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my tale  作者: Shiki
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不思議の国のアリス

 私は異世界に落とされてディランドの一般住人になった。ここはディランドの中で一番の大国。名前がカイライ国。東の国境沿いの小さい町。名前はマイ町。

丁度、隣国スイ国から国境のマイ山を越えた麓にある町で、つい最近流通が盛んになったので、村から町になった。町にある唯一の孤児院にお世話になっている。


 私はあの日ディランドにお願いし気を失った後、目を覚ました所は簡素な木造作りの部屋。まずは現在地を確認、まだ起きるのが怠くて横になりながら周りを見渡す。


小さな厚めのガラス窓に黄色いカーテンが掛かっている。横になっているベットは少し固いけど、布団派だから全然平気。シングルベットの横にサイドテーブルがあり、その上にピッチャーと木のコップと小さな黄色い花が一輪木で出来たコップにさされている。机の横には、これも木の椅子が一脚あるだけだった。


 「カントリーの家」のような雑誌に紹介されるような感じの部屋。ドアとその反対側の壁にも、大きな黄色いカーテンが掛かっている。クローゼット?


 私の着ているナイトガウンは、洗濯を何度もしたような清潔な木綿のお手製の物。この部屋や、ガウンを見ただけでこの家の人は優しい人だと分かる。温もりが伝わってくる。外の景色を見るために、体を起こしてベットの横に座って、履物を探すために床を見た。


「あら、起きたのね。よかったわ。あなたを保護してから二日経ったのよ。このまま起きないんじゃないかと皆で心配していた所だったから、よかったわ。

気分はどう?

 あの国境の山に最近盗賊が出て商隊や、旅人を襲う被害が多いのよ。近いうちに軍が討伐にでる予定だったのに、運が悪かったね。でもあなた運がよかったわ。

丁度、商隊のキャラバンがあなたを見つけてくれてこの町に運んで来てくれて、この町にある三つの宿はいっぱいだったからここに運ばれて来たの。あなたを見つけた時にあなた以外の人は、誰もいなかったそうよ」


 背が高く恰幅のいいおばさんは、椅子に腰掛けた。木材の小さな椅子が壊れるんじゃないか?と思ったけど丈夫みたい。おばさんは白人で白髪が混じった臙脂色の長い髪をお団子にして結んでいて、目は松葉色で綺麗で若かった時は綺麗な人。


「そうそう、あなたの右肩に刀傷があったから気を付けてね。女の子のお肌に傷を付けるなんて許せないね。でもヨナおじいさんが傷は、深くないから傷跡も元道りに戻るって言っていたよ。よかったよ。

ヨナおじいさんって言うのはね、変わり者だけど立派なこの町のお医者さんだよ。昔は王都で開業していたんだけど、五年前にこの町に引退してきたんだ。医者のいない町だったからねえ。ここで今も開業しているんだよ。


 本人は老後の暇潰しとか言っているけどこの町や、周りの村々に医者がいるべきだって弟子を五人も育てている立派な人だよ。

 この前お弟子の一人で、コナットって言う十九歳の青年が王都の医学学校に行ったんだよ。もうこの町の娘達が泣いて泣いて、先週は大騒ぎだったよ。

私も三十年若かったら、きっと泣いていたよ。コナットは領主の三男で容姿は、兄弟の中で一番だよ。そしてとても気さくで優しい好青年で町の娘達がこぞって病気になってコナットの診察を受けようとした時は、領主さんも出て来てやっと収まったもんだ。


 コナットの微笑みで熱を出した娘も何人もいるって聞いたよ。先週はコナットが町の噂だったけど今週は、あんたの亊で町は噂でもちきりだよ」


 恐るべしコナット! 一生逢うことがありませんように。


「あら嫌ね。自己紹介まだだったね。私の名前はヨネリオット。主人は、ミトリオットって言うの。私のことは、ヨネさん、主人の亊はミトさんって呼んでね。

ここは孤児院で主人と二人で経営していて今は、子供達は十二人いるわ。いつもわいわい五月蝿いけれど、あなたの家族が迎えに来るまでここでゆっくりすれば良いわ。

丁度あなたくらいの子もいるから、寂しくないよ。あなたのお名前はなあに?」


 自己紹介をしようと思って口を開くと、喉が乾いて咽せってしまった。


「あらあら、私ったらお水もあげないで。ごめんね」


ヨネさんがテーブルの上のピッチャーからコップに水を注いで私に渡した。水は温かったけど天然水で美味しい。コップを握った時右肩に痛みが走った。せっかくの十代肌を貰ったのに刀傷なんて。ディランド、許さん。大体盗賊って何?


 ヒーローを盗賊の頭っていう設定にするつもりだったのかな?


「あっ、あの、私は杉山けいこです。助けてくださりありがとうございます」


ベットに座っている状態だけど、日本人の習慣で頭を四十五度下げた。『けいこ 杉山』って紹介するものかな? ヨネさん外国人っぽい。


「すぎやまけっいっこで良いの? ちょっと、変わっているわね。スイ国の名前って変わっているのかしらね?」


ヨネさんやミトさんの方が、十分変わっていると思う。『けいこ』って言えないみたい……。ヨナおじいさんとコナットとか、この世界の名前の付け方が気になる。

「いえ。けいこが名前で。杉山が家名です」


これって王道台詞だよね。自分で言うことになるなんて!


「まあまあ、やっぱりどこかのご令嬢だと思ったのよ。お肌も綺麗だし手もまめもなくて柔らかいしね。歯は真っ白。こんな艶のある黒髪って綺麗ね。

それにしたって髪をこんなに短く切るなんてひどい。真っ直ぐな黒髪って珍しいからそれを売る気なのよ。でも、あなたも売られなくて良かったわ。


 この辺の国は、人身売買を厳しく取り締まっているし足がすぐ付くからしなかったと思うわ。それに、貴族とかだと国の警備隊とかまで関与する可能性があるから警戒したのかもね。

まあ、家族のお迎え来るまでここでゆっくりしてね。それにしても、同色って綺麗ね。始めて『色持ち』に会ったよ」


「えっ、『色持ち』って何ですか?」


 これって異端者のフラグ?


「え、知らないのかい! やっぱり頭のたんこぶのせいなのね。名前を覚えているから大丈夫だと思ったんだけど、ヨナおじいさんが記憶を失っているかもって言ってたしね。名前とか印象強いものは覚えているんだそうね。

色持ちと言うのは、髪と目の色が同じ人の亊を言うんだよ。滅多にいないので、珍しいだけだから。それでけーこは、何を覚えているの。どこかに行く予定だったとか。歳は、家族は?」


 こんな良い人に嘘をつくのは嫌だけど、他にどう説明をしたらいいか分からない。今まで読み漁ったトリップ小説パターンで、部分的記憶喪失。


「歳は二十歳になりました。それで、ごめんなさい。後の質問は、分かりません」


ヨネさんがいきなり立ったと思ったら、私の頭をヨネさんの豊胸に抱きしめた。初めて豊胸が凶器だと知った。息が出来ない。ここで死亡する展開?


「まあ、可哀想に。きっと家族が迎えに来るわ。二十歳っていうのはどうか分からないけど、十五歳くらいだと思うよ。でも、もうちょっと成長しても良いと思うんだけどね。

 スイ国って、カイライ国のように豊かとは聞かないしね。国土も、四分の一くらだってね。貴族でも大変だったのね。私の料理ですぐ大きくなるわ」


 ディランドの顔がちらちら見え始めた頃、やっと離してもらえた。空気が美味しい。ヨネさんの目線何気なく私の胸あたりの気もするけど、きっと気のせいだよね。一体可哀想なのは、年齢詐欺の記憶喪失の頭、それとも胸?


 その後、黄色いカーテンの後ろの小部屋に、引っ張られて洗面をした。もちろんトイレットペーパーは、葉っぱ、トイレも桶。この部屋は、病室なのでお手洗いがあるけど、かねては、皆外の厠を使っている。どうしよう?

 若草色のワンピースを着て(もちろん、ヨネさんに着せ替え人形にされ)、かぼちゃパンツ始めて見た。履き心地はいいけど、「すーすー」して体にフィットじゃないので落ち着かない。


 それからヨネさんに引っ張られて(引きずられ)、食堂らしき所に行った。髪の毛の色がカラフルなちびっ子集団が、カラフルな目でこ私を見ている。今初めてここが異世界と実感。金銀茶赤白は分かるけどこの際灰色もOK。


でも青黄色紫オレンジピンク緑、遺伝子はどうなっているの。かなり精神的にくる。受け入れられない。地球色がいい。日本人の黒髪黒目万歳。白髪やハゲでも、この際どうでもいい。


「姉ちゃんの髪の毛と、お目目、真っ黒。きれい」


 ヨネさんに勧められた席に就いた時に、向かい側に座っている五歳くらいのお目目が黄色で髪の毛が躑躅色の女の子に言われた。この子、可愛い!

 もうファンタジー、最高! えっ、さっきと違うって? いいのよ。


「あっ、ありがとう。お嬢ちゃんの髪の毛も、ピンクでかわいいよ」


 それから蜜柑色の髪で薄い青色の目をしていて、私より十五センチ背が高そうな女の子が机の上にあるお皿にスープを入れてくれた。ちなみに私の身長は、百五十センチ。日本では平均くらいだよね!! と自分に言い聞かせている。


私がその子に「ありがとう」って言ったら、ニコって笑ってくれた。この子も美少女。やっぱり王道異世界トリップ「美男美女」バージョンなのかな? 


 その子の横にスープの鍋を持っている男の子を見たら、やっぱり格好良かった。背は百八十センチあるんじゃないかな。髪が焦茶色で目が琥珀色。地球人色を発見。地球色は落ち着く。ついその子を凝視する。そしたらその子と目があった。それでなぜかその子が顔を赤くしてそっぽを向く。


「その女の子がソニアリックで、男の子がユートリック。ソニとユートでいいよ。二人共、ここの年長さんで十六歳。今度の成人祭の後に、王都に行っちゃうのよ。ソニは住み込みでパン屋さんに就職で、ユートは騎士になるのよ。


十年ぶりにこの町から騎士の試験に受かって私も嬉しいよ。流石私の子供ね。二人共いなくなるのは寂しいけど、私達にはまだこんなに子供がいるから幸せよ。ねえミト?

 そうそう私の隣に座っている彼が、私のハニーのミトッリックよ。ミトでいいからね」


白髪まじりの鉄色の髪の毛で、灰色の目ちょっと痩せぎみで優しそうな感じの人。肥えた奥さん、痩せた旦那さんカップルって良く見かける。奥さんにエネルギー取られた。いやいや反対の人って、引かれ合うって言うしね。ちびのっぽのカップルとか、美女と野獣とか。


「は、はじめまして、けいこと言います。あの怪我の手当てと、それと看病、えーっと数々のご親切有難うございます。

それで、いつになるか分かりませんが、このご恩は、おおお返します。それと、しばらくまた、お世話になります!」


私は立ち上がり、四十五度のお辞儀をした。面接の練習でシゴかれたかいがあった。頭を上げると、周りは「しーん」小学校の時、「しーん」となったらかならず誰かが、「幽霊が通った」っていう奴が必ずいたよね。アホらしいガキ。そのせいで、私はいつも「しーん」となったら、「幽霊が通った」と言いたくなる。


「ミト、言った通りでしょう。この子は、貴族の子だって。しっかり躾されているのね。頭を打ってもそう言うのは体が覚えているのよ。さっきだって、お水を飲むのもゆっくりと優雅で絵になっていたもの。


服を着るのも戸惑っていたから、私が手伝ってあげたのよ。きっとメイドが着替えをしてくれたのね。起きて顔を洗い歯を磨いたし、トイレの後に、手を洗っていたのよ。でね、歩くのもゆっくりで少し急がせたら転んじゃった。人の話を良く聞いているしね。きっと家族が迎えに来たら思い出すよ。けーこを見つけた商隊の人が役場に届けたからすぐ来るよ。

 皆がおしゃべりしているから、スープが冷めてしまうわ。ミト、お祈りお願い」


 この会話、突っ込みどころがたくさん!

 ヨネさん以外、誰も話していない 大体起きたばっかりの時は、普通皆体をゆっくり動かす。後は、常識の生活習慣。ヨネさんと私の足の軸の長さが違う。誰もヨネさんの会話を聞いてないかもしれない。


「このお恵みをディランド神に感謝します」


ミトさんが言うと「感謝します」って、あっちこっちから聞こえた。ディランドになんかお祈りしない。大体ディランドに、まだ右肩のこと許してない!

 乙女の肌に傷を付けた恨みを覚えておいて。食事中ヨネさんは、相変わらずミトさんに話しかけている。いつ食べているのか不思議。ミトさんは只ひたすら相打ちを打っていて、決して自分から話題を提供しないし話さない。ミトさんの首、大丈夫かな?


 私の隣に座ったソニが、この孤児院の事や町の事を食べながら教えてくれた。私はスープを見て色がすごくて驚いたけど、一口おそるおそる食べる。スープは色が怪しい野菜が入っていたけど、味は地球と同じだった。絶対にこの配色に慣れない。

かなりの精神ダメージ。ソニのお喋りを聞きながら、私もミトさんを見習って第二のミトさんになった。ソニは第二のヨネさんにきっとなる。ソニの話によるとこの孤児院には、五歳から十六歳までの子供達が今は、十二人が生活しているの。


 ここにいる子供達は、五年前にあったスイ国の政権交代のいざこざで内戦があり、住民が国境に逃げて来た時にいざこざで孤児になった子供達。ここは比較的にのどかな平和な村だけど、移民者達と村の人達の争いが始まった。


戦いの原因は、移民者は、異国の不安とそれまでの疲労とかで村人は、異文化を持ったよそ者を受け入れがたいみたいで、本当に誰も思い出せないくらいの些細な事だった。一つの村が争いになると、周りの村々にも争いが広まって、国が兵を出して沈下した。


ここにいる九人の子供達は、マイ町から、子供の足で北に半日歩いて行ける所にある『トリ』と言う村出身。結局村が焼けてもともと貧しかった村だったから、生き残った村民でこの町に移り住んだ。


ミトさんとヨネさんには子供がなくて、丁度この町で二番目に大きな家を持っていたので、親を亡くした十七人の子供達を引き取った。


 ミトさんは昔大きな商人の息子で商売を人に売り、この田舎で土地と家を買い農業をして暮らしていた。ミトさんの棒のような体で鍬を握って、畑を耕している姿が想像出来ない。後は、寄付金と野菜を売ったりして生活している。


後三人の一人は、孤児院の前に捨てられていて、他の二人は母親が片親で育てられなく預かっている。二人の母親は、毎月お金と手紙を送ってくるけど年に一回しか会いにこれないみたい。普通はミトさんやヨネさんのように出来ない。二人がどれだけこの子供達を、自分の子供のように愛しているか見ていて分かる。


子供達皆は、何度も洗濯してヨレヨレだけど清潔な服を着ているし体格良い。なんたって皆、とてもいい笑顔。ヨネさんが立ち上がり手を二回叩くと、子供達の話声が止んだ。


「食事が終わったら、小さい子の順番でけーこに自己紹介してね。けーこは、皆の名前を一度に覚えれないからその都度名前を教えてあげてね」


 一番小さい向いに座っていたリタリックちゃんから、ソニとユートまで十二人と握手や抱擁をした。皆の歓迎を受けて、涙が出てきた。嬉し涙は、簡単に出てくると知った。私に迎えが来ないことを、ミトさんとヨネさんは知っていたと思う。


 その後、小さい子供達が、私と遊ぶために取り合いになったので、『不思議の国のアリス』のお話を聞かせた。


ミトさんとヨネさんも、いつの間にか輪に入って話を聞く。途中でユートが、水の入ったコップを渡す。話をしている時、皆の顔の表情がいろいろ変わって、私もうれしくなる。楽しい時間はすぐ過ぎる。話が終わった後、外も暗く蝋燭が何個か灯されていた。

子供達がもっと話を聞きたいと強請ったけど、流石ヨネさんの一言で皆それぞれの部屋に散らばって行った。


 もちろん私に皆、お礼を言い、女子達からは、頬っぺにキスする。もちろんヨネさんの豊胸の抱擁も受けた。またディランドがちらちら見えた。やっと生きているまま解放された後に、ミトさんにも抱擁を受けた。ここは、スキンシップ多い国なのかな?


「ありがとう。生まれて始めて、こんな物語を聞いた。すごくよかった」


ユートが握手をして来た。彼の手が熱い。思春期の男の子って体温高いのかもしれない。とてもいい人たちに助けられたので、やはりディランドに感謝すべきかな?


(人魚姫 


 好きな人を追いかけて人間世界に住んだ時、優しい人に会えた?

 私は好きな人に会えなくてもこの人達に会えてよかった。この世界で新しい家族が出来た。恋が実らず泡になったけど、少しでも幸せな思いでがあったら良い。)

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