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カサンドラの屈託  作者: コリー
第二章 カサンドラと純潔の女神
7/7

7 奔走

なんと、私を召喚したのは神木さんの実の妹さん、神木美月だった。

「あの、なにか御用ですか?」

なんだかこの流れ、私にとってプラスにならないパターンな気がする。妹さんの顔も、少なくとも明るくは見えない。

「ご存知の通り、私は神木家の次女、つまり神木日陽の妹です」

「ええ、まあそれは…」

「では単刀直入に言いますが…」

この妹さん、話してる途中で私の話を切った。私はあまり沢山の人と話すことは無いが、ここまで感じ悪い人は見たことも聞いたこともない。

「…姉から距離をとって下さい」

神木さん妹は、先程よりも更に静かで強い、冷徹な声で言った。

まさか、親子で同じことを言われると思わなかった。神木さんママから一体何を聞いたのか。

「…何でですか」

「母から全て聞いている筈ですが、あえてもう一度言わせてもらいます。姉さんと長く一緒にいると、姉さんは勿論、貴女ですら心に深い傷を負うことになるんです。私はこれ以上傷ついた姉さんを見たくはないんです…!」

そうだ、彼女は神木さんを最も近くで見てきた人。彼女以上に神木さんの心に詳しい人はいない。そんな人の警告は、非常に重みを感じる。

「……」

「先輩が本当に姉さんの事を思ってくれているのなら、早めに関係を絶ってください…お願いします……」

そう言って、神木さん妹はその場を立ち去った。

その時の彼女の憂いを帯びた声は、私に今の状況について深く考えさせた。


「珠心ちゃん、帰ろ?」

HRが終わるなり、神木さんに一緒に下校しよう、と言ったむねのお誘いを受けた。

私はバッグに教科書を入れる手を止めて答えた。

「すみません、今日はちょっと予定が…」

「そっか……」

そう、私には行かなくてはならない場所ができてしまった。


ヒュン、パンと、規則正しい音の羅列が廊下にまで響いている。私が行かなくてはならない場所は、体育棟、2階のB室。

(ここですね…)

あの連続して発されている音は、確かにこの部屋から響いている。私は、静かにその部屋の扉を開いた。

「…」

そこには、キリキリと軋む音を立てて弓を引く女子生徒がいた。

その女子が矢を放つと、ヒュン、パン、と先程よりも大きな音が耳を貫いた。思わず耳を塞いでしまった。

「!先輩」

「こんにちは…」

静かに耳を塞いでいた手を下ろして、私は言った。

「神木さん…いえ、美月さん。少しだけお話があります」

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