後ろに付いて来る。


 私が隊さんに挨拶をしたら、にっこりと前歯が一つ欠けた笑顔で「名前がボビート」と自己紹介をした。このゴッツイ顔でこの笑顔は、ギャップ萌をしそう。ちょっと、惜しいのは四十歳過ぎた中年くらい。もっと、若ければ。若ければ、何?って、はい。


 最近、いろんな事が次々ありすぎて妄想に現実逃避することが多くなった。うん、止めよ。そんな事を考えながら。殺風景の廊下を歩いて突き当たりで左に曲がる。


『バッタン。ドッシン』


「きゃーああ」


 誰かにぶつかり、お尻から転んだ。でも、叫んだのは私じゃない。


「大丈夫か!? バレンシア」


 耳にキンキンする甲高い男の声。


「大丈夫ですか?」


 ボビートが私の横に駆け寄り、私の右腕に手を添え引き上げてくれた。


「う、うん。大丈夫」


 お尻が痛いのを我慢して、立ち上がる。


「貴様。無礼者。謝罪せよ!」


 さっきと同じ甲高い声の人を見た。そこには、ユート位の背の男の人が紫色の女性を支えて立って居た。そのカップルは、とっても圧倒されるカップル。


 男の人の頭と眉毛は、毛がなかった。目の色が薄い黄色っぽくて白目で、ここの人は皆肌が白い方だけどその人の肌は黄金色のソバカスのようなシミがあり青白い。顔は整っている方だと思うけど、かなり気持ち悪い。紫色の女の人は、赤色の目が釣り上がっていて薄い口が気味が悪い。


 その女の人も顔は整っている方だけど、なにより鼻が異様に高くて、絶対皆の目は鼻にしかいかないと思う。私は特に下から見上げる感じだから、大きな鼻の穴しか見えない。とっても、気味の悪いデカイカップルが私を睨んで目の前にいる。とっても、怖いよ。


「ちょっと、痛いじゃない! それれよりなんで貴女みたいな、汚い庶民がこんな所にいるの。そこの貴方、この身分知らずを早く外に追い出しなさい」


 女の人は、ボビートに甲高い声で命令をした。女の人の声も高くて耳が痛い。


「失礼ですが、この方は王の客です」


 二人は初めは驚いた顔をして、その顔もすぐにさっきの顔に戻る。


「へえー。あの語りやね。くだらん」


「ドレリーも、こんな薄汚れた小娘の世話をさせられて可哀想だわ。ねえあなた」


「そうだな。でも、あのドレリーオットには小娘のお守りしか出来ないんじゃないか。そうだろ、バレンシア」


「ええ。それもそうね。グッテリー」


「こんな庶民。一生城に来ることが出来ないからはしゃいでいるだろうが、立場を弁えろ。それに、そんな見窄らしい恰好で城をうろちょろされたらこの国の品格に関わる、帰るまで部屋にいろ! 行くぞ、バレンシア」


 二人がその場を去って見えなくなった後、中庭に行く気分になれず、そのまま来た道をのそのそ歩いて部屋に戻る。歩いている時、ボビートさんがいろいろ慰めてくれた。


 確かに私の事を色々言われたのも嫌だったけど、ドレリーの事を言われたのがもっと嫌だった。パトリーとテモテシは、出て行ってすぐに戻った私とボビートを見てどうしたのか聞いてきたけど、私は気が変わったから部屋で字の勉強をすると言った。


 ボビートが何か言いたそうだけど私と目が合うと、空きかけていた口を閉じた。そして、部屋の外に警備のために戻った。私は、ピンクのソファーに座って読み書きの本をただ眺めていた。パトリーとテモテシは、隣の控え室にいた。


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